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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Rosso】stage2
第13回バトル 作品

参加作品一覧

(2009年 3月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
1000
3
ごんぱち
1000
4
植木
1000

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Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
姉妹神

 岩屋の奥で、瞳を閉じ、立ったまま祈りを捧げている少女。少女の身体が柔らかく波打つように光を放っている。少女の身体が強く光った。僕の存在に気づいたのだ。
「おゆきなさい」
 僕はその場に跪く。
「僕はあなたを愛しています」
 少女は瞳を開き、困ったような表情で僕を見ると、声をひそめた。
「お姉様に聞かれたらどうするのです。もう、おゆきなさい」
「僕は……」
 少女は小さい声で早口に僕の声を遮る。
「あなたはお姉様のことを侮っていらっしゃるの?
 お姉様はあなたを愛しています。だからこそ、こんなことをしたらあなたを許さないでしょう。おゆきなさい」
 少女の声の中に優しさと怯えが混じっているのが僕にはわかる。
「『あの人』がなんと言おうと、僕はあなたを愛しています」
 僕の声は迷いがない。
「私は人ではありません。だから人を愛せないのです」
 少女の冷たい声が響く。
「『あの人』も人ではないのに、僕を愛してくれていますよ」
「そんな恐ろしい言葉を口にしないで。あなたはお姉様の愛を受け入れたのでしょう。お姉様だけを愛するべきです」
「人である僕が神の愛を拒絶できないことはおわかりでしょう。でも、僕が愛しているのはあなたなんです」
「やめて!」
 少女は瞳を閉じ、両手で耳を塞いでしまう。
 僕は立ち上がり、少女を抱きしめようと近づく。
 少女は僕の気配を感じて瞳を開き、そばにいる僕を見るとうろたえて叫んだ。
「きてはいけません!」
「なぜですか?」
「あなたの存在が危うくなるからです」
 少女が哀しげに言う。
「僕のことを心配してくれるのですか……」
「あなたは何もわかっていない!」
 少女が叫んだのと同時に僕の右手が少女の肩に触れた。
 少女の瞳から涙が一筋、流れ落ちた。
 僕は涙を拭ってあげたくて、左手を少女の頬に伸ばした。
 光が消え、少女の姿が僕の前から消えた……。

 それ以来、僕はひとり漂っている、この世を……。

 『あの人』は僕に罰を与えた。
 『あの人』を愛することができなかった僕の罪?
 『あの人』の妹である少女を愛したことが罪なのか?

 『あの人』は僕にこの世での永遠の時間を与えた。
 僕の愛した少女は、この世の終わりに次の世界神となるべく、この世の終焉まで人として生死をくり返し、けっして僕には気づかない。
  
 永遠の終わりに少女に会える?
 そして、その時、少女は僕のために泣いてくれるだろうか?

 その思いだけで僕は生きていける。

Entry3
プロローグ
ごんぱち

 昔、山に赤鬼が住んでいました。
 赤鬼には女房がいて、女房の腹には子供がいました。
「食い物を取って来るでな」
「気を付けてな、あんたぁ」
「おう」
 山道を歩いていた赤鬼は、人間の村の外れに家が建っているのに気付きました。
「ほほぅ、家か」
 赤鬼は人間の家の戸を開けます。
 中には、人間の女と、小さな子供がいました。
 赤鬼は子供をひょいとつまんで、ぽりぽりと食べた後、泣き叫んでいる人間の女を二つ折りにして担ぐと、住処に帰って行きました。
「おう、かかあ! 帰ったぞ!」
「ああ、あんたお帰り」
「ほれ、今日はご馳走だぞ」
 二つ折りにした人間の女を差し出します。
「まあ嬉しい。人間の女は脂身が多くって甘いんですよ」
 鬼の女房は、大喜びで人間の女を食べます。
「あんたは、食べたのかい?」
 ほとんど食べ終えてから、鬼の女房はふと尋ねます。
「おう。子供をきちんと喰った」
「あれあれ、子供一匹じゃお腹が空くだろう? もうほとんど食べてしもうたけれど……」
 食べかけの首を差し出します。二つに割った頭から見える脳みそは、柔らかそうです。
「お前とお腹の子の分と、二人分じゃ。何の遠慮がいるものか」
「……ありがとう、あんた」

 赤鬼の女房は子を産んですぐに死んでしまいました。
 赤鬼は、子に喰わせようと人を取ろうとしましたが、人は住処や道を変えてしまっているらしく、一人も捕まりませんでした。
 仕方がないので木の実や獣を獲って飢えをしのぎましたが、赤鬼は子に先に喰わせて自分は残りを食べていたので、次第に痩せ細って行きました。そして、子が一人で暮らせるようになる頃には、病に伏せってしまいました。
 赤鬼の子は看病をしましたが、甲斐もなく死んでしまいました。
 赤鬼の子は独りぼっちになってしまいました。唯一、父親の赤鬼の知り合いであった隣の山の青鬼の子とは友達でしたが、それほど頻繁に会う事は出来ず、寂しい日々を送っていました。

 そんなある日、山の道なき道を歩いていた赤鬼は、人間の村を見つけました。
「あれ? 何かいるぞ? 青鬼君とは違うみたいだ……」
 赤鬼の子は、人間を一人も食べた事がなかったので、それが鬼の食べ物である事を知りませんでした。
 そして、人間の親子の姿に自分の父親の赤鬼の姿を重ね合わせていました。
「ああ……あれと仲良くなりたいなぁ」
 赤鬼は、人間の村の近くに住処を変え、立て札を立てました。
『やさしいおにのいえ』

プロローグ ごんぱち

Entry4
三回忌
植木

 三回忌がすんだら見に行こうか、と不意に母が昼食の最中に言いだした。
 逗子の方に猫の面倒を見ながら里親探しをしている人がいて、昨晩もその話題はでたのだが、その時は、逗子にそんな人がいるのよね、という軽い話題の一つといった感じでその話をしていたのだ。もっとも話の始まりは猫を飼いたい飼いたいといっていた僕だけど、家族はそれほど乗り気ではなくて、今いるシーズーだけで生き物は十分という雰囲気だったし、僕にしても、そんな話がでたのはうれしくもあったけれど三回忌まではまだ一ヶ月以上あり、その時はただ、へー、という他人事のような受け止め方をしていたのだ。

 死ぬ前に桜を見たいと言っていた父は、その願いを叶えて肺がんでこの世を去った。通夜、告別式と終えて大船の斎場から逗子の火葬場へと行く途中、桜が満開になった八幡宮の段葛脇を車は走った。それから三時間ほど経つ間に父は骨と灰になってしまった。僕は生まれて初めて父の骨を見たような気がした。
骨壷に骨を納める時、一畳ぐらいのステンレスの台を親族が取り囲んで、骨壷担当者というのか、ともかくそういう役割の人の説明を受けながら骨を順序よく骨壷に納めていくのだけれど、人間の慣れとは怖いもので骨壷担当者の説明は明るく非常にスムースで、いったい一日に何回ぐらいこの台詞を言っているのだろうとか、なんとなく実演販売に様子が似ているなとか、僕はタバコの箱の形にふくらんだ骨壷担当者の胸ポケット辺りを見ながら、そんなことを考えていた。

 それから三ヶ月ほどして、飼い始めて十八年目に入っていたスタンプという名前の猫の具合が悪くなった。もう一匹スタンプと姉妹の猫がいたのだけれど、その猫は父の死の半年ほど前に怪我がもとで死んでしまっていた。僕たち家族はスタンプについて、もう老衰だとか、お父さんが呼んでいるのだとか勝手なことを言っていたけれど、やはり寿命だったらしく、たいして苦しむ様子も見せず僕の腕の中で息を引き取った。
 我が家の者は、父が死んだ際に斎場の家族会員という制度に加入していたらしく、スタンプも例に漏れず、そこを介して荼毘に付された。骨になった猫は骨壷に入り、滑稽なほど豪華に装飾された箱に納められて帰ってきた。一番可愛がっていたのが僕だったということで、その箱を持って庭に出て少々深めに穴を掘って埋めた。今頃、父もスタンプもそろそろ三回忌だなあと考えている頃だろう。