インディーズバトルマガジン QBOOKS

第23回1000字小説バトル
Entry25

紙飛行機

作者 : 川島ケイ
Website : http://www4.plala.or.jp/riverland/
文字数 : 1000
 よく晴れていて暖かかったので、行くあてもなく歩いていたら、
すーっと、私の横を紙飛行機が通り過ぎていった。一瞬目を疑った
けど、それは確かに紙飛行機で、ちっとも落ちる気配はない。いっ
たいいつまで飛んでるつもりだろうと気になって、「待って」と声
をかけたけど、もちろん紙飛行機に言葉が通じるわけもなく、すい
すいと軽やかに飛んでいく。その後ろを、私は小走りでついていっ
た。

 昔から、紙飛行機を作るのだけは得意だった。特別な折り方をし
ているわけではない。ただ私の場合、気持ちの入れ方が違うのだ。
みんなは、紙飛行機なんて落ちるもんだという前提で作るのだけど、
私は、落ちたら負けだ、というぐらいの気持ちで作っていた。だか
ら私の紙飛行機はとてもよく飛んだ。いずれ地面には付くけれど、
十分に飛行したあとのそれは落下ではなく、着陸なのだ。
 私のほかにもう一人、よく飛ぶ紙飛行機を作る子がいた。サキち
ゃんというその子の家は製紙工場をやっていて、そこで特別に彼女
専用の紙を作ってもらっているという噂だった。その紙には真ん中
に「サキ」と書いてあって、それはサキ印の紙と呼ばれていた。彼
女はその紙を、きぎょうひみつ、と言って誰にも渡そうとしなかっ
たから、よく飛ぶのが彼女の力なのか紙の力なのかは、はっきりし
なかった。
 小学校の卒業式の日、それまで私とは口を聞いたこともないサキ
ちゃんが、「ぜったい落ちないやつ作って」と言ってサキ印の紙を
一枚くれた。サキちゃんが私に一目置いていてくれたのだというこ
とが嬉しくて、サキ印の紙を手に入れられたということも嬉しくて、
私は丁寧に丁寧に紙飛行機を作った。
 飛ばすのはちょっともったいないような気もしたけど、サキちゃ
んがせがむので、教室の窓から紙飛行機を飛ばした。するとそれは
遥か遠く、ついには見えなくなってしまうまで、まっすぐに、美し
く飛んでいった。

 軽やかに飛ぶ紙飛行機の後ろを走りながら、もしかしてこれはあ
のサキ印の紙飛行機なのではないか、と私は思った。あれからもう
5年も経っているけど、私はあのとき、着陸もしちゃダメ、という
気持ちで折ったし、なによりサキ印の紙を使ったのだ。
 確かめてみたいけど、そのためには中を開いて見てみなきゃなら
なくて、そうすると紙飛行機は止まってしまう。
 サキちゃん、どうしよう、と思いながら、私はどこまでも飛んで
いく紙飛行機の後ろを、息を弾ませついていった。






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