第22回1000字小説バトル
Entry2
僕は、今でもよくわからない。 マチ金に手をだし自殺...。サラ金地獄で一家離散...。腎臓も目も 売れないので首吊り。 「武井君、この記事おかしいよね」 「うん。まあサラ金に地獄のイメージは付きまとうけどね」 僕はタバコを消し、ため息をついて内心で呟く。それなら銀行も金 貸しじゃないか。その親玉が、羨望のまとのエリート日本銀行だ。 その子分達が自己責任、つまり自分の尻もふけずにしっかり高給ぶ ん取って、銀行がつぶれそうになると、税金で立直す。しかも見事 に正当化してね。 僕の会社が自己責任でおかしくなっても、税金は助けてくれないよ。 ウジ虫以下だね。あいつらは。 眉間にしわを寄せた僕を見て武井君は心配げに缶コーヒーを差し出 した。 「地獄ではなく天国だよ」 「え!なにが」 武井君は、天国って何?という顔だ。 サラ金、マチ金、ヤミ金、ヤクザ金どれをとっても非常に好感がも てるよ。銀行と比較するとね。 第一、嘘がない。高利で危ない。実にシンプルだ。恐くて逆に心地 よい。そして彼等は銀行にとって特上の客でもある。大多数の人に 無料でティッシュまで配ったりもする。何度下痢の時に助けられた ことか。 「何でサラ金が地獄だよ、銀行相手に死んだ奴だっているよ」 おもむろに財布を開く僕を見て武井君は、目を白黒させた。50万 はある。 「やっぱり天国だよ、サラ金は」僕は小声で財布をしまう。 昨晩は、接待で赤坂で飲んだけど、支払いの時の女の娘は武井君と 同じ目をしていた。半分潤んでいたと言った方がいいかな。 現実に僕の財布には、いつも50万は最低入っている。 週末には無くなり、翌週初めにはまた50万。 先週土曜日、三越のネクタイ売り場では、支払いの時店員にデート の約束と携帯番号まで聞き出した。 彼女の瞳は淡いブルーのセロファンがかかった冬の鯔みたいに、ど うにでもしてェと訴えていた。僕は驚いて膝がガクガクになり、唾 をゴクリと飲み込んだくらいだ。乳首の突起まで見えた気がした。 話を元に戻そう。厳密に言えば、週末に50万無くなるのではなく 丸まるお返しするといった表現が適切な気がする。 「限度額内なら、一週間以内に返済すれば無利子の消費者金融があ るんだ。上場した立派な会社だ。地獄どころかパラダイスだよ。 ただ、次の事を厳守すればね。その金には一切手をつけない。そし て紛失しない。盗まれない。後はくり返すだけだ。出し入れをね」 武井君は、仏の顔で静かにニンマリと頷いた。
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