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一年後の再会 綾重 寄之介 ちょうど一年前に別れた女房から電話があった。今晩会いたいというのだ。 電話口の彼女の声は別れる頃よりずっと前の、俺が愛していた頃のあいつを思い出させる声だった。 俺の浮気と彼女の浪費癖が原因で5年間続いた結婚生活に終止符を打ったのが一年前の今日だ。確か今と同じように小雨の降る肌寒い日だったと記憶している。 その時に交際していた女は、「不倫関係でないなら別れる」と言って去っていった。その後も何度か彼女に電話してみたが相手にされず、ある日、ガラの悪い男の声になったので諦めた。 仕事もつまらない作業に回されることになった。この異動は会社の嫌がらせであることは明らかだった。その頃に進行していた開発が失敗し、原因は俺の設計ミスとされた為だ。部長は懲罰人事とは明言しなかったが、俺を見る目が冷たかったのは忘れられない。 ともかくあれからろくなことはなかった。ここ半年ほど心療内科に通っているが薬の量は増えるばかり。何をする気も起こらないし、かといって仕事を辞めたら生活出来ないことは明白。この一年、ただ毎日辛い思いばかりしていた。 ふっとタクシーの窓から外を眺めたら、別れた女房にそっくりな女の姿が見えた。女は傘をさしているし後ろ姿なのではっきりとはわからないのだが、その服には見覚えがあった。 もう5年以上前、新婚だったころに女房がよく着ていた服だ。 待ち合わせのバーもここから近い。そのバーは結婚前から女房と一緒によく飲みに行ってたところだ。それに俺はそのバーでプロポーズしたのだ。 そうか、女房はきっと俺とやり直そうと思っているんだな。あいつだって俺の浮気に薄々感付いていて、そのストレスから浪費が激しくなったんだろうから、今となってはもう昔のあいつに戻っているだろうし。 俺はタクシーを停めて、傘をさしている女房のそばに寄っていった。 少し驚かしてやろう。昔二人でよくやった、後ろから急に抱きついて「おとなしくしろ!」なんて言ってみて。 薄暗い明かりの中で、淡いブルーのカクテルゆっくりと口に運んだ女性は、昔なじみのバーテンダーに微笑みかけた。 「私ね、今度結婚するのよ。離婚してから旅行したヨーロッパで知り合ったの。私もあっちで暮らすことにしてね。それを前の旦那にもちゃんと知らせとこうと思って、ここで今日会うことになってるのよ」 しかし、いくら待っても前の夫は現れなかった。 |
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