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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第1回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 3月)
文字数
1
3737☆★
1000
2
ごんぱち
1000
3
ウザワトモコ
988
4
りんね
1000
5
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん

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Entry1
さらさら
3737☆★

さら
まっさら
さらさらさらさら

目の前は銀世界で手足は氷のように冷たいのに、ザクザクと進む先にはまだ何も見えてこない。雪国に生まれついている者やスキーやスノボに来ている者にとっては、こんなことはザラなのだろが、これが昨日「採用おめでとう、で……」といわれた先の赴任先。真っ白な白紙に、あの契約書をこの雪のように白紙に戻してしまいたい。そう呟きながら、まっさらな雪の上には一人分の不慣れてふらついた足跡があり、横には慣れた先人の歩行用のスキー板の跡。サラリーマンになんてなるんじゃなかった。

小さな町の大きな会社の小さな支店。

しんしんと降りしきる雪に、だるまストーブ。それが冬のセット商品。当直の日も雪はただ降りしきったけれど、一人でひいひい言いながら雪を掻いた。出ないと屋根が重みに耐え切れないから。近くの森はバサリと音を立てて枝から勝手に落ちるのに、こちらはズシリと重いスコップを、暑い思いと寒い思いをしながら、汗をかきかき掻いていき、中に入って体中の雪を払う頃には夜が白み始める。

さらさらと陽が今まで掻いていた雪をさらして、きらきらと今までの苦労なんざ忘れさせるくらいに綺麗だった。

しん
しんしんと

でも、それもさらりとやめられる日が来た。栄転でもなく転職でもなく、単に会社が立ちゆかなくなって、さらりと俺はあの日の雪のように投げ出された。最後に出て行くことになったあの日には少しの木炭が雪のように白い灰になりかけていた。外を見れば、雪解け水の滴ってきらきら光る氷柱がたれさがっていた。

あれから、一度も雪はみていない。

雪国とはかけ離れた地元の町工場に再就職して、朝も夕も関係なく真っ黒になって働いた。でも、ひとり、またひとりと職人仲間もいなくなり、悲喜こもごもしながらその町工場もしまることになった。

こうしてこの雪の降りしきっていた町にきてみた時にはいい年をとって、手も足もガサガサですっかりおじいさん。

なにやら道には水が出るようになっていた。あの小さな町は、あるにはあるけれどもどこかの市と合併したとかで、面影は何一つ残っていなかった。さらに残念なことに、あの雪の、どこまでも続く雪も、例の道路の関係で切れ切れのパッチワークのようになっていた。

感慨にふけっていたところで何も始まらないのはもう分かってる。けれど、ズシンとあの雪の重みが思い出されて、綺麗そうなところを手にとって、新雪を味わった。旨かった。
さらさら 3737☆★

Entry2
金の卵
ごんぱち

 金の卵を生む鶏を飼っている男がいました。
 この鶏は、一ヶ月に一度金の卵を生むので、男はそれを売って家計の足しにしていました。
 ある日、鶏が生んだ金の卵を売ろうと、市場へやって来た男は、鳥屋の前に差し掛かりました。
「おう、旦那! どうだい、金の卵を売る鳥だよっ!」
 店の主人が、男に声をかけます。
「この前、鶏を買ったろう。それで充分だ」
「ああ、見覚えがあると思った」
「む、鶏?」
 鳥を見ていた太った男の客が近寄って来ます。
「君は、金の卵を生む鶏を持っているのかね」
「ああ、まあ、そうだが」
「丁度鶏が欲しいと思っておったのだ。どうだ、金貨百枚で譲ってくれんか」
 太った男は、懐から財布から金貨を出します。
「いやぁ、それは困る」
 男は慌てて首を横に振ります。
「鶏の金の卵は、金貨五枚は価値があるんだ。二年もしたら元が取れちまう」
「そうとも限らんだろう」
 太った男は、財布を揺らします。金貨がちゃりちゃりと音を立てます。
「鶏が半年で死んでしまうかも知れない。来月は卵を生まないかも知れない。逃げてしまう事だってある」
「そんな事のないように、大事にしてるさ。大体、あの鶏に他の使い道なんてないんだから、どんな値段でもあんたが出すという以上、買い叩いてるって事だ」
「ならば正直に言うがな。ワシは鶏を一千羽飼っている牧場主を知っているのだ。そいつの手にかかれば、鶏は四倍も卵を生む。ヤツに金貨二百で売ろうと、まあ、そう考えているのだ」
「でも、金貨百枚は使ったらおしまいだ」
「金の卵を生む鳥が欲しければ、他のを買えば良いだろう?」
 鳥籠には、値札と今までどれぐらいのペースで卵を生んだかが書いてありあす。生むペースはたまに変わるようで、どの値札も何度か書き換えた跡があります。
 どの鳥も、金貨百枚あれば買えます。
「もう十枚上乗せしても良いが」
「いや、止めておきます」
 男は首を横に振りました。

 家に帰った男は、金の卵を生む鶏にたっぷりエサをやります。
「折角手に入れた金の卵を生む鶏を、目先の金に惑わされて人に売るなんて馬鹿げてる。欲をかかず地道に生きてこそだ」
 その後、男の鶏を売ってくれという人は何人か現れましたが、どれほど大金を積まれても男は売りませんでした。
 鶏は十年ほど生き、合計で七十個ほど金の卵を生み、お陰でその十年の間は、男は夕食に三日に一度は肉のスープを食べる事が出来ました。
 めでたし、めでたし。
金の卵 ごんぱち

Entry3
キミドリ色の空
ウザワトモコ

「ちゃーちゃん!!」
私は母を呼んだ。
「ちゃーちゃん、凛が変だよ。」
凛というのは、我が家の愛犬である。凛は私をぐったりした目でみつめている。それは寂しげな顔でもあり、また甘えているような表情である。ちゃーちゃんは私の次にこの凛を愛している。
「あら、ご飯まだかしら。」
そんなちゃーちゃんは平然としている。もう一度私は凛を見た。やはり少なからず凛は私に何かを問うような目で何かを訴えていた。しかし、ちゃーちゃんはあいかわらず、台所で夕飯の支度をしている。そんなちゃーちゃんに少し腹をたてた私は、なんとなくその場を離れた。
自分の部屋にこもって、大音量でラジオを聞く。こんな時代にラジオ。そう、私はラジオ愛好家なのだ。ラジオはなんてったって、最新の情報が飛び交う近未来的なマシンだと思っているのだ。最近の流行りっていうのは、なんだか性に合わない。お笑い芸人の一発どまりのギャグのようだ。それなのにこのラジオマシンはとうの昔から愛されている。これだけは絶対に私を裏切らない。私はそういう意味もわからない観念を沢山持っている。
ちゃーちゃんの声がした。ラジオの音が大きく何を言ったのかまでは聞こえなかった。「ご飯ができたわよ」という呼びかけだろうと無視をした。むしろ食事など、どうでもよかったのだ。今ちょうどいいところなのだ。しかし、急に電波に波が生じたのか無線のような音がしばしはいるようになり、あまりにひどいので、チャンネルを回すと、ピタッと、静まった。その番組は、「あなたへの手紙」というタイトルだった。興味のない番組だったが、ふっとある手紙の内容が耳につく。
「こんなに愛されたのは初めてよ。ありがとう。」
なんて単純な手紙なんだと鼻で笑った。すると、なんだか父の声がした。その声はいつもより口調がおかしい。部屋のドアを開けると、その場は一転したかのようにリビングでは何か騒いでいる。階段を急いで降りた時、私の目は信じられない光景を見た。凛の様子がおかしい。ぐったりして身を動かさない。ちゃーちゃんの顔は青ざめ、父はもうあきらめたようだった。私はなぜあの時、ちゃーちゃんに腹をたてず、我が家の愛犬のそばにいなかったのか、自分をせめた。
その時あのラジオが頭をよぎる。「こんなに愛されたのは初めてよ。ありがとう。」その時その言葉が、誰からでもない凛から私への言葉だということに、私は気づいた。
キミドリ色の空 ウザワトモコ

Entry4
名探偵Rの事件簿1「DM(ダイイングメッセージ)は明確に」
りんね

 私の名は名探偵R。無論本名ではない。いくつかの犯罪捜査に微力を尽くした後、自然発生的に呼ばれ出した名なのだが、この名には2つの不思議な点がある。
 まず、世に探偵小説は多くあれど、日本の私立探偵に捜査権はない。私は「れっきとした捜査一課の警察官」なのだ。それなのに探偵とはこれいかに。
 もう一点。私の本名には(現職警官であるため公表は避ける)頭文字どころか氏名のどこにも「ラ行」の音はない。なぜRなのか。
 職場では誰しもがRと呼ぶため、新入りには「珍しいお名前ですね」とジョークのようで本気のお言葉を頂く。
 なお、誤解のないよう言い添えると、私は同じ一課でも課内で事務を行う一係に所属している。

 さて、自己紹介はここまで。今日の事件簿だ。

 それは一見、単純な事件だった。帰宅後に自宅で刺殺された独身の会社役員が血文字で「ハマ」と書き残しており、事件の前日には同じ会社の浜という男が彼との口論を目撃されていたのだという。
 当初は二係の面々も「優秀なホトケ」と笑顔を浮かべていたらしい。

 ところが「いざ任意同行!」となって、成行きが一変した。事件前日の口論は得意先とのトラブルに関連したものであり、浜はその後処理のためブラジルにいたのだ。これでは呼べない……どころか、事件当日の朝に出国しており、犯行も行えない。
 それでも浜を疑ってトリック殺人説を述べる刑事もいたが、現場に凶器の刃物はなかったし、痕跡を残さず1日仕掛けておける氷の刃など存在しない。

「Rさん、助けて下さいよ」と同僚の大島君が泣きついてきたのは捜査3日目だった。
 被害者の身辺の浜●さん探しを命じられたという。大きめな企業の役員だったようで、会社や自宅から押収された膨大な枚数の名刺を1枚1枚調べているらしい。
 折角なので、噂のDMの写真を見せてもらった。確かに「Hama」と書いてある。私は被害者の写真と見比べ、握り締められた拳を指で示した。
「浜崎、浜田、濱口はないでしょう」
 書き切っていたように見えた。続きを書く前に事切れたなら、人差し指が伸ばされているはずではないか、と。
 そして、もう一つ。被害者の身辺に浜ではない「名前」の人物がいないか調べるように提案した。

 ほどなく逮捕されたのは、日本国籍と財産目当てに彼に近づいて袖にされたナターシャという女だった。
 そう。ナターシャの愛称「ナータ」をロシア語の筆記体で書くと「Hama」となるのであーる。
名探偵Rの事件簿1「DM(ダイイングメッセージ)は明確に」 りんね

Entry5

(本作品は掲載を終了しました)