第25回1000字小説バトル
 Entry33
 
次はあなた
 
太郎丸
 
 
 司会者の元お笑いタレントは緊張のあまり声がうわずっていた。
「この問題をもし中田さんが正解しますと、なんと1億円の賞金となります。もちろん他の方が正解しますと今まで獲得していた中田さんの賞金の権利は無くなります。よろしいですね。それじゃ他の皆さんも番組とスポンサーさんの為にも頑張って下さいよぉ」
 司会者の作り笑いに2秒程遅れて、最後の問題は始まった。
「問題。第1染色体の肥満遺伝子は、レプチンレセプターと呼ばれていますが、第8」
【ピンポン】赤いボタンに置かれて鍛え抜かれた俺の右手は行動を起こしていた。
「おっとぉ、ここでいいのかぁ? それでは中田さん。答えをどうぞ」
 切り替わったカメラに向かい、俺はゆっくりと答えを発音した。
「ベータアドレナリンレセプター」
 暫くの静寂。そして正解のチャイムが響くと、客席から割れんばかりの拍手と歓声が上がった。
「正解です。すばらしい。番組史上初の1億円です。ではまず中田さんご感想を」
 俺は興奮している司会者を尻目に、笑いながら答えた。
「いやぁ。第7染色体にもレプチンという肥満遺伝子がありますんで、どちらかとは思ったんですが、第8と言ったんで直ぐに判りました」
 ちょっと嫌みだったかなとは思ったが、性格だから仕方がない。そう、後になって後悔しても買われた反感は買い戻せない。

 全く間違わない俺はクイズ番組では嫌われる存在となり、参加したいと言うと、いくばくかの金と丁重な断りが続いた。だが俺は寝る間も惜しんで勉強を続けた。

 表舞台からは退いた俺は、勝負師として放浪している。
 流れ着いた場所で挑戦をし勝負。もちろんクイズさ。俺が負ければ今まで獲得した賞金は全て相手のもの、そして俺が勝てば対戦相手から金を貰う。対戦相手には有利さ。クイズ1問につき1万円だからね。

 世界は広いねぇ、同じ商売の奴もいたよ。でも俺は未だに負けを知らない。
 やくざな稼業だから畳の上で死ねるとは思っちゃいない。何度かやくざに刺されたこともあった。だけど好きなことをやって死ねれば幸せというものさ。これが男のロマンってやつかも知れない。

 えっ。賞金かい? 今じゃ日本の国家予算を超えてるよ。ちょっとびっくりしたろう。ルールは簡単さ。答えがハッキリとわかっている問題であれば、どんな事でもクイズに出来る。だから予測する問題はダメだよ。どうだ、試しにやってみるかい? 諭吉さん一人でいいよ。
 
 
Website : 太郎丸の落書き
文字数 : 1000
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