≪表紙へ

1000字小説バトル

≪1000verde表紙へ

1000字小説バトル【Verde】stage2
第15回バトル 作品

参加作品一覧

(2009年 5月)
文字数
1
1000
2
君島恒星
1000
3
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
4
ごんぱち
1000
5
夏川龍治
999

結果発表

投票結果の発表中です。

※投票の受付は終了しました。

  • QBOOKSでは原則的に作品に校正を加えません。明らかな誤字などが見つかりましても、そのまま掲載しています。ご了承ください。
  • 修正、公開停止依頼など

    QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

お問い合わせ

Entry1
青年部会議

「えー、これより、この村の嫁不足解消のための婚活会議を始めます」
「こんかつって?」
すがじい、婚活ってのはな、結婚するために活動するという意味だ」
「ほー、おめえらは物知りだの」
「えー、なんかいいアイデアある?」
「夏にやってるイベントを、冬にもしたらどうだ。スキーと絡めてよ」
「そうだなあ。スキー交流をメインにして、夜は歓迎会とか、地域にホームステイとかいいかもね」
「ほーむすていって?」
「菅じい、ホームステイってのはな、地域の家に宿泊するってことだ」
「ほー、民宿みたいなもんか」
「……えー、どんな風に募集する?」
「あまり嫁不足、婚活ですってことを前面に出すと、女性に警戒されるかな?」
「うん、あまり物欲しげに見えてもね」
「でも、目的とか対象年齢とかはっきりさせないと、参加する女性の心意気っていうか、心積もりというか、とまどっちまうんじゃねぇ」
「う~ん、難しいな」
「女性限定ツアーであることには異論はないな?」
「おう!」
「婚活ってのを大きく知らせるか?」
「それは……なぁ……。ちょっと抵抗あるさ」
「それじゃあ、村の青年と交流イベントぐらいがいいか?」
「そうだなあ」
「賛成!」
「ちょい待ち、青年だけか?」
「一応、青年部の主催だし……」
「でも、青年というには、かなり成長しちまった奴らもいるだろう」
「20~40代ぐらいにしとけば?」
「イベントが婚活ではなく交流をメインにするなら、年齢制限はなくてもいいんじゃん?」
「えっ、小学生とか応募してきたらどうする?」
「小学生かぁ」
「若いにこしたことねえろ」
「交流が続くことも大切かもな。子ども会とも提携して、小中学生の交流を毎年続けていって……」
「成長しつつ、愛を育む!」
「おー、いいね。それ」
「ん、でも、それじゃあ、俺らはどうなんだよ」
「あー、小学生ばかり来るってこたぁないだろ」
「菅じい! 寝てんのか?」
「……んっ、と、孫がどうしたって?」
「やっぱ、寝てたんかよ」
「すまんすまん」
「えっと、今までのをまとめると、参加女性の年齢制限はせず、スキーを通して村の住民との交流を深めるイベントということかな」
「いいんじゃね」
「でも小学生とかが参加してきたら、その母親とかも参加させろって言ってこないかな?」
「家族で参加されてもな~、意味ねえし」
「……おめえら、バカか?」
「菅じい、なんだよ、いきなり!」
「手段のために目的を忘れおって! 未婚の女性限定が鉄則じゃろが!」
青年部会議 百

Entry2
愛しきもの
君島恒星

 その8ミリビデオのタイトルは「愛しきもの」だった。
 高校の映画同好会の時に撮影した作品の中に、まぎれ込んでいた。これは、当時の監督をしていた英里のプライベート作品のようだった。
 高校を卒業して大学生になった頃、英里と僕は同棲した。一年たたずに別れてしまったが……
 部屋を片付けていた時、英里の持っていたと思われる8ミリビデオを発見したのだ。
 見たい衝動にかられた。
 しかし、8ミリビデオの再生機を持っていない。当時の同好会仲間に連絡を入れたが、みんな再生機を持っていない。もう過去の遺物なのだろうか?
 最後に友達から聞きだして、英里に連絡した。
「あ、そこにビデオあったんだ! 再生機ならあるわよ。一緒に見る?」
 何でそんなに普通の会話ができるんだ? 別れたんだぞ! 元恋人同士だぞ! 別れた原因? 女ができたから……自分の身勝手……自分のせい……
 英里は、ある日突然、部屋から消えた。
 それっきり 連絡をしていなかった。
 その時の女とは、すぐに別れた。
 その後社会人になって3年目……仕事に追われている。
 安らぎが欲しかった。

「なんだ! あの頃から変わってないのね」
 英里は僕の部屋に入ったとたん、そう言った。
 6年間の空白を感じさせないように、振る舞っているのがわかる。
 ビールと食べ物は駅前のデパートで買ってきた。よそよそしい乾杯……会わない方がよかったのか?
 映画同好会の作品を見る。今の洗礼されたテレビドラマには程遠いが、思い出が最高作品に仕立て上げていた。僕たちは昔話に没頭した。
 「愛しきもの」を再生した。英里は急に黙った。
 映像は、映画同好会のプロモーションビデオみたいなものだった。いや、違う。そこに映っているのは、ロケ中に動き回っている僕の姿だった。僕だけを撮影の合間に撮っていたのだ。
 ラストシーンで英里が自分で自分にカメラを向けた。
「どんなことがあっても、わたしはあなたが好きです! わたしの愛しきものです」
 映像が終わる。
「英里……学生の時は悪かった。僕がいい気になってたんだ。本当にごめん」
 英里は僕の目を見て言った。
「謝ってるの? 本気?」
「本気だよ。許してくれるなら、もう一度やり直したいんだ」
 英里はビデオを少し巻き戻した。映像は英里の自我撮りシーン。
「どんなことがあっても、わたしはあなたが好きです! わたしの愛しきものです」
 英里が僕の胸の中に、飛び込んできた。
愛しきもの 君島恒星

Entry3

(本作品は掲載を終了しました)

Entry4
カッパの川流れ
ごんぱち

「ねー、おとったん」
「どうした与太郎?」
「今日、佐平のとこでね、ことわざってのを教えられたんだよ」
「……自分のおじさんを名前で呼び捨てするなよ、おじさんと呼びな」
「じゃあ、おじさん、佐平のところでね」
「おれを呼べって事じゃないよ! 佐平をおじさんと呼べってんだ」
「おとったんは、今、佐平って呼んだ」
「お前に分かり良いように言ったんだよ――しかし、こいつにことわざとは、兄貴も無駄な……いや、親切な事をする。で、どんなのを教わったんだ?」
「んとね、旗は飾りじゃない空力特性に影響を与える、とか何とか」
「……そんなことわざがあるかい。どんな意味だ?」
「ええとね、喰っちゃ寝すると良くないとか」
「それは、働かざるもの喰うべからずってんだ。ソビエトの政治家レーニンが聖書の一節を元にして作った、資本家を非難する言葉だな。資本家の活動を無価値な中間搾取と切って捨てる、社会主義らしい発想だな」
「言われてみればそんなだった気がするよ。おとったん、よく分かったね。すごい推理だ」
「お前を育ててりゃそうなる。他に何を教えて貰った?」
「んとね、カッパの川流れだって。意味は分かんないけど」
「意味を知らなきゃ仕方ないだろう、まあいい、繰り返して聞けば万に一つ、覚える事もあらぁな」
「そうそう、根気が大事だ」
「お前が言うな……と、そいつはな、カッパのような泳ぎの上手い者でも、川の流れに負けてしまう事もある、つまり、慣れた者でも失敗する事がある、と、まあそういう意味だな」
「じゃあおとったん」
「なんだ」
「保険会社が保険料を支払わないみたいなもんだね?」
「――その例え、そもそも今までのやり取り、与太郎にしては若干ハイブロウ過ぎる! お前、与太郎じゃないだろ! ほら、暖炉の前に水入り卵の殻!」
「ぶわっはっは! ウケる! チョーウケる! 百五十年生きてて、こんなにウケるの初めて! ぶわっはっは!」
「やっぱり妖精の取り替えっ子か!」
「むぅ、バレたか! 暖炉に放り込まれる前にスタコラサッサだ!」
「待て、今一度待て!」
「待てと言われて待つバカがいるかっ!」
「逃げながらで良い、一つ聞きたい!」
「なんだ!?」
「妖精のヤツら、あんな馬鹿持って行って、どうする気だったんだ?」
「いや、ついうっかり、人選をミスしてしまって」
「むむ! 人さらいに慣れた妖精がさらう相手を間違える! 正しくこれこそ、カッパの川流れ!」
「むむ、然り然り!」
カッパの川流れ ごんぱち

Entry5
へっぽこ問答
夏川龍治

 あるところに、弥助という若者が住んでおりました。生来の粗忽者で、言葉も荒けりゃ気性も荒い。大工としての腕は確かだが、おつむのほうはちと弱い……とまあ、いかにも落語の世界に似合いそうな男でございます。
「おい、弥助。突然うちを訪ねてきて、一体何の用なんだい」
「実は、今日は先生に折り入って教えていただきたいことがございまして」
「それで、どんなことを教えてほしいんだい」
「世話になってる人の還暦を祝う宴会があるんですが、そこでこの俺に祝いの挨拶をしろと言うんですよ」
「お前さんが挨拶ねえ。だが、世話になった人なんだろ?誠心誠意、自分の言葉で喋ればむこうさんだって分かってくれるさ」
「自分の言葉でったって、俺が言葉をよく知らないのは先生もよくわかってるでしょう」
「よし分かった。今からお前に、その挨拶の文言ってやつを教えてやる」
「そうですかい。それはありがてえこった」
「まず、絶対に入れなきゃならんのは、(犬馬の労)って言葉だ」
「犬馬の労、ですかい」
「還暦を迎えられる人も、これまでそれこそ犬や馬のようにしゃかりきになって、世のため人のために尽くしてきたはずだ。そういう労力のことを(犬馬の労)と言うのだよ」
「さすがは先生、ものをよく知ってらっしゃる。先生には本当に頭が下がらない」
「上がらないだよ。中途半端に言葉を覚えてきたな。ところで、その人にはお孫さんはいらっしゃるのかい」
「へえ。確か今年で三つになるとかで、宴会にもくるような話でしたが」
「そうかい。だったら、(マゴにも衣装)って諺も覚えておきなさい」
「へえ……マゴにも衣装」
「おじいちゃんのお祝いの席だから、その子もきっと普段よりきれいな服を着てくるだろう。そこでこの諺を出せばその子も喜ぶし、おじいちゃんも悪い気はしないはずさ」
「これは褒め言葉ってわけですね。勉強になりました」

 そして、一週間後。弥助が顔中をアザだらけにして再びお屋敷を訪れました。
「どうしたんだ、その顔は」
「還暦祝いの宴会で、その場にいた全員からこっぴどく殴られました」
「殴られたって、お前、何か失礼なことを言ったんじゃないのか」
「とんでもない。先生に教えてもらった通りに挨拶しただけですよ」
「そうか。それはおかしいな」
「先生、早く薬をください。傷口に汗がしみて痛いったらありゃしない」
「薬ならもうあげたじゃないか」
「何のことです」
「今回の一件、良いクスリになっただろう」