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第23回1000字小説バトル
Entry19

夕食うんこ

作者 : 百内亜津治
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文字数 : 1000
 また憂うつの朝がはじまった。いつものようにトーストを焼き終
わると、キリンはわたしのうしろに黙ったまま立っているのだった
。そしてテーブルに運ぶと、奴は勝手に食事をはじめて、牛乳で口
元を真っ白にしながらわたしを詰問してくる。
「君はあけみちゃんに丸3日電話も入れないで、それで本当に彼女
を愛していると言えるのか?」
よけいなお世話だ。おまえがいるから彼女に会いたくても会えない
んじゃないか! わたしは座っているキリンを激しくにらんだ。す
ると奴は突然立ちあがってわたしの腕を捕まえようとした。わたし
は身をかわして、そのままアパートを飛び出した。

 夕方になるまで、高校時代の友人の家にいた。そして、家に戻る
途中あけみちゃんのアパートに寄ってみた。彼女は留守だった。

 重い気分のまま家に戻った。居間では、キリンが険しい表情で座
っていた。それからわたしの方を見ると、立って冷蔵庫を開けた。
わたしは何となくテレビを付けた。
「うるさい」
キリンはテレビを消し、持ってきたケーキの箱をテーブルに置いた。
「これが今日のおまえの夕食だ」
そう言われたので箱を開けてみると、一本のうんこが、柔らかなカー
ブを描いて横たわっていた。わたしは箱を乱暴に閉めてから、キリ
ンをにらんだ。
「食え!」
キリンはそう叫ぶと、木刀を持ってわたしを威嚇した。ここで逃げ
てなるものか。わたしは負けじとキリンを強くにらんだ。

それからキリンは、わたしを木刀でたたきはじめた。わたしはうず
くまってそれに耐えていた。もうろうとしてきた意識の中で、寝室
のドアが開くのが見えた。女性が出てきて心配そうにこちらを見て
いる。あけみちゃんだ……。一体どうしてここにいるんだろう?
「お願いだからお食べになって……さっき私もあなたのを食べまし
たの……」
「俺が連れてきたんだ。意気地なしのおまえに代わってな」
キリンはそう言うと得意げな表情をした。
「そう、これは彼女のうんこだ。愛し合うふたりが、お互いの排泄
物を食する……ああ、これ以上の愛情表現があろうか……」
一瞬、キリンは大きな目をうるませたが、すぐに気を取りなおして
うんこをつかむと、わたしの口の中に強引に押しこんできた……。
 再び失いかけた意識の中で、思ったよりも甘いそれを口の中で味
わっていると、あたたかいものがわたしにおおいかぶさり、そして
柔らかい唇がわたしの唇にふれて、ふたりの愛は確実にそして激し
く深まっていくような……。






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