第22回1000字小説バトル
Entry13
教会の中はあったかくて、テーブルの上にはごちそうが並んでい る。友達もたくさんいるし、パパ先生もかえでママもとても優しい。 今日はぼくの誕生日で、こんなに楽しい誕生日は初めてだ。 去年の誕生日まで、僕も弟のりょうすけも誕生日のお祝をしても らったことがない。部屋はいつも寒くて、お父さんはいつも怒鳴っ ていたし、お母さんはいつも泣いていた。ぼくが五才の誕生日には お父さんはお酒を飲んでてすごく怒鳴るから家にいられなくて、り ょうすけとお母さんと三人で雪の中を歩いた。四才の時にはプレゼ ントが欲しいと言ったらお父さんにたたかれた。三才のときは確か お母さんがずっと泣いてたと思う。それより前は憶えていない。あ と去年の誕生日のことも途中からよく憶えていない。 去年の誕生日にもお父さんはお酒を飲んでいた。そしたらお母さ んが帰ってきた。手に見たことのないおっきなまるいケーキを持っ て。「うわあー」ぼくは嬉しくて声をあげた。そしたらお父さんが すごく怒って、お母さんをたたいた。ぼくとりょうすけもたたかれ た。いつも泣いてばかりのお母さんが怒鳴り返してた気がする。で もその後のことはよく憶えていない。ケーキの味も憶えていない。 あの次の日から教会に住んでいる。友達もたくさんいるし、パパ 先生もかえでママもとても優しい。あれからもう一年になる。りょ うすけは先月が誕生日でプレゼントにグローブを貰っていた。まる いケーキも目の前にあって、飾りのチョコレートにぼくの名前も入 ってる。ぼくたちと同じで本当のお父さんとお母さんがいない友達 が歌をうたってくれる。パパ先生はいつもここにいるみんなは兄弟 とおんなじで、パパ先生とかえでママは本当のお父さんとお母さん とおんなじだって言う。ぼくはたぶん幸せで、こんなに楽しい誕生 日は初めてだ。 ろうそくの火を消すとみんなが拍手しておめでとうって言ってく れた。パパ先生がぼくに聞いた。 「なにかほしいものあるかい?」 なんだろう?考えてなかった。 「なんでもいいから言ってごらん」 なんでもって言われて、なんか急に込み上げてきた。りょうすけの 方をちらっと見た。 「お父さんとお母さんにあいたい」 おかしいな、どうしてだろう、こんなに楽しいのに。なんか涙でて くる。 パパ先生とかえでママが、ぼくと、いつの間にか泣き出したりょう すけを抱き締めてくれた。 その夜、ぼくとりょうすけに、新しいお父さんとお母さんが出来た。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。