Entry1
薔薇の葬列
SuzzannaOwlamp
少年時代、机の棚から卑猥な本を手にとって読んだ記憶がある。そこには私の幼少時代のアルバムが並んでいる。おかっぱ頭の私は机の引き出しにそれを隠し、居間を襖から覗く。親はテレビを見ながら、焼酎を飲んでいる。テレビの画面に、綺麗な女優が映し出されたかと思うと、豚鼻のお釜が歌を歌っている。場所はゲイバーらしい。そこで来客たちがホステスと話し込んでいる。
「最近じゃお釜商売が人気で、自らお釜を名乗るやつも出てきているらしい」
「あら、失礼ね。私は正真正銘の本物よ」
親がテレビのチャンネルを回す。そこには薬物中毒者のインタビューが映し出されている。日本語とも英語ともつかないろれつの回らない声でインタビューに答える薬物中毒者。
「アイムクスラを飲むとフワーッと高揚感が……」
無精髭を生やし、残薔薇髪の薬物中毒者の画面に嫌気が差し、親はまたチャンネルを回す。七人のゲイたちがテーブルの前に座っている。何かのきっかけに七人は踊り出す。ディスコで上半身裸になり、踊る七人は馬鍬いながらもその肌を露呈する。重なり合ったゲイ達が、モノクロの画面に映し出されている。その時、親がくるりと振り返り、私は、ぴしゃりと襖を閉める。私は、その場から逃げ出したい衝動を抑え、もう一度、襖を開く。テレビの画面にはお笑い芸人が馬鹿騒ぎしている。安心して、居間の敷居を跨ぐ。親は、何も考えずにテレビを見る私に薄ら笑いを浮かべる。テレビの笑い声は声量を増し私もそれに攣られて笑う。親は、真剣な表情で、それを見ていれば、良いというような感覚で、私を諭す。テレビ番組は、フィナーレを迎え、尻に薔薇の花を挟んだ映像が映し出される。私は、そこから身動きが取れない。豚鼻のお釜と鼻筋の通った俳優が裸で抱き合っている。肉付いた脚の隙間から、俳優の顔が覗く。路上で赤裸になった男の背中が見える。向こう側からは帽子を被ったお釜。私は、そこから抜け出し、二階から一階に降りる。床屋になっている一階では男が男の髪を切っている。私はある種の清涼感を覚え、三階の自分の部屋までとんとんとんと駆け上がる。部屋に帰り、ベッドに横たわり、今日見た映像を反芻する。もうすでに卑猥な本を読もうとは思わなくなってきた。私は、おかっぱ頭を掻き上げ、ベッドに横になった。ドアをノックする音がする。親は私の卑猥な本を見て、苦笑いする。
「お前もそういう歳になったか。まあいいだろう」