第23回1000字小説バトル
Entry27
締め切りが迫っていた。私は小説家ではないが、アマチュア作家 としてインターネット上で作品を発表している。理数系サラリーマ ンの趣味として、主にSF小説を書いている。 深夜自室のパソコンに向かって、私はかなり焦っていた。今夜中 に作品を仕上げなければならないというプレッシャーも有ったが、 私には気になることがもうひとつあった。 一年程前から、私の作品に寄せられる感想にひとつの傾向が見ら れ始めた。最初のうちは「面白い作品ですけど、同じ様な話をどこ かで聞いたような気がします」とか「結末の文章が○○さんの作品 にそっくりです」という穏やかなものであったが、そのうち「□□ 物語とストーリーが同じです」と指摘され、遂には盗作呼ばわりさ れるまでになった。 非難の対象となっている作品を読んでみると、情けないことに指 摘の通り最初の部分が似ていたり、ストーリーや落ちが似ていて、 盗作と呼ばれても反論できない面もあった。 もちろん、私が盗作だと気付くのは、作品をネットに発表した後 で、執筆中はそんな意識は少しも無い。自分の頭の中で作り上げ、 熟成させたストーリーを発表しているはずなのだが、言われてみる とやっぱり似ている。 わたしは自信を喪失し、執筆を断念しようかと思い悩んだ。しか し、その間にも頭の中には書きたくなるようなストーリーが次々と 湧いてきた。 これは私の脳味噌の中のデータベースがバグッているに違いない。 そう思い込んでから、私は自分の創作に異常に神経質になり、結果 として何を書いても以前に同じようなストーリーを見聞したことが あるような錯覚に襲われるようになった。 この猜疑心を克服するために、私は作品の発表前に同様なストー リーを全てチェックしなければならなくなった。インターネットや 書籍はもとより、映画、ビデオ、うわさ話、紙芝居……私が見聞き するストーリーのソースは膨大にあり、その全てをチェックするこ とは不可能に思えたが、執筆を断念するよりはましと考え、その作 業に没頭した。 思いつく限りのチェックを終えて、自身満々に発表した作品「ト ラえもん」は、しかし、主人公の名前から、便利なSF道具を取り 出す手段まで、子供向けSFアニメ番組の盗作だという非難を浴び た。 打ちひしがれた私は、私がまだ狂っていない事の証明と私の執筆 人生を賭けて、最後に私小説的作品を発表することにした。 どうにか締め切りに間に合ったようだ。
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