第23回1000字小説バトル
Entry16
蛭川建設重要緊急会議は荒れていた。いつ踊りだすか分からない ぐらいに。 出される意見は、概ね非建設的だった。が、建設的意見を述べる ことの危険性は、此処にいる誰もが理解していた。 「しかし、20ちょうですぞ。この機を逃すわけには……」 「だからこそ、リスクをご理解いただきいと思うわけです。顧客と 手を切ってまで行う価値がありますか?」 そのなか。融資部長の間宮謙吾は、まったく違うことで頭を悩ま していた。貧乏ゆすりを抑えるのにも一苦労だ。今日は三女15歳 の誕生日。 7時に予約していた店に行かねば、嘘つき呼ばわりされる。口を聞 いてもらえるかどうか。死活問題だった。 無論、会議の重要性は十分認識はしている。 発端は、政府側が公的資金を使っての回しを行いたいと極秘裏に各 ゼネコンに伝えてきたことに始まる。回しというのは同一の土地を 使って、幾度も建設計画変更を行う事だ。建設の繰り返しにより、 ほぼ無制限に金を流す。その1順目をうちで、と言われているのだ が、いろいろと絡むものもある。 もっとも、間宮にとっては、今、家庭事情が一番深く絡んでいた。 「政府のいうことを信じるのですか?総理だって、いつまで持つや ら」 「……どの道、連絡役を選ばねばならぬことに違いはないでしょう 」 間宮は幾度も時計を見た。6時までに終わらせなければ、恐らく 店には間に合うまい。隣席のひそひそ話しに終始する会議に終わり は見えない。間宮に苛立ちが募る。 「わが社の業績を伸ばすチャンスだと思いませんか?」 「こんな危険な賭けで、今までの顧客を失うのは困る」 2つの意見で、すでに午前から10時間がつぶれていた。 とまれ、やる。やらない。どちらにしろ、政府に連絡をつける者 が必要だ。犯罪に近い行為。失敗したら自分のポストも失う。 「見たことありますか?20ちょう」 いくら総資産150兆の、この会社でも、さすがにそれほどの額 を一度にみたものはおるまい。 もう5時55分だ。間宮は、半ば投槍に覚悟を決めた。元劇団員 特有の音声滑舌を炸裂させる。 「私がやります! 20兆もの大金を動かせるのは私しかいません !」 一瞬沈黙した会議場で、困惑の所為か会長がやや的外れなことを 言った。 「ま、間宮君。20兆だぞ。第一、み、見たことあるのかね?」 「え? ………ええ。近所の豆腐屋で」
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