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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第7回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 9月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
SuzzannaOwlamp
1000
3
ごんぱち
1000
4
村方祐治
1000

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Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
あっさりマエストロ
SuzzannaOwlamp

 黒い影が谷を尻目に赤く染まるころ光は真っ白になるまでその輝きを止めることを知らなかった。たらちねの母山の頂きには一点の曇りもなく、また激しい鳥の声も聞こえはしなかった。そういう時の事である。慟々とうねりを上げる海から一人の男が歩いてきた。男はぬれた髪をかき上げながらその容貌を明らかにした。髪は長髪で、少し風にたなびく白のワイシャツが彼の過去の気品の高さを窺わせた。ずぶ濡れになった体を乾かそうと彼は服を脱いだ。引き締まったその体から見て、まだ四十にも満たない様子だった。干からびた私の体から、冷や汗にも似た脂汗がじわじわとにじみ出るのが分かった。私は彼の元に駆け寄り、声を掛けた。失礼ですがあなたのお名前をお聞かせ願えますか。
 何も言わなかった。
 それが彼の全てを物語っているようで少し寂しさを感じた。私は彼を私の家まで招待し、軽くシャワーを浴びてもらった。彼はお礼にと、家にあったピアノの前に座り、美しい旋律を奏で始めた。楽曲名までは分からないが、とても心を癒す音楽だった。彼の奏でる旋律は、どこか物憂げで、どこか懐かしい気分に私を酔わせた。幸せなひと時は終わり、少し間の空いた声で、水が欲しい、と言った。水道からコップに水を移し、彼に手渡した。喉音を立てて水を飲む仕草は、オットセイを思わせた。私はじっくりその様子を見、そうしてこう尋ねた。その音楽はどなたから学んだものですか。あまりの美しさに戦慄が走ったことは言うまでもない。彼は何も答えないであろうと踏んでいたが、あっさりマエストロだと答えた。それ以上踏み込んだ質問はできない。彼には彼なりの私情があるに違いないのだから。家にいるその男を見、私はこう思った。なぜ海からやって来たのだろう。当然の疑問だった。しかしその疑問はすぐに解消した。彼の腕には包帯が巻かれていたのである。山裾のこんな小さな海岸に打ち上げられたのだ。よっぽどの船だったに違いない。それでも尚、私が彼に関心を抱いたのは、恋心にも似た感情を抱き始めていたからかもしれない。その可能性を疑う余地はゼロに近かった。なぜなら心臓の鼓動が高鳴り、彼の顔を見るたびに、心が豊かになっているのが自分でも手に取るように感じられたからである。
 次の朝、彼はどこにもいなかった。仕方のない空虚感に苛まれ私はラジオの電源をつけた。すると、ラジオから流れ始めたのは、昨日の彼の美しい旋律だった。
あっさりマエストロ SuzzannaOwlamp

Entry3
爆弾屋
ごんぱち

「すみません、爆弾下さい」
「えーと、ドリフ爆弾、ハリウッド爆弾、刑事ドラマ爆弾、アクションゲーム爆弾、恋愛SIM爆弾、RPG爆弾がございますが」
「ドリフ爆弾というのは……」
「爆発すると、衣服が焦げて破け、髪はパンチパーマになります。類似したものに、タイムボカンシリーズ爆弾というのがありますが、こちらはポロリがあります」
「殺傷能力は?」
「煙を口から吐いて、数分間気絶します。後遺症や外傷は基本的にありません」
「……ハリウッド爆弾は」
「とにかく炎を上げて大爆発します。どんな形にもなりますが、結果的に大量のガソリンに火を点けたような爆発をするのが特徴です。殺傷能力は高いですが、WASP相手には火傷一つ負わせる事は出来ません」
「刑事ドラマ爆弾は?」
「回想シーン以外では爆発しません。今から仕掛けた場合、必ず専門知識のない素人が専門家に電話で指示を受けながら解体される事になります。赤と青のコードが付いているのが特徴です」
「素人に解体されてしまうような爆弾は要らないな……アクションゲーム爆弾は?」
「激しい爆炎の出る爆弾ですね。携帯性が途轍もなく高いですよ。あ、変な置き方をすると逃げられなくなって自爆する事もあるので……つか、それが定番の死に方なので注意を」
「自爆するような爆弾はいらんな」
「優柔不断なあなたに、恋愛SIM爆弾はどうです?」
「なんだそれは」
「名前を教え合っただけの、彼女どころか友達かどうかも怪しい相手とデートをしないと発生する爆弾です」
「……意味が、よく分からんのだが。そんな相手とデートというのは出来るものか? 関係が深まるまでは一緒に帰って会話ぐらいで、その結果がデート、とかの方がいーんじゃないかと思うんだが」
「むっ! 貴様、カラフル頭髪教の者ではないな!」
「ふははは! 我こそは顔長教! 職人芸の作り込み、下校会話の魅力とくと味わわせてやるわ!」
「ぬかせ! 元祖の実力舐めるな!」
「こらぁ、お前らぁ! 喧嘩は止めろお!」
「あ、あなたは!」
「あなた様は!」
「「四……じゃなくて、ヲタ老師!」」
「はあい、人という字は、必死に素直になって主人公をデートに誘おうとするツンデレッ娘の人さし指と人さし指を合わせる形に似ていまぁす! 勿論、ちゃんと誘えなくてキレて逃げ出した後に落ち込んでるところに、主人公が現れて、優しくフォローしてイタダキマスの展開になるぞぉ、ここテストに出まーす!」
爆弾屋 ごんぱち

Entry4
残響
村方祐治

 銃撃の直後、赤い飛沫をあげ、崩れ落ちた肉体。その腕をとり、脈を取る少年。どちらを見るでもなく、ただぼうっと眺めている少年。
 それらの周りに、時が止まったような静寂が滞留している。
 肉体の脈をとっていた少年が、ゆっくりと顔を上げる。もうひとりの少年の目をそうっと見つめ、瞬きをする。
 「心配ない。ちゃんと、死んでる」
 肉体の腕と、その脈をとる腕を眺めていた少年の大きな瞳が、その瞳孔が、かすかに、瞠るように、開く。
 「これで俺も、人殺し、か」
 右手に握られたM945が、硝煙を噴き上げている。
 「気に病むことはないさ。こいつを生かしておいたら、みんなやられてたんだ」
 「死ななきゃいけなかったのかな、こいつ」
 「運命、いや、裁きだよ。天罰が下ったんだ。お前のやったことは、間違ってない」
 「裁き……か」
 手の中の銃を見下ろす。銃こそが、俺の存在の全てなんじゃないかという考えが、体を侵犯していくように思える。「そうかな」
 「人が死ぬってことについて、確信をもって100%こうだと言い切れる人はいない。天国のことも、地獄のことも、現世のことでさえも、誰もしらない。それでも人は人を殺すことをやめない。……俺だってそうだ」
 「お前はただ人を殺すために引き金を引いたんじゃない。人を守るために引いたんだ。人を殺すための一撃と、人を守るための一撃は、違う」
 「確かに、俺のは人を守るためのものだった。でも、人殺しは人殺しだ。たとえ1万人、1億人救ったって俺は」
 「誰かを守るために、いつもひとつの犠牲も払わなくてすむほど、世界はうまくは回らない」
 「ああ、結局俺は……無力なんだ」
 「俺だってそうさ。だからこそ、持っているほんの少しの力の使い方について、悩みつくさなければいけないんだと思う。お前は十分悩んだだろう」
 「……俺の罪―こいつの死は、ちゃんと背負って生きていくよ」

//

 ―***の銃殺事件について、警察当局はきょう、14歳の少年を銃刀法違反および殺人の容疑で逮捕―

 「最近はこういうのばっかりだねぇ。少年法なんか無いほうがいいのに。あんな法律があるから…」
 母の声がやけにくっきりと聞こえて、手の皺をじっと見つめる。
 (殺したのは俺だ。警察に行くのは、俺だけでいい)
 言葉と、少年らしい表情が、眉間に焦げ付いて、熱い。
 「逃げたのは……俺かな」
 母に聞こえないように呟いて、眉間の熱さが増していくのを感じる。