第23回1000字小説バトル
Entry13
「トントン」 二日酔いの早朝に、誰かがドアをノックしている。僕はドア越し に覗き穴から外を見てみた。すると、そこにはカメの絵の書いてあ る野球帽を被ったゾウガメがいた。彼は僕の気配を察知したらしく 「あの〜お届け物ですが〜印鑑お願いします」と言った。 僕は、ドア越しにいるゾウガメが悪名高い読朝新聞の勧誘でない ことを祈りながらドアを開けた。 「朝早くすみません。お届け物です」 「ご苦労様。サインで良いかな?」 「えーと、上から印鑑といわれているもので、印鑑でお願いした いのですが」 「大丈夫だよ。普通はサインで大丈夫だからさ」 二日酔いの僕は印鑑を探すのが面倒だったのでサインで済ませよ うとした。彼はちょっと困った顔をしてからサインでいいと言った。 サインを済ませると、彼は帽子の重さに耐え切れないような動き でペコリと頭を下げ、ゆっくりと去っていった。 ゾウガメが持ってきた届け物は立派な箱に入っていた。送付者の 欄には見覚えのない名前が記されていた。箱を開けてみると、そこ には紙切れが一枚入っていた。 何でこんな箱に入れて送ってきたのかはわからないけれど、僕は 紙切れを手にとってみた。 *************** * お 楽 し み 券 * * * *これを知らない人に * * 送って下さい * * * * ゾウガメ急便 * * 4656−5772 * *************** こんな紙切れだった。 僕は何かの悪戯なのかと思った。しかし、これがゾウガメ急便の 陰謀であっても、さっきのようにゾウガメが誰かに贈り物を届ける 姿は悪くないし、なかなか素敵な光景だと思ったので、誰かに送る ことにした。 きっと、これがお楽しみということなのだろう。 さて、誰に送ろう。僕は電話帳を引っ張り出して、適当なページ をめくってみた。342ページの鈴木博という15人連続の同姓同名が 目に付いた。そして、その4番目の鈴木博さんに送ることにした。 4656−5772に電話をすると女性が電話に出て、これから荷物を引 き取りにくるという。女性の話だと、ちょっと配送員のゾウガメが 出払っているのでちょっと時間が掛かるが気長に待って下さいとい うことだった。 あれから、一週間がたつがまだ僕の手元にお楽しみ券はある。僕 は、毎日荷物を引き取りにくるゾウガメのためにコーヒーとクッキ ーを用意して待っている。 時々、電話帳の4番目の鈴木博さんがゾウガメからお楽しみ券を 受け取る場面を想像してみたりしながら……
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