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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Rosso】stage2
第2回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 4月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
ハミングバード
1000
3
ごんぱち
1000

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Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
光の道
ハミングバード



「兎は光に向って跳ぶんだ」
 祖父が孫の誠に話している。昔大陸で体験した事柄についてだ。
 誠はこの兎の話が好きで、何度も聴いている。祖父がもうないと言うと、
「兎の話があるじゃん」
 と、この話を催促するのである。
 祖父は自分の鬚を撫でているうちに、それが兎の毛並のような気がしてくるのか、悲しみを湛えた表情になって、話し始めるのだった。
「日本がアジアに出て行った頃の話だ。大陸に鉄道線路や道路を造っていった。現地人を使い、未開の土地を切り開いて、まっすぐな道を造る。
 そこを夜、車で通った時のことだ。野兎が道に出てきて跳ねている。車のライトで照らすと、兎達は光の伸びていく方向に走り出すんだ。兎は後ろからライトに映し出されて、まっすぐ前に向って跳ねる。絶対横にはそれない。まっすぐ車の走っていく方向に走る。いくら跳ねるのが名人の兎でも、車には適わない。そのうちに疲れてくる。すると速度が落ちる。そこを車に後ろから体当りされて、跳ね飛ばされるんだ。
 ボンネットにボンと鈍い音がする。兎が車に当った音だ。兎は体を伸びるだけ伸ばして、光の中から闇に浮び出て、それが兎の命の終りだ」
「その兎はどうしたの」
 孫は答えは何度も聞いて知っているが、そう訊ねる。
「持ち帰るのさ。鉄砲を使わない、兎狩りだな、あれは。何匹も何匹もとった」
 祖父は弱いもの苛めをした事を、いかにも後悔している口調で話した。
「道を曲げてつければいいのにね」
「おお、いいことに気づいた。お前はいい子だ」
 祖父は孫の頭を撫ぜた。

 誠は成長すると、測量技師になった。当然道路つくりのための測量も回ってきた。
 彼はできるだけ真っ直ぐな道をつけるという要請はあっても、あちらこちらにカーブを入れた。実際に道路開削に当る者は、
「何でここで曲げねばならんのだ。岩山があるわけでもないのに」
 などと訝った。しかし専門の技師が作った図面であってみれば、従わなければならなかった。地下に弱い地盤があるとか、逆に掘削困難な岩山が隠れているのかもしれないからだ。
 誠は測量しながら、闇夜に光を浴びて浮上する幻の兎を見ていた。
 その兎達がカーブに来ると、路面へではなく草原へと、照らす光のままにダイビングしていくのだ。車の来ない柔らかな草の安全地帯へと、着地していく。

 誠は現在、オーストラリアへ出ているが、そこでも直線道路ではなく、所々屈折を入れて図面を書いている。


光の道 ハミングバード

Entry3
紅茶談義
ごんぱち

「飲み物飲み物っ」
 昼休み、四谷京作は、廊下の自販機コーナーにいそいそとやって来るなり、ストレートの缶紅茶を買う。
「そうだな、俺は……」
 続いて、同僚の蒲田雅弘は、少し考えてから同じ紅茶を買った。
 二人は、缶を開け、口をつける。
「はー」
「ふー」
 ほとんど同時にため息をついた後、また何口か飲む。
「いやー、あの炒飯はないよな」
 四谷は壁に寄り掛かる。
「だな、塩の量あり得ねえよ」
 蒲田は大きく頷く。
「あそこ、よく潰れないな」
「いやぁ潰れる寸前ってとこだろ」
「あー、茶がうめー」
 喉を鳴らして紅茶を飲んでから、四谷はふと自分の手の缶を眺める。
「どうかしたか、四谷?」
「いやさ、蒲田、お前紅茶に何入れる?」
「人に物を尋ねる時は、まず自分から言うのが礼儀だぞ」
「……それほどのもんでもねーと思うが、まあ、オレはレモンだな」
 四谷は言いつつ、自販機に視線を向ける。
 自販機にはストレートの紅茶とミルクティーはあったが、レモンティーは置かれていない。
「ほー、レモン?」
「名糖レモンティーが好きだったんだ」
「なんだよ、それかよ。貧乏たらしいヤツだな」
「いーじゃねーかよ! 名糖バカにすんな!」
「名糖はバカにしてない、お前をバカにしている」
「そうか、ならば良し!」
 とてもいい顔で四谷は笑い、歯を光らせる。
「オレの事はどんなにバカにしても良い、けれど、名糖の事を悪く言うヤツは許さないからな」
「バカだけど格好いいな、そういう風に言うと」
「はははは、そんなに褒めるなよ」
「じゃ、そゆことで」
 蒲田は紅茶を飲み干すと、缶をゴミ箱に捨て、立ち去る。
「おう、またなー」
 四谷はそれを手を振って見送り――。
「――って、おい!」
 かけて、引き留める。
「ノリツッコミだ……ノリツッコミだ」
「紅茶に何入れるかって話だよ!」
 四谷は蒲田の両肩に手をかける。
「ああ、決まってる」
「ほう、なんだ?」
「お湯だよ」
 間が空いた。
「へ、あ、いや、そのだな、そうじゃねえよ、お湯は当たり前だよ、それ以外だよ!」
「それ以外……あ、大事なの忘れてた」
「そういうヤツだよ」
「お湯に適度な空気が含まれていないと、茶葉が踊らないんだったな。だから、水道から出してすぐの水の方が良いんだ」
「いや、豆知識もいらない」
「紅茶だけに豆じゃないしね」
「小ネタもいらねえ!」
「んじゃあ……氷だな」
「冬なのにアイスティーかよ!」
「四谷、ツッコミがどっか行っちゃってるぞ」