きみはいつもブランコに揺られていた。来る日も来る日も、あのキタ公園で揺られていた。待ち合わせはいつも、キタ公園。右から3つ目がお気に入りの場所。ブルーのブランコ。
「おはよう」
きみに声をかけるぼく。今日は珍しくジーパンをはいているね。いつものようにぼんやりとしている。3ヶ月経ってもまだわからない、きみのこと。
「おはよう」
「おはよう、マツムラくん」
ぼくのさすらうこいびとになって、3ヶ月経つというのに、ずっとはじめっからマツムラくんと呼ぶ。決して、アキラくんとかアキラ、なんて呼んでくれない。まだ、きっと早いんだ。きっと、もう少ししたら、アキラくんだかアキラ、って呼んでくれるにちがいない。そう、期待しているんだ。
「今日は、どこへ行こうか」
「……あの、どこへも行きたくないの」
「喫茶店でお茶ぐらい飲まないの?」
「うん」
「どうして? 気分が乗らないかな?」
「ちょっと、ね」
「そっか。それなら仕方ないよ」
「ごめんね。せっかく来てくれたのに」
「ううん。そんなこと、ないって。ぜんぜん気にしなくてもいいよ」
今日もだ。これで、3回目だろうか。いや、4回目かもしれない。毎週、日曜の10時には必ず待ち合わせをしている。土曜の夜にきみからメールが届くんだ。
「明日、待ってるから」
ぼくが返事をしないでいると、
「明日、待ってるから」
と同じメールが届く。
ぼくは、きつくきみに対して何もいわない。それが懸命だと思っているから。それが、正しいと思っているから。だけど、きみは?
いっしょに行ったところといえば、近くの図書館、喫茶店、ファミリーレストラン。と、スターバックスコーヒー。これは、きみからの提案だったね。
「あたし、スターバックスへ行ってみたい」
ことばが少ないきみのことば。嬉しかったよ。だけど、その反面、どこか寂しくもあった、頑張って無理に搾り出したことばのようで……辛かった。
翌週の、日曜日。そして、その次の日曜日も、そのまた次の日曜日も、きみはいつものキタ公園に現れなかった。メールはきちんと届いているのに。ぼくは、返事を返しているのに。
「待っているから」
どこにいるの。どこで待っているの。ぼくに知らせておくれ、ぼくに教えておくれよ。早く、ねえ早く。
きっと、また、しばらく経ってから、この公園に帰ってくるだろう。それまでは、きみはどこかの公園のブランコでさすらっているね。ぼくのさすらうこいびとよ。