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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Rosso】stage2
第8回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 10月)
文字数
1
萩鵜あき
982
2
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
3
ごんぱち
1000
4
植木
1000
5
ヤマモト
1000

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Entry1
タナトスはヒュプノスを殺せるか?
萩鵜あき

私は知識もないのに、この仄暗い世界に対し諦観を決めていた。何もせず、何も望まず、今ある全てで満足し上も下もなく、それが偽りの世界だったとしても、何が変るでもない明日を、何故だろう…心待ちにしていた。

そんな感情は、下に在るはずの水が、いつの間にか気化するように、見えないまま消えてしまっていた。
いつまた自分に曇天からの雨の如く、乾いた肉体を焦がす日が来るのだろうか?

風前に消ゆるロウソクの火よりかは、私は強くなったのだろう。
私は、目覚めたのだから。



お祖母さんが号泣した時は、一体何が起こったのかと思った。
お祖母さんは、生きてきた中で泣いたのは生まれてきた時だと言って、豪快に笑う様な、まさに豪傑という言葉が似合う人だからだ。

お祖母さんは一体、どうしたのだろう?
その原因たるパーツを持ち合わせているけれど、私は今、その組み立て方を知らない。
どうなってしまったのか? 良かったのか、悪かったのか。
何も解らないまま、救い出された。



世界の仄暗い一部の裂傷に、気づいた誰かがこじ開けた。それで、簡単に全てが終わった。

私の黒い赤はもう見えない。
舞台に幕が下りたのだから。
私の認識愛の衝動は、簡単に止まる。
あんなにも弾が転送され続けていたのに。
私のタナトス殺されはしなかった。

私は、眠らなかったのだから。



ヒュプノスとタナトスは兄弟ではなく、二重人格だったのだろうか?

偶然発生のノイズが中で騒めく。現実逃避をしても異物により喪失感が体を虚脱させ、何度も疑似欠損を味わう。
実際には何も無くならない。…無くなるのは私の心だから。

赤が青に変る事が当然だとするならば、黒のソレが赤へと変化するだろう。
赤がまた青へと戻る事無く、黒は赤で青黒く。何度も舞台を再演させられ、私は神経をズルリと体から引きはがす。

イヤダ
イヤダ

脳内での回路接続が失敗し、言葉の崩壊を起す。

ヒュプノスにはタナトスの人格を宿してはいないだろう。
きっと眠りに支配されたのは、タナトスが彼を殺したからだ。

事の時以外は、私は眠り続ける。いや、眠りしか私に与えられた娯楽はない。

シニ…タイ…

脳を流れる記憶の断片に偶然誤差。私のタナトスは膨張する。

ネムリタイ…

体が瓦解する。解体する。
コワレル
コワレル
揺れる景色。軋む舞台。
熱く痛く欠損した。
ナニカが体を押し上げる。


いつまでも燃えさかる舞台の上で父は、荒馬の如く私を犯し続けた。
タナトスはヒュプノスを殺せるか? 萩鵜あき

Entry2

(本作品は掲載を終了しました)

Entry3
犯罪予告はいけません
ごんぱち

「下田さん!」
 県警の刑事課に、桜庭巡査が駆け込んで来る。
「通報がありました、犯罪予告です!」
「んだと?」
 禁煙パイプをくわえ、書類に向かっていた下田巡査部長は顔を上げる。
「いつの話だ?」
「予告があったのは昨日深夜、実行日は不明ですが、上鷹野高校の卒業生数名が、同校に侵入して学校の施設を破壊しようとしているようです!」
「学校側には連絡したか?」
「いえ、学校の方に先に連絡が行ったようです。今、契約している警備会社に依頼して、警備体制を大幅に強化しているそうです」
「なら、ひとまずは安心か……予告が載ってるのは、どこの掲示板だ?」
 下田はパソコンのキーボードに手を伸ばす。
「いえ、ネット上の予告ではなく、直接叫んでいたそうです」
「叫ぶ? まともじゃないな……名前とか顔とか、そいつらの情報は分かるか?」
「はいっ、代表者の名前と電話番号は控えてあります、それに顔も防犯ビデオに映っているそうです」
 桜庭は、リストとビデオテープを差し出す。手書きのリストの一箇所にマーカーが引かれている。ビデオテープにはラベルが貼られ、不揃いな文字で「ハンニンの顔」と書かれている。
「随分出来過ぎだな……まあ、有難いが」
 壁際に置かれたビデオデッキに、下田はビデオテープを挿入する。
 爪の折られたビデオテープは再生ボタンを押す事もなく再生が始まり、防犯カメラの映像と音声が流れ始めた。
 編集済みらしく、問題の部分の映像がすぐに出て来る。
 下田と桜庭の表情が、徐々に変わっていく。
「……桜庭」
 画面を見ながら、下田は尋ねる。
「……はい」
「通報した奴、何歳?」
「校長先生、だった筈です。年齢は訊いてませんが、おおよそのところ……」
「いや、学校に第一報入れた奴」
「ああ、そっち……えと、大学生のアルバイト店員だった……そうですが。だから、年齢というと十八、九……ってとこですかね」
「アルバイトって、この店の?」
「はぁ、この店の」
 下田は深いため息をついた。
「……まあ、通報されたんだし、学校も反応して対応しちゃったんだから」
 リストを持って、下田は立ち上がり、黒いコートを引っ掛ける。
「威力業務妨害か何かで、書類送検なり逮捕なり、しなきゃいけねーわなぁ」
「です、ねぇ」
 ビデオの再生が続くテレビ画面には、中年の男たちが熱唱するカラオケルームが映り続けていた。
「……こういうモンスター的通報者の支配からは、卒業したいもんだなぁ」
犯罪予告はいけません ごんぱち

Entry4
旅人
植木

 旅人が何処からやって来たのか村の者は誰も知りませんでした。やせて背の高い質素な身なりの老人は、皆の問いかけにいつも静かな微笑でしか返事をしませんでしたが、その表情を見ると不思議なことに誰しも懐かしい気持ちになるのです。いつの頃からか僕たちは親しみを込め、その旅人を先生と呼んだのでした。
 いつも一人でゆっくりと村の中を歩いて過ごしていましたが夕暮れを過ぎ、夜になると先生の姿を見た者は村の中でただの一人もいなかったのでした。
 その頃の僕はといえば、いっぱしの詩人気取りで学校を抜け出しては原っぱに陣取り、ポケットから手帳を取り出して浮かぶ限りの言葉を夢中で書いたものです。家では飲んだくれた親父の説教、学校では教師のつまらない小言ばかり。手垢で汚れたその小さな手帳は、たった一つの僕の居場所であったのです。
 ある秋の日の夕暮れ時、原っぱにいた僕の上に影が一つささりました。と、先生がそこに立っているではありませんか。驚いた僕に向かってゆっくりと手を伸ばし、微笑みを浮かべたまま静かに頷くのです。誰にも見せたことの無い手帳ですが不思議なことに僕の手は心と裏腹に自然と動いていたのでした。
 先生は受け取った手帳を手の平に乗せ、もう片方の手で撫でるように覆いました。しばらくして、目を閉じていた先生の手から煙が立ちのぼり、夕陽のような炎が現れた瞬間、大事な手帳は一握りの灰にその姿を変えてしまったのです。
 僕はただ先生を、じっと見つめるだけしかできません。一陣の風が灰をすべて吹き飛ばしてしまっても驚きのあまり怒ることさえ忘れていたのです。
そんな僕に向かって先生はポケットから一枚の紙を取り出し、微笑んだまま差し出すのです。そこには今まで読んだこともない美しい一篇の詩が書かれていたのでした。読み終わったその時、紙はまた燃え始めました。慌てて手を離し落ちた場所を見ると、灰ではなく輝く小さなかけらがありました。
 (さあご覧。それが詩の、それが言葉の骨なのだよ)
 まだ温もりのあるそれを手に乗せ見とれた僕は、夢心地で遠くの声を聞きました。はっと顔をあげると辺りはすっかり夜になっており、先生の姿もその日を境に村から消えてしまったのでした。
 家に戻った僕は、輝く骨を小さな薬瓶にしまいました。それから時が過ぎ、それが一杯に満たされた時、旅に出る決心をしたのです。先生に再び会って、いつかこの瓶を見せるために。

Entry5
フジコちゃんはヤリまくっている
ヤマモト

 フジコちゃん、ってのがいた。
「ミネフジコのフジコだよ」って本人は言う。名付け親は酒乱の父親。
 フジコちゃんはゴージャスでグラマラスで生粋の男好きで猫みたいな顔をしていてモテた。
 派手な化粧、茶髪でスカートは短かくプリプリお尻をふって歩く、気持ち良い程バカな女の子。

 女子高生らしくキャハハと笑って肩を叩き上目遣いで瞬きすればヤリたい盛りの男子高生は簡単に落ちる。
 でもフジコちゃんはそれで満足してる訳じゃなかった。
 よりバカになりたがった。

 人の彼氏を取るのは当たり前、上級生にも粉をかけた。すべからく三年の女子に呼び出されてリンチされたけど、誰も同情しなかった。特に女子は。

 雲行きはどんどん怪しくなった。

 フジコちゃんは彼氏を取られた女子達に次々呼び出され、制裁を受けた。
 色んな男達が面白がってフジコちゃんを見にきて、フジコちゃんもわざとはしゃいでみせるから更に反感を買った。
 解っててフジコちゃんは止めなかった。そのうちお昼代でヤらせてくれるとか、病気持ちだとか、色々酷い噂が流れた。

 フジコちゃんは女子の報復で派手に怪我をする事があって、でも白い肌についた赤黒い傷はフジコちゃんの可愛さを引き立てていた。
 傷が彼女を美しくした。


 ある日フジコちゃんは顔をボッコボコにして現われた。
 教室の前からざわめきが起こって、見たらいかにもドツキ回されましたって風情のフジコちゃんがいて、えぇぇ、となってるうちにフジコちゃんは席まできて鞄を取ってスタスタ教室を出て行った。
 一瞬シンとした後どわーっとなって教室は騒然となる。

「菅とヤッたらしいよ」
「え~っ」
早速情報が漏れ出す。菅ってのは教師だ。ハゲデブ中年男。それでなんで顔がボコボコかというと、どうやら酒乱の父親の「躾」らしい。あーあー。

 なんでまた…と思うけど、フジコちゃんなりに頑張った結果なのかもしれない。バカなりに考えてキモ菅とヤッて酒乱の父親に殴られたのだ。
 私はなんでかフジコちゃんが好きなので、そんな風に思ってあげる。
 どんどん墜ちる彼女に憧れすらする。何故なら殴られ腫れ上がった顔でも彼女は酷く美しかったのだ。

 ボコボコの顔をした私のマドンナは、教室に混乱と興奮を残して消えた。


 取り残された気分の私は、大人しく授業を受けながら、今日もフジコちゃんはこの青空の下ヤリまくってんのかな、とか思ってちょっと笑う。そうだといいな、と願う。