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左右 完崎竜 一組の電柱がありました。こげ茶色の木が二本で一組になっているものでした。漢字の「人」の様に、右側の木が左側の木を支えていました。左側を支えるのが右側の仕事でした。右側は左側が大好きでした。雪が降って、左側には沢山の雪が積もりました。 「右側、大丈夫?重いでしょう」 「ううん。平気。仕事だもの」 左側が心配して聞くと、右側は笑顔で答えました。 ある日、石ころ道の列の電柱の異動がありました。左側の支えも、別の右側になり、右側も別の左側を支える事になりました。移動後、初めて雨が降りました。左側をつたわって、右側にも雨の滴が流れてきます。 「ああ。冷たいな。右側なんて、いい事ないよ。冬には重くなった左側を支えなくちゃいけない。支えきれなくなって折れたりしたら、右側が怒られるんだ。雨が降ってももれなく左側から滴が流れてくるし。嫌だなぁ」 右側がそう言いました。左側は何も言えませんでした。黙っていながら、 (ああ、前の右側は文句なんか一言も言わなかったなぁ。そんなにも右側の仕事がすきだったのかなぁ) ぼんやりと考えていました。前の右側は、もう確認できないほどに遠くに異動されたのでした。 異動から40日後位の夜、文句を相変わらず言っている右側の話している声と一緒に、他の電柱の話し声が風に乗って聞こえてきました。 「あの、123番の右側がとうとう折れてしまったらしいねぇ」 「なんだか、異動した後はずんずん元気がなくなってしまったらしいよ」 「組んでいた左側はかんかんだったみたいだねぇ」 「軽い打ち身になってしまったって言っていたよ」 自然に流れてくる話し声に、左側ははっとしました。123番とは、以前組んでいた電柱の事でした。左側はおろおろしてしまい、 「すみませぇん!その123番はどうなったのですか?手当てをしてもらったのですか?又働けるようになるのですか?」 と叫びました。でも、風はその声を声が聞こえてきた方とは逆に流してしまい、聞こえてきた話し声もどの位先から流れてきたものなのか全然分かりませんでした。左側は、みるみるうちに泣き出しました。次から次へと涙はこぼれ、右側にもその涙がつたわってきました。 「あれ、雨でもないのに、冷たいものが流れてくるよ。嫌だな。冷たい思いをするのは雨の日だけで十分だよ。左側はもう少し右側の事も考えて欲しいな」 右側がしかめつらでこう言ったのが、左側にも聞こえてきたのでした。 |
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