インディーズバトルマガジン QBOOKS

第21回1000字小説バトル
Entry5

お菓子と手帳と

作者 : のぼりん
Website : http://ww1.tiki.ne.jp/~mosi/shot2.htm
文字数 : 985
 彼女と付き合いだしてどのくらいたったろうか。僕は二人のけじ
めって奴にこれまでわざと鈍感でいようとしていたようだ。男って
そんな時、大抵の場合腰が引けてしまうんだよな。だって、特に僕
たちのようにまったく進展のない付き合いが続いている場合、あっ
という間に恋が消えてしまう可能性があるから。
 まるで、「砂の器」だ。波がくればそのまま洗い流されて、元に
戻ってしまう。本当にもろい関係。
 実をいうと、最近では彼女も忙しいらしい。OLしながら推理小説
を書いているというのはわかっていたけど、小説家になりたいなん
て、そんな人並みはずれた夢のためにたまのデートもままならなく
なっている。でも、その不満さえ僕はいいだせない。
 これでいいのかという焦りがいつもある。おかげで、推理小説も
かなり読んださ。否応なくね。(「砂の器」なんて表現、普通使わ
ないだろ。) さすがの僕も考えたよ。
 僕たちって、これからもずっとこのままなんだろうか。そろそろ、
二人の関係にけじめをつけるときが来てるんじゃないか…なんてね。
少なくとも、二人は未だにプラトニックなんだからね。大体、彼女
自身、何考えてんだろ。そいつがまったくわからない。
 とにかく、今日は僕の誕生日。彼女を誘った二人だけのパーティ。
僕はある気持ちを秘めている。
 そんな僕に彼女が手渡してくれたメモがあるんだけど…。
  お菓子
  手帳
  大根
  ワンコそば
「これ準備していてね」 
な、何のこっちゃ。ますます彼女の気持ちがわからない。
 ワンコそばでパーティか?大根を準備しておでんでも作るという
んだろうか。それに手帳って何に使うの?
 もちろん、これが何かの暗号であるという可能性も考えてみた。
でもわかる?この四つの言葉の意味が…。
    *
 結局、わけがわからないままその時がきた。僕は一応メモのとお
り四つのものを用意しておいたけど、それを見た彼女はうんざりと
した顔。
「あんたってどこまでも鈍感ね」 
 彼女ははにかんだように笑った。
「確かにワンコそばは、分かり難かったかもしれないわ。これは―
ばんこそは―って読んで。心の準備をしてってことなのよ。女に言
わせるかしら、普通」 
 つまり、最初から「おかし、てちょう…」通して読めばよかった
だけだ。
 つまり、それが彼女の気持ち。なんてこった…。






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