第22回1000字小説バトル
Entry5
最近、警察の不祥事が続く。 0県警の射撃訓練場で、教官が女性刑事にぼこぼこにされるとい う事件が起きた。教官が訓練中にセクハラ行為に及んだというのだ。 ところが、そのワイセツ教官を取り調べる刑事たちは皆彼の教え 子である。取調室は、どうもいやな雰囲気になった。 「えっと…」 見ると教官はぐったりとうなだれて、とても情けなさそうだった。 その顔はバンソウコウだらけで、痛々しく腫上がっている。 「君、被害者の主張を読んでくれ」 主任刑事に指名された新米刑事は機械のような声で読み上げた。 「射撃スタイルを指導するのに、私の身体を触ることは我慢できま した。でも、その後、耳元で『パンティー売って』って囁いたのよ。 こんなひどいセクハラ許せませんわ」 「…ということです」 「ぬ、濡れ衣だ」 「教官!」 うろたえる老教官を見て、主任刑事が残念そうに話し掛けた。 「まさか、あなたが女性の下着を集めるのが趣味だとは思ってもい ませんでした。こんな事件を起こす前になぜ相談してくれなかった のですか」 新米刑事は、もし相談したらどうなっていたというんだろう、と ふと思った。 「僭越ながら、私の妻の下着を差し上げることもできたのですよ」 …そういう問題ではあるまい。 彼は、先日家へ食事に呼ばれて、初めて会った主任刑事の奥さん のことを思い浮かべていた。それこそ、セクハラだ、と否応なく思 う。 教官は相変わらず、かたくなである。自分の犯した罪を認めよう としない。 「訓練中に彼女の体に触りましたね」 「射撃スタイルの指導をしていたのだから、体に触ることもある。 誤解だ。すぐに釈放してくれ」 立場の逆転というものは人間をここまで動揺させるものらしい。 老教官の姿は、人生を誤り、その道を踏み外してきた者のそれと何 から何まで同じだった。 「パンティを売ってくれといったのですね」 主任刑事の事務的な追求に、老教官は、血相を変えて叫んだ。 「違うんだ。スタイルが決まったから、『ぱーんって撃って』と言 ったんだ。信じてくれ!」 「な、なんですって…ぱーん!」 「そうだ、ぱんだ、ぱーん。あんなブスのパンティなんかほしがる 男なんかいるものか」 突然、主任刑事の顔色が変わった。 横で聞いていた新米刑事は事の成り行きに身震いした。 「やっぱ、一度ブタバコに入ったほうがいいようですな」 哀れな老教官はこの主任刑事とセクハラ女刑事が、署内で不倫の 関係にあることを全然知らなかったのである。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。