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第21回1000字小説バトル
Entry23

ひこうき雲

作者 : リツコ
Website : http//www.sol.dti.ne.jp/~photo
文字数 : 935
  ひょんなところで意外な人に会うものだ。
 信号を渡ろうとしていた時、向かい側に立っている人に気付いた。
相手もほとんど同時に気付いたらしく、ぎょっと驚いた顔になって
いる。
「おお、…ひさしぶりやんか。びっくりしたで」
「うん。ひさしぶり。びっくりしたやろ?こんな大きなお腹になっ
 てしもうてて」
 そりゃあ、そうだ。別れた彼女とばったり再会しただけでも、驚
くだろうに、こんな大きなお腹をしていたんじゃあ。私は、もうす
ぐ臨月になろうとしているお腹をさすりながら、照れ笑いをした。
「元気そうやなあ。ぷくぷく肥えて」
「そんなん言わんといてえや。妊娠してんねんもん。しゃあないや
 んか」
「そうやなあ。まあ、幸せそうやんか。よかった」
 彼は、昔のままの声で、私を眺めた。
「もうすぐ生まれそうな大きさやなあ」
 ものすごくオーバーな手ぶりで、私のお腹の大きさを表した。
「もうちょっとやねん。ドキドキするわあ。」
「大丈夫や、ちゃんと生まれてくるって」
「そうかなあ。あっ、あんたんとこ、子供は?結婚したって聞いた
 で。もう何人も作ってるんちゃうのん?」
 笑いながらそう言って、やばいと思った。前に一度、共通の友達
の言葉を思いだしたのだ。
 奴のとこの奥さんなあ、なんでも子供でけへんらしいで。
「あはは、がんばってるんやけど、こればっかりは、俺様のすごい
 もんをもってしてもなかなかや。神さんのすることやからなあ」
 屈託のない笑顔だった。
「そうやなあ。ほんま、そうや」
 それぐらいしか言えなかった。
 それじゃあな、と手をふる彼のむこうの空に、ひこうき雲が見え
た。それじゃあね、と手をふった私は、お腹の子を今までにない以
上に大切に感じた。






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