第22回1000字小説バトル
Entry11
亜紀は、もうすぐ35歳。 <ミソジ>・・・女にとってなんてイヤミナ言葉なのだろうか。 体の女の部分が自然に腐ってくるような錯覚。 「あぁ〜、いやだ」そう思いながらまた寝室の掃除を始めと、 久しぶりのベットシーツ残る痕跡に気がつく。 夫婦の愛の確認は、いつも夫健二の一方通行だった。 その間たったの5分。「あぁ〜」と言う僅かなうめき声で終わる 夫婦の会話。女を置き去りにされた空しさだけが残る瞬間だった。 夫は、大会社のエリート。何一つ不住のない恵まれた専業主婦の 自由空間。良妻賢母を演じる毎日。それが亜紀の人生の保険証だ った。その反面、心の奥に潜む女しての渇望。 「退屈・退屈・退屈 〜」心で叫び、もがく毎日。しかし、まる で羽を切られ飛べない小鳥のように、偽装された幸せの籠の中に 飼われている自分。そんな葛藤を繰り返す毎日だった。 そんな亜紀の癒しは、インターネットの世界で「KISS」を演 じ、拓也との「顔の見えないラブソング」を交わす時であった。 最初はメル友で始まった2人の関係は、100通目で愛に変った。 お互いに自然にメールに書いた「愛」「欲しい」と言う言葉。 それを合図に、手と心が繋がれたような錯覚と拓也と言う偶像へ の愛の陶酔がKISSから亜紀自身に広がっていくのである。 拓也からのメールは、日増しに亜紀に容赦のなく愛の言葉を浴び せ、そしてSEXを誘惑するようになった。 亜紀が忘れかけていた女の炎は、激しく燃え盛り、やがて人妻と 言う躊躇いが消えて行く。そして遂に出会いの時が来たのである。 3月16日に遂に運命の時が来る。不倫という罪悪感が急速に広 がる。それよりも恐かったのは、拓也との現実の出会い。そして、 拓也からの亜紀に対する幻滅感とその先にある「別れること」へ の恐怖だった。もう「ラブソング」は終わりにしよう。そう決断 し約束の場所へ行く。拓也は、帽子を深くかぶりベンチに座って いた。一歩一歩、亜紀は拓也に心の空白を埋めるように近づいて いく。そして、現実に見た拓也の顔は、夫の健二だったのである。 「貴方、何故」亜紀は、驚愕した。しかし健二は、亜紀を引き寄 せ、熱いキスを求め亜紀は、素直に受ける。「愛してる」という 言葉が背中に響いた。
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