インディーズバトルマガジン QBOOKS

第23回1000字小説バトル
Entry6

blind soldier

作者 : 筬島 桂
Website : http://homepage2.nifty.com/catharsis/
文字数 : 635
目の見えない戦士がいた。
彼は戦闘機がベッドとなってから久しい。

ある夜、彼は言った“この町はおもちゃみたいだ”と。
そしておもむろにミサイルのカバーを開けると
闇夜に浮かび上がるその目みたいなボタンを押した。
“GAME OVER”とタバコに火をつけながら。
赤いスィッチは彼に何一つとして語りかけることはない。

彼は幼い頃、ゲームでよく遊んだものだった。
今だってなにも変わっちゃいない。
変わったことといえば彼の身体がほんの少し大きくなったくらいだ。

誰のために戦ってるのか?

なんて遠い記憶の中でひっそりと、どこかに行っちまった。

彼には年老いた母が一人、湖しかない田舎町に住んでいる。
彼女はなにも望んじゃいない。
この男の存在を忘れなどしない。
ただ待つことに疲れ果ててしまっただけなんだ。
彼女のけばだったコートの襟を握りしめて甘えてみせる
幼なかった時間をたどる男の写真を日差しなんか入りゃしない
窓辺に記憶の断片たちと規則正しく遊ばせている。

この女が懺悔とも何ともつかないため息を漏らした頃、
男は眠りについた。
硬く黒い髭から落ちる脂ぎった汗が、この男の流す最後の涙だ。
ただ彼は母親の胸で甘えていたかっただけなんだ。
そんな簡単なことができなかった。
ただそれだけなんだ。

何もこれは悲劇なんかじゃない。
彼は生きているのだから。

この男が死んだような目を向けてもこの老女は知っている。
彼の瞳には光があるってね。
そう、彼は生きているんだ。

その証拠に彼は小豆色の血を燃やして
今夜もゲームを続ける。

目を閉じたまま






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