第21回1000字小説バトル
Entry8
ある日の休日。 私は一人で、ブラッと街へ出かけた。 一人で、誰に気兼ねすることもなく、ウィンドーショッピングを 楽しんでいた。 そして、ふと目に止まった雑貨屋のお店に、何気なく店内に足を 踏み入れた。 店内の棚に並べられている雑貨に、目を奪われて、時間が過ぎて いくのも忘れていた。 気に入った雑貨を何点か買い、店の外に出た。 店に入る前は、青い空を見ることができたのに、いつの間にか、 青い空は雨雲に覆われ、空から雨が、地上に降り注いでいる。 お店の前で、このまま濡れて家に帰るか、それとも、雨が上がる のを少し待っていようかと、悩んでいた。 すると、偶然に私の前を通りかかった、見知らぬ青年が、私の前 で立ち止まった。 「良かったら、この傘、使ってください」 そう言って、自分が使っていた傘を、私の手に握らせた。 「あのう……」 彼が濡れることをわかっていて、素直に傘を受け取ることなんて できなかった。 彼に傘を返そうとしたが、彼は受け取ろうとはしなかった。 「僕は大丈夫だよ。家もすぐ近い所だから」 笑顔でそう言うと、私の前から立ち去った。 彼の姿は、降りしきる雨のため、すぐに見えなくなった。 雨が降るたびに、あの日のことを思い出す。 あの日出会った、名前も知らないあの人のことを。 その傘は、今も私の手元に、残っている……。
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