第25回1000字小説バトル
 Entry8
 
頭が痛い
 
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 目が覚めるのは、たいてい昼過ぎだ。
 朝のニュース番組を見ながらベッドに入り、起きるのは午後の二時ごろ。学校にはもう二ヶ月も行っていない。どうしようかという自問を無視してテレビをつけると、どこの局も似たようなワイドショウをやっている。目が覚めてテレビをつけてワイドショウを眺める、というのが日課になっている。
 近所でボヤがあったらしい。画面には、黒く焦げた新聞紙や雑誌の束が映っている。「放火の疑いが濃い」というアナウンサーの声が、なぜか気に障る。
 僕がやったのではないか。理由もなく、そう思う。
 頭痛がする。この一週間ほど、この痛みに付き纏われている。だんだん酷くなるようだ。病院に行こうか、と昨日も一昨日も思ったことを反芻する。
 目を閉じて、頭の中を掻き回されるような痛みに、じっと耐える。
 「監視カメラに映っていたこの男性を」
 アナウンサーの声にびくりと顔を上げたが、映像は逃げるように切り替わり、棚に並べられたパンが映る。
 「混入されていたのは、長さ約5センチの針で」
 痛みを堪えるために額に当てていた手がぬるりと滑る。見ると掌が赤い。血だ、と気づくまで少し時間がかかった。頭痛のせいだろうか、いやそんなわけは……部屋を出て洗面台までふらふらと歩く。鏡に映る額はべったりと血に塗れ、髪の毛が貼り付いている。蛇口をひねり、とりあえず血を洗い流した。ぱっくりと口を開ける傷口を予想したのだが、それはなく代わりに鏡には銀の突起が映った。鈍い銀色に光る面皰のようなものが、点点と額に生えている。血を洗い流しても、その銀色の突起の根元から、血がじくじくと滲み、流れる。洗っても洗っても、すぐにぽつぽつと赤い斑点が涌き出て、そこから血が流れる。
 呆然と鏡を眺めていると、銀色の突起が大きくなっているのに気づいた。いや、長くなっているのだ。突起の、額から突き出ている部分が長くなっている。額の下、頭の中がどうなっているのか想像して気分が悪くなった。
 頭痛。洗面台に寄りかかり目を閉じて吐き気をこらえていると、カツンと乾いた音がした。ふっと頭痛が軽くなったような気がして目を開けると、洗面台の上に血に塗れた針――ちゃんと糸を通す穴もあいている――が転がっている。鏡を見ると、銀色の細い針が今にも抜け落ちようとしていた。
 
 
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文字数 : 960
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