第37回1000字小説バトル Entry18
俺はウサギだ。元々俺は、ペットショップで売られていた。仲間達が次々売れていく中、俺だけ一向に相手にされず、ペットショップで1年が経った。すっかりウサギ年齢では青年になってしまい、処分されるギリギリのトコロで、この家の人間に買われた。この家に来て、かれこれ3年が経つ。
他の家がどうだか知らないが、この家の人間は基本的に家にいない。平日はもちろん休日も朝早くから留守にしている。俺はほとんど相手にされる事もない。毎日、この家の留守番をしている。そして、この家の人間はどういうワケか戸締まりをしない。玄関の鍵を閉めないなんて当たり前、時にはドアが空いたままでも全然平気である。朝から夜まで、誰もいないのに玄関が開きっぱなしなのである。 …にも関わらず泥棒が入った事はないのは、それが逆に不気味だからだろう。ある意味、いいやり方なのかもしれない。
ところがだ。とうとう、この家にも泥棒に入られる日が訪れた。
そいつは、玄関が空いてるにも関わらずトイレの窓ガラスをハズして入ってきた。20代後半の若い男だ。俺の事を見つけても、ウサギという事で、特に警戒心はないらしく、気にも止めてないという感じで機敏に作業へと移っていった。
まず、タンスの引き出しを下から手際良く開けていった。他の家がどうだか知らないが、この家のタンスにはパンツと靴下とシャツくらいしか入っていない。男はタンスを諦め、押し入れを開けた。そこには金庫が無造作に置いてあった。男はニヤリと金庫を見回した。どうやら金庫を開ける気らしい。いかにもプロという感じの手慣れた手付きで作業に取り掛かっていた。しかし、他の家がどうだか知らないが、俺はこの家の人間が金庫を開けてる姿なんて今まで一度も見た事がない。5分程で金庫は開いたが、思った通り中には金庫の説明書と保証書だけがあった。男はかなり落胆の色を隠せないようだったが、諦めてはいないようだった。男は二階の寝室に向かったようだった。他の家がどうだか知らないが、この家の寝室にはベッドしかない。男はすぐに、うなだれながら階段を下りてきた。そして、諦めて玄関から出て行った。
他の家がどうだか知らないが、この家の貴重品は、リビングの机の上にあるお菓子箱に、お菓子と一緒に入っている。