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第36回1000字小説バトル Entry20

外惑星間バイパス18号線の怪

 いつまでたっても変わりばえのない景色にうんざりしていた。
 惑星間のバイパスを走るタクシーは、ただでさえ退屈だというのに、スピーカーから聞こえてくるのは憂鬱な環境音楽ばかり。乗車から5時間、いいかげんウンザリした私は運転手に訴えた。
「ラジオ、つけてもらえないかな」
「すみませんね、お客さん。ここいらは太陽風が強くてどうもいけません」
 こいつは回りくどい運転手だ。ラジオがつかないのならつかないと、そう素直に言えばいいものを。どうもタクシーの運転手というのは苦手だ。
 ともあれこのままでは、この狭い車内でもう4時間ほどヒマをもてあますことになってしまう。ああ、こんなことならタクシーなぞ使わず、はじめから宇宙鉄道でも使っていれば良かった。だいたいこんな、急な出張なんかひき受けてしまったのが間違いの始まりだったんだ。
 私はハァ…とまずまず大きな溜息をついた。それが聞こえたのか、突然、運転手が私に話しかけてきた。
「お客さん、退屈そうですね」
 おいおい、いまさら聞くまでもなかろうに。皮肉をこめて私は返事をした。
「はは、よくわかりましたね」
「そりゃわかりますよ。ここいらあたりは、景色も短調ですからね」
「いや、まったくですよ。どうも宇宙ってのは苦手です」
運転手はさもありなんと頷きながら
「ははは、そうですか。じゃあ退屈しのぎにこんな話はいかがですか? とっておきの話があるんですよ」
この際なんでもいいやと、私は彼の話に耳をかたむけた。
「おや、どんな話です?」
「いわゆる怪談ってやつなんですけどね。このバイパス18号のちょうどこの辺りなんですがね、昔から出るってウワサがありまして…」
 運転手は、まるで壊れたラジオのように、喋りはじめた。
「その日も今日みたいに太陽風の強い日でしたね。馬頭星雲がちょうどよく見えるカーブが、もうちょっと行くとあるんですけれどね、そこの…」
 それからの、運転手の話はよく憶えていない。金星人の女だとか首吊りだとか言っていたような気もするが、その、つまらなくてしかたない怪談話は、どうやら私に眠気をもたらしてくれたようだ。アクビをかみ殺して、私はシートに体を預け、目蓋をおろした。
 時速1200キロで走るタクシーの、窓から見る景色は、地球人の視覚では臨界融合を軽く超え、退屈でしかたない。
 それに、中央制御されている自動運転ロボットが語る怪談なんか、ちっとも怖くなんかないのだ。

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