第25回1000字小説バトル
 Entry28
 
アルマジロ
 
三月
 
 
 突入して5分は経ったはずだ。私とカメラマンのドナルドは家の東側、傾斜になっている地面に身を伏せていた。暗闇の中を時折の叫び声、銃声。
「――まだ捕まんないんですかね」ドナルドが言った。
「黙ってろ」私は答えた。

 ここミシシッピ州ではすでに8人がやつの犠牲になっていた。8人目の犠牲者は赤い髪の少女だった。名前はロドリー・ウィンコット。
 やつは、ポーチにいたロドリーの背後に忍び寄り、首に強烈な一撃を加えた。即死だったらしい。ロドリーは、唇が少しめくれたような、かわいらしい少女だった。
 二日経って今日、やつが民家を占拠しているという極秘情報が入った。

 二階の窓から鮮烈な光が走った。直後に窓ガラスが割れ、やつの、丸い姿が空を舞った。
「撮れ!」
 ドナルドはすでにシャッターを切っていた。一階にはすでに別働隊が、文字通り、「網を」張っていたのだ。
 やつの丸い身体は網の中に落ちた。
「撮れたか」
「と、撮りました」
「よし」
 そのとき、だった。

 がさり。

 背後に物音がした。
 私はハンドライトをかざした。斜面を楕円が走る。でこぼこの地面に、ちろりと黒いものが見えた。
 ドナルドがぽかんと口を開けた。
 のびた尻尾、かさぶたのような肌――間違いない、やつだった。
 私はペアで行動している可能性を忘れていた。今までの目撃証言がすべて単独だったせいだ。
 アルマジロは、私をにらみつけていた。つぶらな目がきらきらしていた。突然変異により人を襲うアルマジロ。このアルマジロはロドリーを殺したアルマジロなのだろうか。
 私はアルマジロの姿を注視していた。
 背中に汗が流れた。
 瞬間、光の中からアルマジロは消えた。
 私が気がつくのと、ドナルドが叫び、激しい音がするのとは同時だった。
「ドナルド!」
 光を当てると、頭を抱えてうずくまるドナルドがいた。暗闇を駆け抜ける素早い足音が聞こえた。
 助かったのか……? 私は呆然としてライトをおろした。光の輪の中に見るも無惨なカメラの姿があった。
 仲間の捕まった写真など撮らせないってことか――私は考えて、やつらの団結力に背筋が冷たくなった。

 私は振り返る。SWATの連中が、何か檻のようなものを運ぶ姿が目に入った。さらにその向こう、暗がりにきらきらと光るものが見えた。私は後じさりした。ドナルドをおいて車まで疾走した。叫び声が聞こえた。私の背後から小さな足音が迫ってきた。私は耳をふさいだ。
 
 
Website : 狭土蒼穹
文字数 : 1000
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