第23回1000字小説バトル
Entry14
私ノ好キナ猫ハ梅<埋メ>ノ木ノ下ニ埋マッテイル・・・ 代々飼っていた猫だった。名前はアオと言う。 彼はアンという名のトラ猫の子として生まれた。 アンの子は三匹。アカ、アオ、キーと名づけられた。何故なら、 首輪の色が赤、蒼、黄だったから。 アカは勘が鋭く気が強く、頭の良い猫だった。 アオは体ががっしりとして毛並みの良い活発な猫だった。 キーは性格の良い大人しい猫だった。 四匹はとても美しい親子で、私たち家族は彼らを愛していた。 しかしある時、彼の母のアンが車に撥ねられた。 アカは行方不明になった。 せめて、死体だけでも見つかればアカも弔ってやれたのに……。 哀しみの中、私たちは確かにそう話していた。 居なくなってしまった彼女達の分もと、私たちは残りの兄弟をい つも大切に慈しんだ。 秋の気配の漂う日、アオが行方不明になった。 必死で探した。家の中も、裏の山も、近所も、道のむこうも、川 の向こうも。だが、三日経っても、彼は出てこなかった。 諦めかけたある日。 「鈴の音……ほら、鈴の音がする!」 あのとき、アオしか鈴は付いていなかった。 立ち上がった母が目にしたのは、蒼い首輪をした猫が家の前の歩 道へスルスルと歩いていくところだったという。 「アオ、待ちなさい!」 玄関を開けたときには、道路を渡っていく猫の影……。 「ねぇ、アオが居たよ!早く来て!」 母は叫ぶと、道路の向こうの駐車場へ、その影を追っていった。 暫くして、探しに出ようとした私たちの元へ、母が帰ってきた。 「車の下に潜り込んでいるの……。」 急いで駆け出した私たちが、車の下のアオを引き摺り出した時。 「アオ」は冷たく固く、なっていた。 夕暮れの中。 私もあの時、アオの鈴の音を聞いていた。
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