第24回1000字小説バトル
Entry18

ポンコツ先生とキジ

作者 : 紺詠志
Website : シコウ回路
文字数 : 1000
 学校の裏の小山をのぼるポンコツ先生と子どもたちは、課外授業
のさなか、するどい鳴き声を聞いた。
「キジの声だよ」と言うポンコツ先生は、ロボットなのだが、ひど
くポンコツなので、みんなにポンコツ先生と呼ばれている。
 銀色の四角い頭をくるくるまわして、ポンコツ先生は、あたりを
うかがった。また一度、鳴き声がすると、先生は、欠けた輪っかの
ような二本指の手で子どもたちを招いて、山道をさらにのぼった。
 道の真ん中に、オスのキジがいた。子どもたちの多くは、キジを
見るのが初めてだったので、その美しさに歓声をあげたが、ポンコ
ツ先生は指を四角い口にあててシーと大きな音をたてた。
「しょくんは、キジも鳴かずば撃たれまい、という言葉を知ってい
るかね。いつかテストに出すよ」と、大きなひそひそ声で言った。
「さて、あれを撃ってみんなで食べるとしよう」
 ポンコツ先生は右腕を取り外した。ひじから先が、ライフル銃に
なっている。しかしポンコツなので、かなり近づかないとあたらな
い。足音をしのばせながら、けれども、ぎいぎいときしみながら、
先生はキジにしのびよった。
 ほとんど足元にまでせまり、ライフルをかまえたそのとき、キジ
が飛びあがってポンコツ先生の頭を蹴り、翼をひろげて空高く舞い
あがった。子どもたちは、そのキジの姿に見とれていたが、ひとり
が気づいた。
「あ、先生の首が」
 蹴られたはずみで、ポンコツ先生の頭がもげてしまい、子どもた
ちの足元を通りぬけて、山道を転げ落ちていたのだった。
 子どもたちは大いそぎでポンコツ先生の首を追いかけた。四角い
首は、ときおり大きくはずみながら、山道を転がっていたが、やが
て突き当たりの池にぽしゃんと落ちてしまった。
 池のほとりに、ぼろをまとった老人がいた。
「おやおや、首が落ちたぞ」息をきらしてかけつけた子どもたちを
見て、老人は言った。「やれやれ、わしが拾ってこよう」
 ぼろを脱いで、ふんどし一丁になった老人は、ゆっくりと足を水
面に沈め、胸のあたりに水をかけながら、池に潜っていった。
 しばらくして、池からあがった老人のわきの下には、ポンコツ先
生の首があった。それを受け取った子どもたちは、先生の体がある
ところまでのぼっていった。
 子どもたちが、ポンコツな胴体に頭をはめてやり、老人に拾って
もらったことを話すと、先生は礼を言いに池に向かったが、老人の
姿はなく、また一度、遠くでキジがするどく鳴いた。






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