第23回1000字小説バトル
Entry9
父は僕の目の前で自殺した。静かに自分の頭を打ち抜いて、、、、 、 僕は、その時はじめて父の涙を見た。 僕は生まれた時から、父と二人で、暮らしていた。外界とは閉ざさ れた山奥で、、、 父は、母の事を語ろうとはしなかったし、僕も聞きたいとは思わな かった。 父は僕に多くの事を教えた。飢えをしのぐ方法、何時間も同じ場所 から動かない方法、 そして人間を効率よく殺す方法、、、、、 しかし、父は僕に感情は教えなかった。だから僕は感情を知らなか った。喜び、悲しみ、怒り、、、 すべての感情と呼ばれる物を僕は感じたこともなかった。いやむし ろ理解すらしていなかった。 それが何か、どんな物か、どういうときに感じるか、僕にはわから なかった。 そうあの時までは、、、、、 「すべての感情は人間の作り上げた、ただの決まり事なんだ、悲し い時に泣くなんてだれがきめたんだ?もしかしたら悲しい時は笑う もんかもしれないだろ?だれかが悲しい時にないて、ただそれがそ うってきまっちまっただけなんだよ。」 父はいつもそう言っていた。しかし僕には、悲しいがなにか、泣く がなにかわからなかったし、わかろうともしなかった。 僕が初めて父の仕事についていったのは5歳の時だった。父は高層 ビルの上で何時間も、小さな丸いレンズをのぞき込み、微動だにも 動かなかった。そしてしばらくして、静かに引き金を引いた、そし てレンズの中に捕らえられていた男は、静かに崩れ落ちた、、、、 父と僕は足早にその場を立ち去った。帰り際、父は僕に言った。 「生きるためには迷うな、迷ったらこれを引け。」 そう言うと父は銃の引き金を引くジェスチャーをして見せた。 僕は迷いと言う意味が分からなかった、ただ父のなかには感情と呼 ばれるなにかが存在していて、父はそれを否定し、抑圧しようとし ているのはわかった。 迷ったら引き金を引け この言葉の意味は分からなかったが僕の中の深い所へしみこんでいっ たように感じた。 僕が15歳になった日の朝、父は僕を呼んで言った。 「もうお前に教えることはなくなったな」 父はそれだけを言うと、静かに、銃を僕のほうへよこした。 僕はそれを静かに受け取った。 その年父は死んだ。 それから10年がたった今、僕はまだ仕事を続けている。 ある日、僕はいつものように仕事を請け負った。あるマフィアのファ ミリーを全員殺害するという仕事だった。 僕はマフィアのアジトへ足を運んだ。 その建物の前に着くと、入り口に居た二人の男の額を打ち抜いた。 サイレンサーから、小さな音がしたのと同時に男はしずかに、崩れ 落ちた。 僕は静かに中へ入った、ドアを開けると同時に動くものすべてを打 ち抜いた。 あたりは一瞬で静けさに包まれた。鼻をつく鉄臭いにおいと、硝煙 にくぐもった空気が妙に心地よかった 僕の目はドアのかげから一匹の犬が足を引きずりでてくるのを捕ら えた、静かに今にも消え入りそうな声をあげながら、、、、 僕は額に照準をあわせた。 犬は助けを求めるかのように、僕の方へゆっくりと近づいてきた。 僕は引き金を引いた。 犬は静かに吠え、宙を舞い、鈍い音とともに、息絶えた。 僕は静かに歩き出し、一番奥の部屋へと向かった。 中に入ると、一人の男が、涙を溜めわめいていた。 僕はその男の額に照準をあわせると、まだ命乞いを続けていた男を 打ち抜いた。 男は、その場に崩れ落ち、静かになった。 その場を立ち去ろうとしたその時。部屋の奥に小さなベットがおい てあるのに気づいた。 僕はそっと近づき中をのぞき込んだ。 中には小さな赤ん坊が寝ていた。 僕は銃を構えた。 赤ん坊は無邪気に笑い僕の銃に手を伸ばしてきた。 赤ん坊の手が僕の銃に触れた。 その瞬間、僕の中で何かが弾けた気がした。 僕は静かに引き金を引いた。 弾は僕のこめかみを静かに、通り抜けた、、、、、、、、 目から涙と言う物がこぼれていた。 その時はじめて僕はわかった。 父は僕を愛してたんだ、、、、、、、、
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