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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第4回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 6月)
文字数
1
ごんぱち
1000
2
待子あかね
1000
3
SuzzannaOwlamp
1000
4
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん

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Entry1
ぶどう、とれました
ごんぱち

 ある日、森のきつねが、ぶどうの木を見つけました。
 たわわに実ったぶどうは、大きいずっしりとした粒をつけています。一粒一粒が黒いほどに濃い紫色で、しっかりと熟れていそうです。
 きつねはぶどうを取ろうとして、立ち上がります。
 けれど、ぶどうの木は高く、きつねの口も手も届きません。
 次に、きつねはぶどうの木をのぼろうとしました。
 けれど、幹の低いところには枝はなく、掴まる場所がありません。爪を立てようとしますが、木の皮は固く引っ掛ける事が出来ません。
 それから何度も何度も何度も何度も登ろうとしましたが、やはりぶどうはとれません。汗だくになったきつねは、ふと思い付いて今度は石を投げ始めます。
 けれど、石は届かず、それどころかたまにきつねの頭の上に落ちて来ます。
 何度も何度も何度も何度も石を投げて、何度も何度も何度も何度も顔に受け続けるうちに、傷が出来て血が滲み始めました。
 顔が血だらけになって、肩がガクガクになったころ、ようやく一発の石が、ぶどうにあたりました。
 ぶどうのふさは一つゆれてから、落ちて来ました。
「やった、やったぞ!」
 きつねはそれを受け止めると、一つ口に入れました。
「んーー、おいしい! 最高だ! なんておいしいんだ!」

 きつねが喜んでいると、他の動物達がやって来ました。
「どうしたんだい、きつねさん」
 くまがたずねます。
「ぶどうをとったのさ、これほどおいしいぶどうは、まあはじめてだね」
「いいなぁ、ちょっと食べさせてよ」
 りすがきつねにすり寄ります。
「たのむよ」
 さるもペコペコ頭を下げます。
 きつねは少し考えていましたが。
「いいよ、こんなにおいしいぶどうを食べられたんだ、今日はものすごく気分が良いしね」
「おお、ありがたい!」
「いつもケチなきつねさんにしてみれば、ものすごい大盤振る舞いだね」
「ふつうの動物が、自分を食べてくれって言ってるようなもんだ」
 動物たちはきつねからぶどうを受けとって――食べました。
「どうだい、おいしいだろう?」
 きつねはにこにこしながら、またぶどうを食べました。
 動物たちは、こそこそと話します。
「……すっぱいな」
「うん、舌が曲がるぐらいすっぱいね」
「涙が出るぐらいすっぱいよ」
「ははは、おいしいなぁ!」
 きつねは笑いながら、そのシャレにならないぐらいすっぱいぶどうを食べながら、立ち去りました。
 嘘を言っているようには、とても見えない顔でした。
ぶどう、とれました ごんぱち

Entry2
さすらうこいびと
待子あかね

 きみはいつもブランコに揺られていた。来る日も来る日も、あのキタ公園で揺られていた。待ち合わせはいつも、キタ公園。右から3つ目がお気に入りの場所。ブルーのブランコ。
「おはよう」
 きみに声をかけるぼく。今日は珍しくジーパンをはいているね。いつものようにぼんやりとしている。3ヶ月経ってもまだわからない、きみのこと。
「おはよう」
「おはよう、マツムラくん」
 ぼくのさすらうこいびとになって、3ヶ月経つというのに、ずっとはじめっからマツムラくんと呼ぶ。決して、アキラくんとかアキラ、なんて呼んでくれない。まだ、きっと早いんだ。きっと、もう少ししたら、アキラくんだかアキラ、って呼んでくれるにちがいない。そう、期待しているんだ。
「今日は、どこへ行こうか」
「……あの、どこへも行きたくないの」
「喫茶店でお茶ぐらい飲まないの?」
「うん」
「どうして? 気分が乗らないかな?」
「ちょっと、ね」
「そっか。それなら仕方ないよ」
「ごめんね。せっかく来てくれたのに」
「ううん。そんなこと、ないって。ぜんぜん気にしなくてもいいよ」

 今日もだ。これで、3回目だろうか。いや、4回目かもしれない。毎週、日曜の10時には必ず待ち合わせをしている。土曜の夜にきみからメールが届くんだ。
「明日、待ってるから」
 ぼくが返事をしないでいると、
「明日、待ってるから」
と同じメールが届く。
 ぼくは、きつくきみに対して何もいわない。それが懸命だと思っているから。それが、正しいと思っているから。だけど、きみは?
 いっしょに行ったところといえば、近くの図書館、喫茶店、ファミリーレストラン。と、スターバックスコーヒー。これは、きみからの提案だったね。
「あたし、スターバックスへ行ってみたい」
 ことばが少ないきみのことば。嬉しかったよ。だけど、その反面、どこか寂しくもあった、頑張って無理に搾り出したことばのようで……辛かった。


 翌週の、日曜日。そして、その次の日曜日も、そのまた次の日曜日も、きみはいつものキタ公園に現れなかった。メールはきちんと届いているのに。ぼくは、返事を返しているのに。
「待っているから」
 どこにいるの。どこで待っているの。ぼくに知らせておくれ、ぼくに教えておくれよ。早く、ねえ早く。
 きっと、また、しばらく経ってから、この公園に帰ってくるだろう。それまでは、きみはどこかの公園のブランコでさすらっているね。ぼくのさすらうこいびとよ。
さすらうこいびと 待子あかね

Entry3
intelligence
SuzzannaOwlamp

 葛西翔一と篠山千尋は、めでたく結婚した。その道のりは速さと時間をかけたものだった。馴れ初めは、友人だけが知っている。祝の席では英語と数学だけをきっちり抑えた翔一と、情報化社会に精通した千尋による赤外線送受信が粛々と行われた。未だに芸術作品にこだわる新郎新婦は、電波時計という引き出物で言霊たちに謝辞を送った。
 その夜のことである。どのような経緯で歴史を紐解くかを必死で議論しあうふたりの姿があった。
「ヘロドトスの文書は神話ではなく、磐然とした歴史書だが、ギリシャ文字で書かれているために解読に時間がかかる。それに関して異論はないね?」
「ええ。辱むところではあるわ。どうしたって解読されることになるんだから」
「続けてもいいかい? ローマ帝国が築き上げられるまでに、数々の人間の血が流れているんだ。例を出すとするならば、マラトンの戦い。あれは伝達者がアテネからスパルタまでの道のりを一人で走りきったとされている。しかし、その伝達者の周りには、多くの死者、つまり捨て駒になった人間がいたという説があるんだ。いいかい? なにかを求めるならば、必ずなにかを犠牲にしなくちゃいけない」
「じゃあ聞くけど、あなたが数学の解答に求めるのに、なにか犠牲にしているものはある?」
「あるさ。山のように積み重ねられた母国への愛情さ」
「つまりあなたは愛国心と引き換えに、たったひとつの数式やら記号を求めてるわけね」
「まあな。その作業は数学国の数学語で数や論理を操っているといってもいい」
「だったら聞くけど数や論理を操らなかったらどうなるの?」
「そこからが難しいところだ。エレガントな解法はひとつしかない。それだけに研究者は知恵を絞りあうのさ」
「エレガントってそんなに重要なことかしら?」
「俺はお前を見つけ出した。それが俺の解答だ」
「だったらあたしは最初からエレガントな解答を持っていらことになるわ」
「厳しいことを言えば、数や論理でお前を勝ち得た。そういえばわかるかな」
「わからないわ。あたしは数と論理なの?」
「どう言えばわかるかな。そうだ。モンシロチョウっているだろ?」
「モンシロチョウ。ええ、いるわね」
「お前はモンシロチョウの生態を知りたいと思ったら必死で調査するだろ?」
「ええ、わかる気がするわ。あたしがモンシロチョウだとしたら、あなたはそれを必死で調べていたのね」
「とりあえず……」
   「今日はやめて明日にしましょう」
intelligence SuzzannaOwlamp

Entry4

(本作品は掲載を終了しました)