第23回1000字小説バトル
Entry7
アブはハチに聞きました。 「ねぇ、とても熱心に蜜を集めているハチくん。僕に教えておくれ よ」 「なんだい?」 「命ってなんなのさ」 ハチは困って飛び上がりました。 「そんなの僕に分かる分けないだろ。あっちのチョウチョくんにで も聞いてくれよ」 アブは真っ白なチョウチョの隣に座って、お願いしました。 「ハチくんに聞いたんだけど、分からないって言われたのです。チョ ウチョさんに聞いてみろと」 「おや、何かな?」 「命って何なのでしょうか?」 チョウチョは翅を羽ばたかせました。 「それは私にもちょっと……スズメさんなら分かるかも」 アブは高く飛び上がって、スズメのお宿まで飛びました。 「わかんないよそんなの。ハトおじさんなら知ってるかも」 今度はハトに聞きました。 「いやぁ、無理だねぇ。タカ兄さんなら、答えてくれるかもしんな いけど」 期待を込めて、タカのところにいきました。 「ごめんなアブくん。おいらにもわかんないや。ヘビのおじいさん なら物知りだよ」 おそるおそるヘビの頭に止まりました。 「ありゃぁ、そりゃむずかしい問題だべ。どうじゃろ、ちょっくら のっけてやるけん、地底の竜王様んとこさ、聞きにいかんべか?」 アブは大喜びしました。ヘビはアブを連れて竜王に目通りを願い ました。 「なんと! アブがそんな問いを抱えていたのか。だが無理だ。儂 とてもそれには答えかねる。答えてくれそうな生き物といったら、 人間くらいだ」 ヘビはアブと一緒に人間のところにいきました。ちょうど遊んで いた子どもがいたので尋ねました。 「ええ? 分からないよ。僕、そんなこと考えたことないもん。僕 のお父さんはがくしゃさんだから、しってるとおもうよ」 子どもは快く、お父さんを連れてきてくれました。 「なんて珍しいアブなんだ。それこそは私が一生をかけて探してい る問題なんだよ。だから、すまないけど答えて上げられそうにない 」 アブとヘビは竜王のところに戻りました。人間も教えてくれませ んでしたと。 「言い忘れていたよ。子どもと哲学者には聞いても無駄だ。立派と 呼ばれている者に聞くとよい」 アブは言われたとおりにしました。 それはお金を稼ぐことさ。子どもを育てることさ。人を殴ること さ。おいしい物を食べることさ。お酒を飲むことさ。神様の言うと おりにすることさ。人と仲良くすることさ。 アブはたくさん教わりました。思ったのです。 どれが本当なんだろう?
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