第28回1000字小説バトル結果
第28回1000字バトルの結果は、由述ヨシノさんの『虹のかたち』がチャンピオン作品と決まりました。
由述ヨシノさん、おめでとうございます!
皆さま、ご投票いただきましてありがとうございました。
※投票いただいた方へ:「投票したはずの一票が入ってない!」「私の感想文がない!」このような事がございましたら、直ちにご連絡いただけますようお願い申し上げます。
※☆が実際の得票の数を表しています。★は「次点」「他に面白かったもの」といった感想の合計です。バトル集計には含まれません。
- 虹のかたち (由述ヨシノ)
- そこはかとなく漂う空気感が素敵です。
夢を追う気持ちと現実とのあいだで揺れ動いている隣のお兄さんの存在は、きっと誰の心の中にも存在するのではないかと思います。
雰囲気もいいし、読んだ後に何かが残る作品です。
- 行けない場所を迷いつつも追い求める
愚か
無駄
若いから
責任がないから
その通りだ
だがかと言って
己の目で確かめず
納得もせず
すごすごと帰途につけるか
諦めたものは進まず
諦めぬものは戻らず
同じ場所で朽ちたとしても
顔の向きは違う
――共感したので一票。まあそーゆー事。
全作品を読んで気になったが、死ぬ話が多すぎる。
現実の人間ではないから死のインパクトが使い易い――と思っているならそれは間違い。現実と同じ位の葛藤が伴わない「死」は、ただの文字である。ご一考を。
- なぜか惹かれるものがあった。なんとなく素敵だなと。虹研究家ってのは、実際にいるのでしょうけれど、こういう愛らしいものではないでしょうね。そう思うと、なんか虚しい。
「虹の根元」というのも、「虹」はよく考えるのに、よく考えたこと無かった分新鮮でした。あー虹の根元って行って見たいね。
すごく読みやすく、それでいて含蓄のある文体も気にいりました。
今回は、実験作ふうの作品が非常に多く、楽しめました。
あと、募集中さんが案外、やったな。という感じ。あれだけいうだけはあります。分かりやすさを特に評価。
Ruimaさんも学生ながら一般に紛れても遜色ない出来でした。
- 虹は、それを見ている本人の目を中心に形作られるという。
つまり、あなたの見ている虹は、隣の彼女の見ている虹とは別物なのだ。
虹は、客観的には存在しない、文字通りの幻。
みんなが、それぞれ勝手に「見ている」夢なのだ。
と言う話を思い出した。
こういう、自称虹研究家のような、ちょっとだけ、変な人の話は好き。
オチも、教訓もない話がいい。
と、いいながら、同時に、「カリナくんの日常」もよかった。
モロに説話的な内容だけど、まとまり感が心地いい。
他には、「十二時半のメール」と「犬の生活」。
夫婦モノには、妙な切実感があるものが多い気がする。
- 心霊写真(上條 裕)
- 感性で選んだ。
ずば抜けて面白いというわけではないが、安定した作品だと思った。
気になった作品は、
「ミラクルダイエット」
「虹のかたち」
「ヘモグロビンコンプレックス」
などがある。
- 発想の転換が面白い。関西弁が心霊写真のおどろおどろしさを取り払うよい効果を生んでます。巧いですね。
他に、気になった作品は下記のとおりです。
「意味不明(2)」名乗りたくもないさん→意味不明だけれど、この不条理世界のユルさが心地よいです。
「【美花】」卯月春生さん→二人の関係がうらやましい。独白体なのに、二人の女の子の心情がどちらもうまく描かれていて共感できました。
「新車にて。」犬吉さん→曲が、フェードアウトしていく>というフレーズ大好きです。作品の雰囲気にホレました。
「虹のかたち」由述ヨシノさん→虹研究家の夢がかなって欲しいような、欲しくないような。宙ぶらりんな気持ちになってしまって、なぜかそれが心地よかった。夢と現実のバランスがうまく取れた作品だと思いました。
- ヘモグロビンコンプレックス(るるるぶ☆どっぐちゃん)
- 抜きんでた作品という訳ではないけど、安定した内容で好感がもてたので推薦します。
次点というか割と面白かったのは以下の4点です。
「平蔵の逆襲」「心霊写真」「決闘嵐が原」「人気店」
- 「十二時半のメール」とこの作品の雰囲気がどちらも好きで、迷いました。
文章の良さを取って、こちらに一票。
せつないけど、綺麗だな、と思った作品です。
- 始まりは終わり、終わりは始まり(高橋雄一郎)
- 人は死んでいく時に何を思い、考え、
何を思い出すのだろう。
「今までありがとう」
父はそういって死んでいった。病気で。
姉は誰もいない夕暮れの部屋で一人で
黙って死んでいった。
高橋雄一郎さんの「始まりは終わり、終わりは始まり」は
迫り来る断頭機による死を前にした人の心の中が
真実味を帯びて表現されている。
言葉は豊かでまるで、自分自身が遭遇した気持ちにさせられた。
断頭台の上で
マリーアントワネットは
何を考え どう思って死んでいったのだろう。
今年 パリでその場を見てきたが、
これを読んでいたら
見る目もまた違っていたかもしれない。
作品名は 妥当かどうかは疑問です。
- 平蔵の逆襲(やすくん)
- 奇妙な自殺(日雇いくん)
- 面白かった作品は次の6作品でした。
Entry3「熊(勝治)」
またぎの話に弱いです。「なめとこ山のくま」に泣きましたから。
主人公が優しすぎて、涙が出そうです。
Entry5「意味不明(2)」
「ガロ」っぽいですね。漫画のほうが向いてるかも。
途中までは、ものすごくよかったです。面白かったです。
しかし、ラスト2行で、いきなり現実に引き戻されました。
ひねりつくした感じがします。
Entry9「平蔵の逆襲」
面白かったです。ポリアンナ爺さんですね。
「私」の寂しさもわかります。
Entry19「奇妙な自殺」
少し読みにくかったですが、面白かったです。テーマ曲が頭の中を流れました。
ラストのおっさんのセリフの前半部分が無かったらもっと良かった。
でも、若者は置いてけぼりなネタですね。
Entry28「眠れない夜」
面白かったです。予想以上でした。前半に騙された。
でも、窓は開けちゃいけませんよ。
Entry35「朝のバイオレンス」
面白い。佐藤蛮人さんは絶対血液型がBだ。
この主人公は自分なんじゃないかと思った。
将来性を汲んでEntry19「奇妙な自殺」に感想票を差し上げます。
ホント、しゃれにならないおじさんでした。
- 十二時半のメール(翡翠)
- 時が経てば時めきも色褪せてしまう。
それが夫婦であればその淋しさを紛らす術は限られてしまうもの。
そのひとつがいま流行のメール。
目の付け所いいし、一行メールというのもいい。
そして最後の落ち。
想像は出来たけれど少し胸キュン。
- 紅い唇(再会編)(さとう啓介)
- この作品、不思議な魅力があります。ある意味ナンセンス、ニヒリズム、短絡主義、実在を飛び越える空想だと断定できない期待感。ホントにいたら、どうするの!平助けじいさん。1000字で風景が見えます。昔読んで感動した「ためいき」みたいな。胸を張るべきです。
- 母(Ruima)
- Ruimaさんの『母』を推します。遠い1メートルは、これからも遠いだろう。でもその距離を感じているあいだ、母娘の関係は少なくともそこにある。
- 犬の生活(募集中(仮))
- 小生の「心霊写真」も 悪くないと思いましたが、自分の作品ですので。
募集中(仮)さんは しっかりとした感想を掲示板に出されるだけあってストーリーと文章のバランスが 抜群だと思いました。
他には「決闘嵐が原」のぼりんさん−おち と 文章はさすが。
「太郎丸沈没」三月さん−文体はしっかりしていますが 物語がもう一つ
「母」Ruimaさん−物語の展開がしみます。
と 言った所です。
- お望みの結末を(楠木マユミ)
- 全部読みましたが、引きつけられたのは以下の作品です。
23.秋の雛祭り-あっけらかんとした中にジーンとくるものがありました。
27.闇の鎖-淡々と進められる復讐が怖かった。
32.お望みの結末を-最後が何とも言えない、いい感じがした。
35.朝のバイオレンス-せわしかったが内容は濃かった。
- 朝のバイオレンス
(蛮人S)
- 『始まりは終わり、終わりは始まり』(高橋雄一郎氏)は、書いてある事は決して気持がいいとは言えないけれども、文章にはこれまで凡百の臨死ものには見られなかった独自な神経が通っていて、印象に残った。
『闇の鎖』(瀬野 美智緒氏)も、事件の原因がほとんど背景に隠されている一方、強烈な憎悪の感情だけが理不尽なまでに強い。人間の心の怖ろしさが暗く迫ってくるのを感じた。
『朝のバイオレンス』(蛮人S氏)を推す。言葉遊びや「私」語り、そして近未来的な設定と、楽しい仕掛けがいろいろ仕組まれている。恐怖が芽を出し次第に振幅を増し、一気に終末になだれ込む手口もこの分量にぴったりである。しばらくスタッフ業に専念されていた作者が、こうした佳品を物されたのはたいへん頼もしい事だと思った。