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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第14回バトル 作品

参加作品一覧

(2009年 4月)
文字数
1
1000
2
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
3
ごんぱち
1000
4
君島恒星
1000

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Entry1
同居人

 ドアの開く音。同居人のがんちゃんが帰ってきた。 
 出迎えようと居間のドアを抜けて玄関へ出ると、がんちゃんは後ろ向きのまま静かに玄関の戸を閉め、こちらを向き、あたしの顔を見るとちょっとうろたえた。
「起きてた?」
 何?
 出迎えなかったことなんて今まである?
 なんかあやしい。
 がんちゃんはそろそろと靴を脱ぐと、そのままの足取りで居間に入っていく。
 あたしはがんちゃんの背中を立ち止まって眺めてから、ゆっくりとついていった。
 がんちゃんはちゃぶ台の上に白い小さな箱を置き、座った
「あのさあ、キナコにちゃんと言ってなかったけれど……。俺、キナコが大好きだよ」
 そんなこと言われなくてもわかってる。
 あたしはがんちゃんの向かいのローソファーに座る。
「キナコのこともちゃんと大切に考えてる。だから、ちゃんと病院にも行ってきた」
 病院?
「もし病気があって、キナコにうつしたりしたらいけないからさ……」
 えっ?
 あたしはがんちゃんを見つめる。
「ちゃんと検査してもらったら、病院の先生も大丈夫だって」
 それはよかった。
 でも、がんちゃん、何の話をしてるんだろう?
 あたしは居心地の悪さを感じて、もう一度座りなおす。
 その時、白い箱の中で何かが動いた。
 思わず立ち上がりかけて、身構える。
「大丈夫だよ。あのね……。仔猫なんだ」
 仔猫?
 いぶかしげな表情で首をかしげたあたしを見て、がんちゃんがやさしく言った。
「キナコも気にいると思うよ。真っ白い仔猫でさ。女の子」
 がんちゃんがそっと箱を開ける。
「ほら」
 ローソファの方へやって来て、あたしの隣に座る。
 がんちゃんの手元を覗き込むと箱の中に小さい白い毛玉のような物がぽよぽよ動いている。
 あたしはがんちゃんの腕に手を掛け、がんちゃんの顔を見上げた。
「ねっ、かわいいでしょ」
 う~ん。
「2日前に保護してね。飼い主も探したんだけど、見つからなくって……」
 がんちゃんは申し訳なさそうに言う。
 がんちゃんの優しさはあたしがよく知っている。
「このマンション、ペット可だし、キナコも喜ぶかな……なんて思って。どうかな?」
 あたしは重々しくうなずく。大歓迎というわけにはいかない。
「名前も考えたんだ。おもちで、もっちーってのはどう?」
 もっちー?
「明るいキナコ色の茶トラのキナコと白いおもちみたいなもっちー。よくない?」
 ……まぁ、あたしはいいけどね。
 尻尾をぱたりと振って見せた。

Entry2

(本作品は掲載を終了しました)

Entry3
勝負は相撲で
ごんぱち

 足柄山の麓の家で、元気な男の赤ん坊が生まれました。
 色んな意味で金のようであって欲しいとの願いから、両親は金太郎と名付けました。金太郎は素直で優しく、そして腕白に育ちました。
 ある日の事。
「ふぅ、重い、重いなぁ……」
 金太郎のお父さんが、薪にするための木を背負って帰ります。ついつい沢山伐ってしまい、その重さに難儀をしていました。
「あれ? お父さん」
 山で遊んでいた金太郎がやって来ました。頭にはリスを載せています。
「金太郎だったのか――ああそうだ」
 お父さんは、背中の薪を指さします。
「持って帰るのを手伝ってくれないか?」
「お安いご用だよ」
 金太郎はリスを木に帰してから、お父さんの薪に手をかけると――。
「あらよっと!」
「おっ、おおっ!?」
 右の肩に薪の束を、左の肩にお父さんを載せ、走って帰って行きました。
 それを木の上からリスが仲間のリスと眺めます。
「金太郎ってのは大した力持ちだね」
「熊よりも強いんじゃないか?」
「そうかも知れないね」
 リスたちの噂話は、小鳥に伝わり、小鳥の噂話はヤマネコに伝わり、ヤマネコの噂話はキツネに伝わり、キツネはそれを熊に話しました。
「なんだと? 金太郎という人間が、『この世に私より強い者はいない、熊なんてぶっちゃけお腹の突っ張りがプーですよ』と言っていただと!」
「噂を総合するとそのようです」
「けしからん!」

 森の土俵に呼び出された金太郎は、熊と対峙します。
「勝負は一回かぎり、いいね」
 金太郎が言います。
「吠え面かかせてやる!」
 熊が金太郎を睨み付けます。
「では、はっきょーーい!」
 猿の行司が葉っぱの軍配を振ります。
「のこった!」
 金太郎と熊は真正面からがっぷり四つ。
 ごまかし無しの力比べです。
「ふぬううう!」
 熊は全力で金太郎を押します。
 けれど。
「ぬおおおぐおおお!」
 金太郎が力を入れると、熊はゆっくりと後ろに下がり始めました。踏ん張る熊の足の爪で、土俵に筋が出来て行きます。
「なんのおおお!」
 熊は大きく踏み込んで金太郎の態勢を崩そうとしますが。
「そこ!」
 金太郎は仕掛ける為に生じた熊の態勢の乱れを見逃しませんでした。
 一気にしゃがみ込んでからの一本背負い。
 熊は宙を舞いました。

「フフッ、熊君」
 金太郎は微笑みます。
「僕の勝ちだ」
「い、いや……待て、金太郎、そうだ」
「なんだ?」
「腹掛け一枚のお前は、よく考えると不浄負け」
「……ほざけ、全裸」
勝負は相撲で ごんぱち

Entry4
理想の面影
君島恒星

 駅の改札で彼女を見た時、思わずハッとした。
 理想の女性だった……
 今までに好きになった人の面影を感じたのかもしれない。予定もないので、彼女の後をつけることにした。つけて、何をするということもない。追って、その女性がどういう人なのか? 何を考えているのか? などを想像するのが好きなのだ。
 彼女は駅から少し歩いた所にある、小学校の校庭に立ち寄った。僕の母校である。
 同じ卒業生?
 彼女の横顔に、初恋を抱いた、小学三年生の頃を思い出した。好きなのに、その子には辛くあたっていた。いや、好きだったからなのだろう。
 彼女は校庭を見渡した後、近くの中学校に向かった。
 ここも、僕の母校……
 彼女は何者なのだろう?
 興味が沸き始めた。
 彼女は、中学の時に好きだった子にも似ていた。
 どうしても写真が欲しくて、友達に撮ってもらったことがあった。今でも、アルバムのどこかに貼ってあるだろう。
 彼女は、住宅街から繁華街に足を進めた。
 スナック……
 水商売の彼女がいた時もあった。彼女のマンションに転がり込んで夜の世界を覗いた事もあった。店を手伝いながら、昼は仕事に行っていた。あの頃は睡眠時間は2~3時間だった。
 何だか懐かしい。
 ヤクザまがいの男に、脅かされたり、仲良くなったり……若気の至り……そんな言葉が似合っていた時代だった。
 何で別れたんだっけ……
 あまり考えたくなかった。
 彼女は駅に戻っていた。
 電車に乗る。
 何しに、この駅に降りたのだろう? 僕と同じ育ち方をしてきたのだろうか?
 電車は、ひとつ後ろのドアに飛び込んだ。彼女は流れる景色を見つめていた。
 嫌な予感がしていた。
 彼女が降りる駅はもしかしたら……
 やはり、僕の妻の通っていた駅だった。
 美味しい居酒屋もたくさんあり、妻とのデートは、もっぱらこのあたりだった。
 彼女は、いったい何者なんだ。まるで、僕の過去ではないか? 想像して楽しむ事などできない。逆に恐怖を感じていた。
 彼女はその後、よく飲みに行った店やデートした場所に立ち寄った。そして、また電車に乗った。僕は、ほとんど機械的に後を付いて歩くしかなかった。気がつくと元の場所に戻っていた。
 そして彼女は、初めて振り返った。
 彼女の顔は真っ白だった。
 表情がない……
 無表情が僕に語りかける。
「最後によく、走馬灯を見るって言うでしょう?」
 彼女の足元に、車にはねられた僕が横たわっていた。