Entry2
深夜のデザート
秋尾 十一
かつて一世を風靡したコンビニ業界は今、苦境に立たされている。
コンビ二同士だけではなく、他業種をもライバルに含めた激しい競争の結果、閉店は続出し、過酷な経営条件が求められるオーナーは成り手が減る一方だ。
世の中、変わらないものなんて、ない。
午前二時、小腹がすいてカップラーメンを買いにコンビニに来ている僕は、しみじみそう思う。
こんな生活もまもなく、できなくなる。
来月には結婚するから。
親には「孫はあきらめて」と言い続けてきた不孝者のアキバ系息子が、来月には結婚。世の中、何が起きるか分かったもんじゃない。もちろん、親は大喜びだ。
ちなみに、どうでもいいことだが、アキバ系は「自分はアキバ系です」と言うのに、少し勇気がいる。まんが、アニメやライトノベルのファンであることはいささかも隠す気はないが、「私程度の知識の持ち主がアキバ系を名乗っていいんですか? そんなだいそれた。一ファンで結構です」という謙虚さ(自信の無さ)があるからだ。
そういう謙虚な人々の集まりが、オフ会である。インターネットで知り合った同好の士が、ネットの外(オフ)で会うという会である。知らない者は興味津々かもしれないが、何ということはない、ぎこちない自己紹介で始まる、ふつうの飲み会だ。ロージーなんてハンドルネームで居酒屋を予約するのが、少し恥ずかしかったりする。
ライトノベル「クララとウララ」(結構、奥が深い)のオフ会で、彼女と出会い、ふつうに友達になって、気がついたら、お互いびっくりすることに、それでいて、選択肢がそれ以外ないという感じで、就職二年目の僕と就職三年目の彼女は、自然と結婚することになっていた。
「295円です」
結婚は嬉しいし、楽しみだ。
毎朝天井を見るたびに、突き上げてくる、どうしようもない嫌な感じが癒されるのは、何ものにも代え難い歓びだ。「一生、ひとりはしんどいなぁ」と思いつつ、「でも、自分にはそれしか選択肢がないからなぁ」とも思い、絶望感に必死に抗っていた日々がもう過去のことなのだ。誇張ではなく、素直に幸せだと思う。
だから、深夜のコンビニで、フルーツパフェが衝動買いできなくなることぐらい、どうということはない……と思う。
僕は、パフェを食べる。結婚とか、アキバ系とかには関係なく、食べる。これまでの自分ためでもなく、これからの自分のためでもなく、食べる。ただ、食べようと思った。