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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第10回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 12月)
文字数
1
萩生あき
999
2
ヤマモト
1000
3
秋尾十一
963
4
葛城 炯
835
5
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
6
SuzzannaOwlamp
1000
7
ごんぱち
1000

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Entry1
少女の第二ボタン
萩生あき

 俺は普通の人間で幽霊を見る体質ではない。見たいと思う事はあったけど怖いから、強く願う事はなかった。

 だけどついに見たんだ。その幽霊ってやつを。

 少し前に俺は地元の高校を卒業した。
 体が思うように成長しなかったので、新調する事が無かった学ランを――まぁ捨てるのも三年間の思い出を消すようで嫌だったからクリーニングに出した。どうせなら卒業アルバムと一緒にクローゼットに入れておこうと思ったんだ。
 クリーニングから学ランが戻ってきて、自室の壁へとそれを掛けた。すぐにクローゼットへとしまわなかったのは、単に面倒くさかったからだ。

 その日の夜。ベッドに潜り込んでみたはいいが部屋の空気が重たくて、息が苦しくて、どうにも寝つけない。
 しばらくもぞもぞと布団の中で動いていると急に『キーン』と耳鳴りがして、体が硬直した。
 まずい、金縛りだ!
 そう思うも、金縛り体験は初めてだし、どうすればいいのか全く分からなかった。なんとか状況を打開しようと試みても、体は動かないし声も出せない。
 耳鳴りが終わると、次にビニールが擦れる音が聞こえてきた。
 恐怖はあったけどその音がどうしても気になって、音が聞こえる方向――学ランをかけている壁に、体は動かないので視線だけを向けた。

 ……幽霊って足があるんだな。

 そこには小さな――多分中学生くらいだろうか、セーラー服の女の子がいた。その体躯は向こう側が透き通っているようにも、ただ薄く輝いているようにも見える。その少女のおさげが、ビニールの擦れる音とともに幽かに揺れる。
 学ランをどうにかするつもりか?
 俺は少女の必死な様子がどうも愛らしく見えて、もどかしくて、じれったかった。
「ビニール、破こうか?」
 金縛りで声が出なかったはずなのに、その言葉はすんなり発音できた。俺の声にその幽霊は肩をピクンと震わせ、二つのおさげが逆立った。
 少女は恐る恐る――というか怖いのはこっちの方だ――俺に振り向こうとし、その顔が全部見える前に少女は文字通り消えてしまった。
 ――一体、何がしたかったのだろう?

 次の日の朝。壁に掛けてあった学ランを見てみると学ランの第二ボタンがはずれ、内側のビニールに引っかかっていた。
 あの少女は、第二ボタンが欲しかったのか。
 そう思い俺はクローゼットへ学ランをしまうのをやめ、壁に掛けおく事にした。
 あの少女がいつ取りにきてもいいよう、ビニールを外して。
少女の第二ボタン 萩生あき

Entry2
夢に出る
ヤマモト

 父ちゃんが夢に出る。よく出る。居間とか庭とか昔行った遊園地とか、いろんな所で俺と父ちゃんが喋っている。死んだ肉親が夢に出るのは何かの警告だとかよく聞くが、そんな感じは無い。

 昨日のはこんな夢だ。
 俺は野球の試合を見ている。というか、フェンスの向こうに小さーく見える選手達をぼんやり眺めている。回りは酒で顔を赤くしたおっさんばかりだ。大人が巨大に見えるので、今俺は子供になってるんだなと解る。
 ポコっと頭に何かが当り、振り向くと父ちゃんが唐揚げとカップを持って立っている。俺はズレた野球帽を被り直し、やりぃー! と喜んで唐揚げを受け取る。父ちゃんは笑いながらビールを飲んでいる。
 目が覚めて、そういや野球、よく連れてってもらったよなと思った。



「あんた煙草減らしなさいよ。体に毒よ、毒」
食後の一服を吸っていたら母ちゃんが言った。
「へいへー」
「全く、お父さんがいたらなんて言うか」
パタパタと台所を片付けながら呆れ顔でこちらを見る。
「父ちゃんも吸っただろ?」
「お父さんは子供が出来てから吸ってなかったわよ。見た事無いでしょ?」
ふーん、と思いながら俺は違和感を感じる。父ちゃんが煙草を吸ってる所を見た気がしたのだ。
 いつだっけな? と考えて、思い当たる。夢の中だ。

 誰かの葬式らしい。皆一様に黒い服を着て鼻を鳴らしている。俺は高校の制服を着ていて、あ、これはもしや、と思ったら隣に父ちゃんが立っていた。その喪服は冗談かなんかなのか? と聞こうと思うが止めておく。ふと気付くと外で、どうやら火葬場だ。まだ隣に父ちゃんはいて、煙突から出る煙を見ながら
「あれ、俺だろ」
と言った。
 俺はちょっと困ってしまった。そしたら何故か急に22の俺の意識になって、
「もう5年も経つんだよな」
と言っていた。
 父ちゃんは苦笑いしてポケットから煙草を取り出し、火を点けた。
 あ、煙草、と思う。じっと見ている俺に気付いて
「お前は長生きしろよ」
と父ちゃんは笑った。父ちゃんは早過ぎだよ、と思ったけど言えなかった。夢だったんだし、言えばよかった。


 後ろでチーンと音がして、振り向くと母ちゃんが仏壇に手を合わせている。



 支度をして家を出た。久しぶりに彼女とデートだ。遠出して泊る計画。
 駅までの道を歩きながら、ふと今日、裸の彼女の隣で父ちゃんの夢なんか見たらちょっとヤダよな、と思って笑ってしまった。
 今日は勘弁な、と呟いて空へ手を合わせた。
夢に出る ヤマモト

Entry3
マイドアリ
秋尾十一

 「なあ」とマサオが言った。「オレ達がいるこの世界がテレビゲームのなかだとして、昨日、食べたラーメンが本当においしいと言えるのか。本当は味なんかなくて、『おいしい』と思わされているだけじゃないか」
 昼休みだった。いい天気だ。
 「……じゃあ、今後、松華堂行くのやめるか」
 「うそです。すいませんでした。オレ達がすべきことは、松華堂の味を疑うことではなく、味を守ることでした」
 「味を守る?」
 「震度8の地震が来ても店が潰れないように、耐震構造にするとか」
 「どうやって?」
 「松華堂基金をつくって、募金をお願いして。まずは、840円寄付する気ない?」
 「松華堂のオヤジの了解なしに基金つくってどうすんだよ? しかも、840円って、昨日、マサオがラーメン食うのに借りた額だろ?」
 「バレた?」
 「いいよ、返すの明日で」
 「毎度アリ」
 毎度あり……か。懐かしい響きだ。子どもの頃、お気に入りの駄菓子屋があった。ガチャガチャがあって、ところ天があった。そこのおばあちゃんはいつも、子ども相手に「毎度あり」と言ってくれていたっけ……。
 「言ってくれていたっけ……」
 「なあ、マサオ。ボクの耳元でしみじみセリフささやくのやめてくれない? ボクが独り言を言っているみたいだろ? それに、それ、金子屋の話だろ? おばあちゃん生きているし、お店まだあるし」
 「マイドアリ」
 「何だいそれ?」
 「世界の共通語マイドアリ。マイドアリ星から来たマイドアリ星人が人類に授けた叡智」
 「人類は進化したのかい?」
 「進化し続けるさ。何ひとつ立ち止まるものはない。松華堂の味だって、進化し続けているだろ?」
 人は変わり続けなければならないのだろうか? CDチャートや電化製品のように。
 トゥルルル。
 校則に違反して持ってきているケータイが鳴った。
 プチッ。
 出ようとしたら、「充電切れ」の表示。
 「充電切れ?」
 「ああ」
 ん? マサオの顔やその背景が揺れて見える。震度8? しかし、揺れているばかりではなく、霞み始めてもいる。昼メシの後だから急に眠くなった?
 「もうすぐ世界中の電気が落ちるな」
 「?」
 「どうせこの世界はマイドアリ星人のゲームの中なんだから、奴等が充電を忘れれば、全部OFFさ」とマサオはにやりと笑って言った。「充電が終わる間までだけどね」
マイドアリ 秋尾十一

Entry4
グレイ 彷徨う男
葛城 炯

 荒野で男はゴロツキ達に囲まれていた。背負っていた呪紋様が刻まれた箱を下ろし、ゆったりと身構える。
「旦那? 旦那は……賞金首だろ?」
「そうですが? 何か?」
「じゃ……その首置いてきな」
 一閃。首が胴から離れ、地に転がり胴体もまた倒れ落ちる。
「へっへっへっ……呆気ねぇな」
「って……それだけですか?」
 首がしゃべり出す。身体の方も何事もなかったかのように起き上がり首を拾い上げた。
 まるで帽子を被るかのように首を据えて二度三度と具合を確かめる。
「ただの剣じゃ、首は切れても私に死を与えることはありませんよ。人形遣いの私を……ね」
 振り下ろされた男の腕から法術が放たれ……ゴロツキ達は一瞬で気絶した。
「申し訳ありませんが……アナタ達の命を少しだけいただきました。それでお相子ということにしておきましょう」
 呪紋様の箱を背負い、その場を立ち去る。
 幾度となく繰り返される……男にとっては雨が降るかのような些細な出来事のひとつがまた終わった。

 その男は長い旅をしていた。
 アテのない、だが探し求める旅。
 呪紋様の箱の中身を約束した少女に手渡すためだけの旅を……

「はい。お嬢さん。これで怪我は治りましたよ」
「ありがとう」
「すみません。お代は?」
 母親に告げる男の言葉は決まっている。
「要りませんよ。これでも元白魔導師。治療は全てタダです」
 その先は言わなくても判っている。この世の全ての人々は……
 元白魔導師ならば今は?
 決まっている。人々に嫌われる人形遣い。
 他人の命を食らい生き続ける外法の魔術師。
 母親は青ざめて女の子の手を引いて離れていく。訳が判らず戸惑う女の子はそれでもその男に手を振り微笑みを返していた。
「お代は要りませんが……『報酬』はいただきましたよ」
 女の子から命は吸い取ってはいない。だが、それを理解されることはない。
「さぁて。この町にも居られなかったようですから……次の町に行きますか」
 男は……アテのない旅を続ける。
 死が訪れることのない終わり無き旅を……
グレイ 彷徨う男 葛城 炯

Entry5

(本作品は掲載を終了しました)

Entry6
sex punch
SuzzannaOwlamp

 ベッドに座り、軽くキスをする。衣服を脱がせ、背中に手を回し、ブラジャーのホックを外す。シャツを脱ぎ、ズボンのベルトを外す。もう一度、軽くキスをする。お互いパンツを脱ぎ、シャワールームで体を洗い、浴槽に浸かる。タオルを巻き、歯磨きをする。ぼくは、ベッドに座る彼女を横に寝かせる。キスをし、乳首を軽く撫で、彼女は、甲高い声で鳴く。乳房を舐め、胸から腹にかけ、舌を這わせる。彼女の陰部を舐め、濡れた部分から汁を吸う。足を舐め回し、彼女の上と下を交代する。胸から腕を舐められ、次第に火照る体を、彼女は下半身の逸物まで、舌を持っていく。口の中で、転がすように、その部分を弄び、お互いの陰部に接吻する。彼女の股間を僕の陰部に近づけたときには、彼女は濡れていて、僕は勃起している。ぼくと彼女は、座った体勢で抱きしめあう。彼女のお尻を、両手で揉みしだきながら、重なった部分を見ると、生暖かい液体でいっぱいになっている。腰を振り、必死で快感を得ようとする。彼女の表情を見ると、瞳を閉じ、歯を喰い縛っている。ぼくが果てると、彼女は優しくティッシュで、アレを拭う。一緒にシャワールームまで行き、体を洗いあう。浴槽で体を交差させ、彼女の柔肌を感じる。ぼくは、もう喋る体力もなくなり、彼女の言葉に相槌を打つ。体を拭き、ベッドで少しは話し込む。

 やっと気がついた。

 あのときの恋。まさかこんなところで再会するなんて。コスプレの衣装を身に纏い、あのころの面影を残しつつ、明らかにセックスだけは巧くなっていた彼女は、落ちぶれたぼくに冗談を飛ばした。気がつかないふりに必死だったが、明らかに彼女は気づいていた。あれだけ情熱を注いだ彼女だ。セックスのときに咳をする癖も、途中で鼻をかむ癖も変わっていない。誤魔化すことを覚えたぼくは、知らんふりして、名刺を受け取る。結婚まで考え、誕生日に慣れない指輪をプレゼントしたことも過去の話。

 降りよう。

 それがぼくの出した結論だ。彼女の誕生日や彼女の息子の誕生日まで覚えている。事態が把握できたぼくは、これを墓場まで持って行こうと心に決めた。彼女の家族が、ぼくの家族と知り合いであると知るまでは。

 名前を変えた彼女は、あの時と同じ挨拶で、ぼくを見送った。
「ありがとう」
ぼくは、振り返って右手を挙げ、
「また来るよ」
と言い、店を出た。少しだけ綺麗になった彼女を思い出し、ライターで煙草に火を点けた。
sex punch SuzzannaOwlamp

Entry7
貧乏神と福の神
ごんぱち

「よう、福の神、オレと力比べをしないか」
 貧乏神が言いました。
「良いだろう、何で比べる?」
 福の神も乗り気です。
「あそこに旅人がいるだろう、あいつの上着を脱がす事が出来たら勝ちにしよう」
「いいだろう」

「まずはオレだ!」
 貧乏神が、どんどん旅人を貧乏にして行きます。
「ほぅら、不幸になれ、貧乏になれぇ!」
 旅人は、路銀は尽き果て、荷物を落とし、病気にかかって、肋は浮き上がり、目は落ちくぼみ、虫の息と呼ぶにも弱々しい程の呼吸には、肺の雑音が混じっています。
 けれど、旅人は貧乏になればなるほど、不幸になればなるほど、数少ない財産である上着を離しません。上着の前をしっかり閉じて身を縮めながら、よろよろと旅を続けます。
「むぅ、しぶとい奴め!」

「次は私だな」
 福の神は、どんどん旅人に福を授けていきます。
「幸せになれ、金よ儲かれ、健康になれー!」
 たちまち旅人の病気は治り、荷物は見つかり、ひょんな事で大金を稼ぎました。
 すっかり元気を取り戻した旅人は、暴飲暴食を続け、どんどん太って来ました。無論、福の神が付いているのですから、それで死ぬような事はありません。どんどんどんどんどんどんどんどん食べ続け、太り続け、それでもお金は入るし、異性にはモテモテ、健康そのもの。
 けれど太った人間というのは、着ぐるみをきているようなもの。気温を暑く感じる事だけは避けられません。毎日毎日大量の汗をだらだらと流し、上着はドロドロのヌルヌルになってしまいました。旅人は上着を着ている時に幸運があったので、これを脱ぐ事には若干の躊躇がありましたが、太った身体には既に小さくなりすぎ、また、汚れすぎていました。
 旅人はとうとう、上着のボタンに手をかけました。一つ一つ外されていくボタンの間から、黒い胸毛が現れました。いえ、胸だけではありません。毛は腹部まで繋がっており、下はズボンの中に消えていました。毛の一本一本は太く、縮れておりまっ黒で、根元は毛穴から染み出した脂が処々角栓になっています。それから旅人は上着の袖から腕を抜きます。脇に生えた毛は、汗のせいでピタリと貼り付いていました。完全に脱げた上着を旅人は床に放ります。しっとりと汗に濡れた裸身は、てらてらと脂で光り、放り投げられた上着は、べしゃり、と、音を立てて汗の滴を散らしました。

「……福の神、何か言う事は……おえっぷ」
「ゴメン、なんかマジでゴメン……うぇっぷ」