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第33回1000字小説バトル Entry18

老師と弟子と猫

「おい、弟子よ」
「なんでしょう、お師匠さま」
「人間が人間たる所以はなんじゃと思う」
「……またですか、お師匠さま。私は眠いのですが……」
「答えたら眠らせてやる。何をもって人間と称すか」
「分かりましたよ、ええと……考えれば、ではないでしょうか」
「いや違う。鳥や獣でもものを考えて生きておるじゃろう」
「……鳥や獣が考えているかどうかなんて、お師匠さまに分かるんですか」
「何をもってか」
「すぐごまかすんだから……分かりましたよ、降参です。今日のは何が言いたかったんですか」
「なんじゃもう終わりか。情けないのう」
「はいはい分かりましたから、さっさと解答してくださいよ。私は眠いんですから」
「うむ。まず弟子よ、そなたは自分が人間であるという事を知っているな?」
「……ええ、まあ」
「うむ。わしも知っている。これは、鳥や獣にはできまい?」
「………ええまあ、たぶん」
「つまり、自分が何者であるのかを認識するもの、これこそが人間であると言えるのじゃ。決して、直立二足歩行するものが人間であるわけではない!」
「……そうかもしれませんね。で、結局何が言いたかったんです?」
「うむ。そこでこれなのじゃが――」
「……猫ですか」
「そうじゃ、猫じゃ。だがこの猫はただの猫ではないぞ。稀に見る非常に賢い猫じゃ」
「はあ。それがなにか」
「この猫の驚くべき点は、なんと自分が猫であるということを知っておるという点なのじゃ!」
「……………はあ」
「自分が何者であるのか知っている、即ち、人間であるという事にはなるまいか」
「まあ、そう思うなら良いんじゃありませんか」
「して弟子よ」
「……なんです」
「実はの……」
「猫なら飼いませんよ」
「…………………………………………」
「やっぱりそうでしたか。私はお師匠さまを尊敬してますけどね、いきなりくだらない事で訳の分からない議論に巻きこむのはやめてくださいね」
「しかしの、弟子よ――」
「しかしも案山子もありません。我々の財布がどれだけ軽いかご存知なんですか?
 あ、床下でこっそり飼うなんてのも駄目ですからね。全くいい年して子供みたいなんだから……」
 がっくりと肩を落とした師を残して、弟子はやっと数時間の安眠を手に入れた。

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