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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Rosso】stage2
第9回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 11月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
秋尾 十一
999
3
萩鵜あき
984
4
ヤマモト
1000
5
植木
1000
6
ごんぱち
1000

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Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
深夜のデザート
秋尾 十一

 かつて一世を風靡したコンビニ業界は今、苦境に立たされている。
 コンビ二同士だけではなく、他業種をもライバルに含めた激しい競争の結果、閉店は続出し、過酷な経営条件が求められるオーナーは成り手が減る一方だ。
 
 世の中、変わらないものなんて、ない。

 午前二時、小腹がすいてカップラーメンを買いにコンビニに来ている僕は、しみじみそう思う。
 こんな生活もまもなく、できなくなる。
 来月には結婚するから。
 親には「孫はあきらめて」と言い続けてきた不孝者のアキバ系息子が、来月には結婚。世の中、何が起きるか分かったもんじゃない。もちろん、親は大喜びだ。
 ちなみに、どうでもいいことだが、アキバ系は「自分はアキバ系です」と言うのに、少し勇気がいる。まんが、アニメやライトノベルのファンであることはいささかも隠す気はないが、「私程度の知識の持ち主がアキバ系を名乗っていいんですか? そんなだいそれた。一ファンで結構です」という謙虚さ(自信の無さ)があるからだ。
 そういう謙虚な人々の集まりが、オフ会である。インターネットで知り合った同好の士が、ネットの外(オフ)で会うという会である。知らない者は興味津々かもしれないが、何ということはない、ぎこちない自己紹介で始まる、ふつうの飲み会だ。ロージーなんてハンドルネームで居酒屋を予約するのが、少し恥ずかしかったりする。
 ライトノベル「クララとウララ」(結構、奥が深い)のオフ会で、彼女と出会い、ふつうに友達になって、気がついたら、お互いびっくりすることに、それでいて、選択肢がそれ以外ないという感じで、就職二年目の僕と就職三年目の彼女は、自然と結婚することになっていた。
 「295円です」
 結婚は嬉しいし、楽しみだ。
 毎朝天井を見るたびに、突き上げてくる、どうしようもない嫌な感じが癒されるのは、何ものにも代え難い歓びだ。「一生、ひとりはしんどいなぁ」と思いつつ、「でも、自分にはそれしか選択肢がないからなぁ」とも思い、絶望感に必死に抗っていた日々がもう過去のことなのだ。誇張ではなく、素直に幸せだと思う。
 だから、深夜のコンビニで、フルーツパフェが衝動買いできなくなることぐらい、どうということはない……と思う。
 僕は、パフェを食べる。結婚とか、アキバ系とかには関係なく、食べる。これまでの自分ためでもなく、これからの自分のためでもなく、食べる。ただ、食べようと思った。
深夜のデザート 秋尾 十一

Entry3
文学少女
萩鵜あき

 私は奇怪な非常識物を目にする事ができる。

 常識は世界に溢れ、吐き捨てる程の汚物と化している。数多の冒険家が歴史的怪奇現象を掘り下げ、神秘性を瓦解させているのだ。いまさらなまずが二足歩行するような現実を、誰が認められよう?
 今や超能力や霊能力はエンターテイメントへカテゴライズされているのだ。たとえ私に幽霊を見る事のできる能力があり、目の前にそれが現れ見えたのだとしても、他の人には見えないのだ。
 ――誰も信じてはくれないだろう。

 赤暗い放課後。学校にいる私。図書室はいつも狭い。深く落ちくぼむ。

《それが何?》

 本棚に手と目を滑らせ気になるタイトルを指で探り、心惹かれたものを傾け取り出す。気に入らなければ戻し、気に入れば開きながら夕暮れ色が窓から霞み入り、温かく染まった木製の席へと落ち着く。

 仄かに茜色に染まる内部は水を打ったように静まり返り、ため息すら苦しかった。

 本を読んでいる放課後のこの時間に、リアルな私の目の前に、それが現れる。
 止められもせず、呆然として見つめる。

 一つ目の人間。
 首の長い少女。
 腕のない男。
 脚の無い女。

 私は証明された正しいリアル/現実味を認める事ができず=ソレ/世界を現実/私へと引き込む。

 胸は焦され鼓動が急く。早く打つのに締めつけられる。束縛が苦しいのに充足感が伴う。
 それが快楽。魅了される。運命を、堪能する。

 ありがとう、さようなら。
 膨らんだ分だけ別れはとても空虚。熱くなった心に水が注がれるように、静寂の余韻は芯が冷えきってしまう。
 帰宅時間のチャイムにより彼らが姿を消す。また明日ね、バイバイ。

《だからさ――》

 平日は毎日やってくるこの時間が、私にとっての居場所。魅惑の世界。下らない世界からの逃げ場所。

《それは――》

 また一つ目の人間が微笑む=私に/私への恍惚な表情は虚ろ=霞む。

 一体誰の為?

 激しく雑音(ノイズ)が混じる。

《聞いてよ!》

 聞けない。聞かない。聞きたくない。
 私から大切な時間を奪わないで!
 『一つ目』も『首なが』も『腕なし』も『脚なし』も、ここには確かに存在する。触れる事ができる。感じる事ができる。
 だから……消さないで。消そうとしないで。

 ――貴方(ノイズ)は消えて。

「それは……本の世界なんだよ?」

 憐憫含む友達の声を無視し放課後、学校の図書室で彼らに出会うため、私はひたすら本を読む。
文学少女 萩鵜あき

Entry4
猫の神様
ヤマモト

 ふと気付くと人影、いや、猫影が立っていた。夕暮れの神社である。その猫は二本足で立っていて、人間の大人位の大きさがある。
 驚いて煙草を咥えたまま固まっていると、猫は短い前足を口に当て
「えー、にゃっほん」
と咳払い?をした。僕が何も言えないでいると
「お隣、宜しいですかにゃ?」
と聞いてきた。
「あ……どうぞどうぞ」
しゃ、喋った! 僕は感動しながら横にずれベンチを空けた。

 隣に座った猫は日向の匂いがした。そっと横目で観察する。
 立派な毛並み。薄茶色で縞模様がある。腹と手足の先が白い。靴下猫だ。可愛い……。

 猛烈に撫でたい欲求を堪えていると、猫がこちらを向き、金色の瞳で僕を見つめて言った。
「差し支えにゃければそれを消して貰えますかにゃ。どうも匂いが苦手でして」
「あ! これは失礼」
そうだ、猫は煙草の匂いが嫌いだった。火を消して携帯灰皿に入れると、猫は二三度頷いた。

「にゃほん……実は私、猫の神様でして。いやまあ、ただ長生きしたというだけにゃんですが」
「ははあ」
神様! 叫びそうになるのを堪える。折角来てくれたのに、びっくりさせては事だ。
 猫の神様は小さな可愛らしい口をパクパクして続ける。
「貴方が猫好きの参拝客だったので嬉しくなりましてね。つい出てきてしまったのです」
「あ、なるほど……」
猫好きがバレていて思わず照れる。猫の神様も照れているみたいだった。前足で顎を掻いている。そしてまた金色の瞳で僕を見つめ
「残念な事に私は長生きしたというだけで、神通力等は持っていにゃいのです。だから貴方の願いは叶えられにゃいのですが……」
「あっいやそんな、お会い出来ただけで光栄です、ほんと」
「そう言っていただけると……」
「えぇ、えぇ」
「良かった……。にゃんだか冷えてきました。そろそろお暇致しましょう」
スクと立ち上がった猫の神様は、
「お話出来て楽しかったです。では、お元気で」
と言って微笑むと、くるりと背を向けてあっという間に縮んでしまった。普通の猫になってトトトトと走り、境内の向こうへ消えた。
 その姿はまるきり普通の猫で、たった今の事がまるで夢の様に思えた。



 それから。
 何度かその神社に行ってみたが、猫の神様はもう現れなかった。きっと気まぐれだったんだな、と思う。

 でも、最近道を歩いていてふと振り返ると、猫が四五匹後ろに付いて来ている事がある。猫の神様に会ったせいだろうか。

 猫好きの僕はそれがとても嬉しい。
猫の神様 ヤマモト

Entry5
帰郷
植木

 兄は雷の度に小さく舌打ちを繰り返した。数本しかこない列車に間に合わせようと車を走らせている。夕立が激しく車を叩いた。
 後部座席の彩乃は泣き疲れたらしく、目を閉じたまま幸恵に小さな体を寄せていた。バックミラーからは幸恵の表情は窺がえなかった。ラジオから懐かしいラブソングが流れた途端、兄は黙ってスイッチを切った。誰も喋らない車中でワイパーが規則正しく相槌を繰り返している。遠くの空では、雲の切れ間から光が差し始めていた。
 
(これから男手一つか)(まぁだ、小さい子残して心残りだったろなぁ)(おらぁ、正面衝突で即死だと聞いたで)(しっ、父ちゃ声が高ぇ)(っおい、酒足りんぞ……)

 「お会いしたいの、一目だけでも」と幸恵が言ったとき、僕は返事をしなかった。田舎へはもう五年程、足を向けていなかった。第一、義姉の不幸に幸恵を連れていく理由などなかった。六畳に冷蔵庫のモーター音だけが低く響いた。幸恵はもう一度同じ言葉を言い、黙った。僕は答えなかった。 
 田舎の台所は親戚と近所の人達で事足りた。皆、子供時分からの顔馴染みで、幸恵など入り込む余地は無かった。最初の内は立ち回る大人達の中ではしゃいでいた彩乃も、次第に部屋の隅で幸恵と小さな飾り物のように座っていた。彩乃は幸恵によくなついた。
 すべてが終わった夜、おい飲むか、と兄が半升ほど残った瓶を引き寄せながら遺影の前に座った。注いだ茶碗を一気に飲み干し、目を閉じたまま長く息をついた。取り立てて何を話すわけでもなく、時折、蝋燭の灯などを気にしながら杯を重ねた。瓶がようやく空になった頃、兄は背を向け横になった。潮時と思い、立ち上がりかけると兄が呟いた。
「腹が目立つ前に、籍をいれてやれ……」
……初耳だった。僕は返事に詰まったまま障子を閉め、部屋へと戻った。
 翌朝の食卓は彩乃を除いて皆、赤い目をしていた。日中、彩乃は家事をする幸恵の側を離れず、僕は話しかけるきっかけを失ったまま二人を眺めるだけだった。
 駅のロータリーに着いたとき、雨はもう通り過ぎていた。「又、遊びにきてやって下さい」ぐずる彩乃を肩車したまま、兄は深々と頭を下げた。
「はい、きっと」幸恵もふわりと返事をした。
「バイバイ、おねえちゃん」
 列車は定刻に発車した。僕たちは互いに黙ったままボックス席に向かい合って座った。幸恵に話しを切り出せたのは、ようやく駅を三つほど過ぎてからのことだった。

Entry6
たべられません
ごんぱち

 六畳一間のアパートで、友人の蒲田雅弘とテレビを視ていた四谷京作は、リモコンに手を伸ばし、チャンネルを変える。
「どうした、四谷?」
「ん? 天気予報視るんだが?」
 画面が切り替わり、天気図が現れる。
「いや、この後吉祥美鈴が生ライブつってたじゃん」
 蒲田は座椅子に座ったまま、少し足の方を浮かせたり下ろしたりしている。
「言ってたけど、何か?」
「お前大ファンだろ?」
「あー、アレな」
 四谷は立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールの六本入りパックを引っ張り出す。
「ファン止めた」
「へ? なんで。あんなにグッズも集めてたし、アンチに2ちゃんで釣られたりして、引くぐらいファンだったじゃんか」
「……引いてたの?」
「まあ、そこは流せ」
「うむ、まあ、あいつ、結婚したからさ」
「結婚? 何だよ、そんな事で」
「……そんな事じゃあねえよ」
「考えてみろよ」
 缶の蓋を開け、蒲田は喉を鳴らしてビールを飲む。
「ふは――人気絶頂の芸能人だろ? お前辛うじて正社員だけどリストラあったら真っ先に切られる予定になってるって課長にはっきり言われてるじゃん。吉祥が独身だったとしても、明らかに今後の人生において、接点ないだろう? 恋人にもならんだろうし、結婚もだ、もっと言えば会話だってしないし、ファンとしても、ダフ屋に出す金もないから二階席より近付けた事もないだろ? 元々手の届かないものが、やっぱり手が届かないってだけの話じゃないか」
「そんな理屈は知らん、感情の問題だろうが」
 四谷は缶ビールを開け、飲みはじめる。
「まあ、好みに口出しする気もねえけどさ」
 ちょっと笑って、蒲田は空になったビール缶を縦に潰し、もう一缶を開けようとして、手を止めた。
「――あー、そうだ、忘れてた、これこれ」
 蒲田が自分のバッグからタッパーを取り出す。
「母親が持ってけってうるさくてさ」
 座卓に置き、蓋を取る。
 中には、筑前煮が入っていた。
「おお、何かつまみが欲しかったんだ」
 四谷が箸と取り皿を用意し始めると。
「……まただよ」
 蒲田は眉をしかめた。
「なんだ?」
「入れるなつってんのに」
 蒲田は筑前煮の脇に彩りとして置かれている、緑色でプラスチックのバランを取る。
「バランがどうかしたか?」
「うちの母親、何度も洗って使いやがんだよ。ったく、何度言っても止めねえ……気持ち悪いなぁ」
「んー? いいんじゃねえか? ちゃんと洗ってはあるんだろ?」
「感情の問題なんだよ!」