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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第13回バトル 作品

参加作品一覧

(2009年 3月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
1000
3
君島恒星
1000
4
ごんぱち
1000
5
ヤマモト
1000
6
待子あかね
1000

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Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
動物園会議

「えー、これより、この動物園の入場者数アップのための会議を行います。アイデアがある方はどうぞ」
「動物ともっと触れ合えたり、近くで見られるような工夫をすべきではないのでしょうか?」
「例えば?」
「檻や金網を頑丈で厚さのあるアクリル板にして見やすくするとか」
「そうそう、ドーム状にしたりしてな。下からも覗けたり、頭の上を動き回ってたり」
「それって、どこかの動物園の話でしょう……。
 この財政難を考えてください。実現可能なソフト面でのアイデアを希望します」
「ちびっこ広場の動物の種類を増やすとか」
「何かの動物の散歩はどうですか?」
「服を着せられた猿軍団によるパレードみたいな?」
「冗談! それじゃあ、動物愛護団体に噛みつかれちゃうでしょ」
「そうだな、遊園地じゃないもんな」
「しかし、散歩はいいアイデアでは?」
「そうそう、歩く姿がかわいい動物なら、特に話題になるな」
「しかし、どんな動物を?」
「あまり危険でない動物……」
「ゆっくり見られるように動きが早くない動物の方がいいですかね?」
「……逆に、危険な動物が散歩するってのも話題になりませんか?」
「と、いうと?」
「ペンギンやポニー、孔雀などの散歩を打ち出している動物園がありますが、猛獣系が散歩ってないんじゃないですか?」
「それは、危険だろう!」
「飼育員も危険ですよ!」
「そうですか~、話題になると思うんですけどね~」
「もっと動物の生態を観てもらうために餌を与える時間をお知らせしたらどうですか?」
「今でもしているだろう?」
「もう少し、派手な演出をしたり、飼育員による解説をするんです」
「ふむふむ、なるほど」
「派手な演出ね。例えば?」
「生きた餌を与えるとか?」
「それは残酷だろう!!!」
「でも、それが本当の生態ですよ」
「そうだ! 財政難をも救う、いい方法がありますよ!」
「なんだね?」
「さっきの猛獣の散歩のアイデアですよ!」
「えっ?」
「猛獣の散歩を名物にするんです! 
 名づけて『ドキドキタイム』!」
「は?」
「客は動物のリアルな生態が見たい」
「それはそうだな」
「そして、スリルやドキドキを味わいたいんです!」
「ふむふむ」
「時間を決めて、トラかライオンを園内に放すんです!」
「おいおい!」
「今回の犠牲者は誰だ! 逃げ切る自身のある方はチャレンジ! ドキドキタ~イム!」
「って!」
「おいっ!」
「……どこが財政難を救うアイデアなのかね?」
「食費が浮くじゃないですか」
動物園会議 百

Entry3
お姉ちゃん消えた
君島恒星

「お姉ちゃん! どこ?」
 僕が小学四年生の時、姉が公園で消えた。
 ふたりで遊んでいたのに、急に姉の気配がなくなった。
 夕方の太陽は厚い雲に覆われて、あたりは薄暗くなっていった。
 ひとりぼっちの僕は、不安と戦い、泣きながら姉を探し回ったのを覚えている。
 二十年ぶりに見る、その公園は、昔のままの雰囲気だった。子供たちの遊ぶ姿が眩しかった。
 ブランコが風に揺れた……
 いや、違う。
 姉が小学生の姿のまま、ブランコを揺らしていた。
 ブランコから飛び降りると、走りながら言った。
「こっちよ!」
 僕は子供に戻ったように、無我夢中で姉を追いかけた。自然公園なので、噴水の向こうは、林になっている。そこで姉を見失った。
 幻だったのかと思っていたら、姉の声が上から聞こえた。
「まだまだね」
 姉は木の上にいた。
 いつの間にか、公園には誰もいなくなっていた。あの日のように……
「わたし、良かったと思ってる。恨んでなんかいない」
 姉は、木から降りて僕の顔を見上げながら言った。
「何の事? わからないよ」
 姉は笑った。
「そりゃそうだ。大人なんだからね。ゴメン」
 ますます、わからない。
「あの時、公園の木の新芽を折っちゃったのよ。そしたら、黒いコートのおじさんが現れて、聞かれたの……覚えている?」
「全然……」
「この新芽はもう戻せない。君の大切なものを置いていきなさいって! 言われた」
 僕はあの時、大切なものなど持っていなかった。
「わたしが、わたしじゃ駄目ですか? って聞いたのよ。そしたら、おじさん頷いた。だから、ここでさまよっているのよ」
 閉じ込められた記憶が湧き出してきた。僕は姉を犠牲にしたのだ。
「あなたが、悩まなくていいのよ。わたしが決めた事だから……あの時悩んでた。あなたはパパとママの本当の子供だけど、わたしは子供ができなかった時に養女としてあの家に行ったのよ」
「そんな事、知らなかったよ」
「あなただって、わたしの事嫌いだったでしょう」
 確かに、両親は姉ばかりを可愛がっていたので、いつも嫉妬していた。
 でも、本当の子供でない姉に対する、精一杯の愛情表現だったのかもしれない。
「不器用な親だったんだね」
 姉は優しく笑った。
「そんな事ないよ。優しい親だよ」
 風が吹いた。
 姉もマイナスの空気も一掃したような気がした。
 公園らしい雰囲気が戻ってきた。
 ここに来て良かったと思う。
 昨日、両親が交通事故で亡くなった。
お姉ちゃん消えた 君島恒星

Entry4
Nの錯綜
ごんぱち

 魔法陣から地獄の業火共に、悪魔のヘッテルギウス氏が現れる。
「我を喚び出したのは貴様か?」
 営業用のいかめしい顔と声で、ヘッテルギウス氏は黒いフードをかぶった術者を見下ろす。
「はい」
 術者はフードを引き上げる。
 切れ長の目、通った鼻筋、染み一つない肌、完璧なまでに調和の取れた美しい男だった。
「悪魔男爵ヘッテルギウス様、あなた様は相応の対価と引き替えに願いを叶えて下さるとか」
「うむ」
 ヘッテルギウス氏の周りでは、未だに地獄の業火が燃えさかっている。
「対価は何を差し出す」
「はい。『最も愛するもの』を」
「よろしい、願いを言え。ある程度叶えてやろう。尚、ちょっと待て的な事を願いとカウントするような商法は、当方は行っていないので、常識的な範囲なら質問は可能だ」
「ええと、お願いしたいのは」
 男の声は僅かに震えているが、落ち着いてはいる。
「若さと美しさを保ったままの不老不死です」

 ヘッテルギウス氏は煙を残し地獄へ帰って行った。
 男はローブの帯に挟んでいた儀式用ナイフで、自分の指先をほんの少し切る。
 滲む前に血が止まり、傷口はもうどこにもなくなっていた。
「ふ、ふふ、ふふふふ、ふははははは、本当だ、本当の不老不死になったんだ! あはははは、あははは、やったぞ、ついにやった! ざまみろ悪魔!」
 男は笑い始める。
「僕の最愛のものは美しい僕自身だ、だが、願いは若さと美しさを保ったままの不老不死だ! 対価を手に入れる事は出来ない、永遠に地獄の釜の中で臍を噛んでいるがいい!」

「フローズン・ダイキル!」
 地獄の四丁目のバーのカウンターで、ヘッテルギウス氏は注文をする。
 マスターのニスシチは、バー・ブレンダーに手際よく材料とコキュートスの氷塊を放り込む。
「旦那、表情が明るいですね」
「目ざといな、マスター」
 ヘッテルギウス氏は笑う。
「一つ契約が成立しただけさ。ナルシストの人間が、最愛のものと引き替えに、若さと美しさを保ったまま不老不死を欲しいとさ」
「ナルシストが、ですか?」
 ニスシチは、出来上がったシャーベット状のカクテルをヘッテルギウス氏に差し出す。
「それって」
「ああ。気付かないところが、可愛いじゃないか」
 ヘッテルギウス氏は、カクテルを自分の顔の高さまで持ち上げる。
「自分が一番愛していたものが、自分自身じゃなくて」
 グラスには、ヘッテルギウス氏の顔が歪んで写っている。
「鏡に映った像だって事にね」
Nの錯綜 ごんぱち

Entry5
フィルムは回る
ヤマモト

 久子(ひさこ)は映画館で働いている。晩の残りで作ったお弁当と、文庫本を一冊持って行く。駅まで原付きで十分。電車に乗って三十分。家からは遠いけれど、久子はこの小さな劇場を気に入っている。働く前から来ているここは、もうまるで住家の様だ。

 午前九時、出勤。ロビーの掃除をして、受付に入る。真四角で無愛想で、けれど温かい久子の定位置。
 レジにお金をセットする。古い発券機の電源を入れると、不服そうにビービーいって試刷チケットを吐き出す。コーヒーメーカーの電源を入れると、残量僅かのランプが灯る。しかしこれは壊れているだけなので放っておく。豆はまだ半分以上ある筈だ。
 商品棚を整え、菓子類やパンフレットの数が充分かチェックする。連絡ノートを読んで、するべき事を考える。
 もうお腹が空いている事に気付いて、なんだかがっかりする。

 チラホラとお客が来だしてシャッターを開ける。いつものおじいちゃん、お散歩がてらの老夫婦、マニアックな会員さん、チラシを綺麗にファイルする人。いろんな人がいて、いろんな映画を観ていく。溜まった半券は丁寧に束にする。束が四つになった頃交代でお昼。デザートを買いに外に出る。
 外から戻るとロビーが暗く見えて、巣穴に帰ってきた様な気持ちになる。


 映写機には触った事がない。機械には強くない。大きなレンズや沢山の部品で出来た映写機は、一種神々しく見える。金や銀のピカピカの歯車。久子には映写機が、自分などが触っていいものには見えない。いつもフィルムの回る音を下で聞いているだけだ。


 夕方に遅番が来て交代。それから映画を一本か二本観て帰る。帰る頃にはもう夜で、久子は電車の中で少しずつ自分の電気を落としていく。今日を終える準備をする。


 電車の揺れにウトウトしながらふと、数日前に支配人に言われた事を思い出す。

「この劇場は一年後に閉館します」

 突然で、けれど前からその気配はあって。でも久子は上手く実感出来ないままでいて、ただ時々、思い出した様に「どうしようかなあ」と呟いた。
 ふぅ。と短く息を吐いて、今日も呟いてみる。どうしようかなあ。


 答えなど出ないまま、眠気に任せて目を閉じる。眠りに落ちるその刹那、フィルムの回る音を聞いた気がした。いつだって、いつまでだって。自分が何をしていようとも、フィルムは回るのだ。
 それだけで充分だ。久子は小さくそう思った。

 明日も早番。久子は朝六時に起きる。
フィルムは回る ヤマモト

Entry6
待子あかね

 その駅前に白木屋という居酒屋があったことを、きみは覚えているだろうか。5年も経ってはいないだろう。まだ、1年か2年あたりだと思う。だが、ここに白木屋があったことを覚えている人は、多くはないんだ。それは、この店に限った事ではない。アパートもガソリンスタンドも、商店街の八百屋さんも、みんな消えていく。高層マンション、駐車場に姿を変え、そして、八百屋さんの後はまだがらんとしたまま。

 わたしは一時期その店でアルバイトをしていた。きっかけは友だちに誘われたこと。しかし、友だちはすぐに「彼氏といっしょに暮らすの」と、やめてしまって、それでも、わたしは続けていた。酔っ払いの相手は決して楽ではなかったが、店長のユリ子さんがとても優しい人で救われていた。注文をうまくこなせず副店長に怒鳴られて叱られているわたしを(その時は何もいわず遠くからみているのだが)帰りにそっと、頭をなでてくれた。
「あしたになったら忘れなさい」
 朝まで、たわいもない話をしながらずっと焼き鳥屋さんで付き合ってくれた。アルバイト仲間の噂では店長はフィアンセといっしょに生活していると聞いていたが、ずっと親身になってなんでもない話をしてくれた。
「ありがとうございました。色々お話しできて嬉しい気持ちでいっぱいです」
 感謝のあまり、気の利いたことばがなにもいえなかった。
それは、少し残念で、しかし、何の根拠もないまま、またユリ子店長と大切なときを過ごせると勝手に思っていた。それなのに……
 
 結婚をするから、遠い町へ行くから、この白木屋はおしまいです。
 なんて、一週間経っても信じられなかった。副店長が、店長になる、という話もあったようだが、彼自身がそれを断り別の居酒屋へと移ってしまった。
「店長がいたから、わたし、頑張って続けることができました。本当に、あり がとうございます」
 そう伝える間もなく、店長は、この町から去ってしまった。こんなことなら、もっと早く、もっと、勇気を出して、思いを届けるべきだったのだ。

 いまは、ダイニングキッチンという洒落た佇まいのお店が、ある。流行っているらしい。駅の西側にもまた別のお店があるし、東側の方にも、ある。そこそこ、お客さんは入っている。街の情報誌に掲載されていることから、地元の人たちだけではなくて、電車でやってくる人もいるって地元のラジオが唱えてた。
 ラジオのパーソナリティーの名前は、ユリ子。