インディーズバトルマガジン QBOOKS

第21回1000字小説バトル
Entry8

Rain Day

作者 : 桂木彩乃
Website : 夢の橋
文字数 : 597
 ある日の休日。
 私は一人で、ブラッと街へ出かけた。
 一人で、誰に気兼ねすることもなく、ウィンドーショッピングを
楽しんでいた。
 そして、ふと目に止まった雑貨屋のお店に、何気なく店内に足を
踏み入れた。
 店内の棚に並べられている雑貨に、目を奪われて、時間が過ぎて
いくのも忘れていた。

 気に入った雑貨を何点か買い、店の外に出た。
 店に入る前は、青い空を見ることができたのに、いつの間にか、
青い空は雨雲に覆われ、空から雨が、地上に降り注いでいる。
 お店の前で、このまま濡れて家に帰るか、それとも、雨が上がる
のを少し待っていようかと、悩んでいた。

 すると、偶然に私の前を通りかかった、見知らぬ青年が、私の前
で立ち止まった。
「良かったら、この傘、使ってください」
 そう言って、自分が使っていた傘を、私の手に握らせた。
「あのう……」
 彼が濡れることをわかっていて、素直に傘を受け取ることなんて
できなかった。
 彼に傘を返そうとしたが、彼は受け取ろうとはしなかった。
「僕は大丈夫だよ。家もすぐ近い所だから」
 笑顔でそう言うと、私の前から立ち去った。
 彼の姿は、降りしきる雨のため、すぐに見えなくなった。

 雨が降るたびに、あの日のことを思い出す。
 あの日出会った、名前も知らないあの人のことを。
 その傘は、今も私の手元に、残っている……。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。