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第22回1000字小説バトル
Entry24

儀式

作者 : サトコフ
Website : http://www.butaman.ne.jp/~satokov/
文字数 : 1000
 目覚めて頭痛。それは宿酔で。床にはNがスヤスヤと、Kが烈し
い鼾をかいて眠っていた。
 ポケットから煙草を取り出し、窓外を眺めながら一服。外は雪で、
ああ寒そう、と思いつつ、散らかった床に視線を移すと、油性ペン
を発見。油性ペン?
 天誅! って僕は、Kの額に「菩」、顎に「薩」、少し迷ってか
ら右頬に「観」、左頬に「音」と書いた。にも関わらず、Kは相変
わらず喧しい鼾をかいて眠っていた。情けない顔で。
 すると。

 卓袱台の上に、ヘンな生物が立っていた。
 身長は8cmぐらいで細身、両手両足は人間と同じつくりである
が、顔には細い目が縦3段横2列の計6個あり、口は左右に2つ、
髪は無く、ツノが2本生えていた。肌は全体的に赤かった。
「おい、お前」と生物は右の口で言った。
「はよ願いを言え。何でも叶えたるさかい」と今度は左の口で言っ
た。同じ声だった。
「あの、ところで、あなたは誰なんですか?」
「わし? わしゃ観音菩薩やないけ。おまはん、儀式でわしを呼ん
だやろ」
 儀式? 油性ペンと鼾が? そんなバカな、と僕は思ったが、し
かし実際問題、こうして菩薩が存在している以上、願いを叶えて貰
わぬ手はない。事実があって、次に真実だ。
「金を下さい。50億ぐらい」
「あほ言うな」と菩薩は両方の口で言った。「えーか。わしも万能
やないさかい、因果律があるんや。おまはん、明日いきなりケーサ
ツに捕まってもええんか」
「それは嫌です」
「そやろ」と言うと菩薩は、右列の目を全部閉じた。何の意味が。
「じゃ、A子ちゃんが、僕に惚れるようにして下さい」
「それもあかんわ。おまはん、そのA子が惚れる要素を何も持って
ない。だから無理や」
 そんな。傷心の僕は、捨鉢で、「じゃ、面白い話をして、僕を大
笑いさせて下さい」と頼んだ。
「おう、それならお安い御用や」と言って菩薩は、15秒ほど目が
ランダムに開いたり閉じたりしたのち、両方の口を開いて言った。
「昨日、中華料理屋に行ったら箸を折っちゃってさ」
 まさか。
「ペキン」

 …………。菩薩は、御満悦のようだった。
「じゃ、わしゃ帰るさかい。おおきに」
 そう言うと菩薩の身体は、足の方から徐々に消えていった。
「そうそう」
 胸まで消えたところで、菩薩が言った。
「さっき、A子ちゃんに惚れられたいって言っとったけど、もうお
まはん、惚れられてるで」
 え?
「そこのNに……」
 そうして菩薩は、完全に消え去った。
 僕は、Nの寝顔をまじまじと見た。肌が汚かった。

 うそん。






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