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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第16回バトル 作品

参加作品一覧

(2009年 6月)
文字数
1
1000
2
夏川龍治
968
3
ごんぱち
1000

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Entry1
一番古い記憶

 高校の国語表現の授業で、三島由紀夫の『仮面の告白』から産湯の記憶の文章を提示され、自分の一番古い記憶について書くというテーマを与えられたことがある。
 産まれたばかりで視力があるのかと女子高校生的で現実的なつっこみをしつつ、自分の記憶について考えてみた。
 私には二歳下の弟がいる。弟が赤ちゃんの頃のことはかろうじて思い出せた。ということは、鍵は弟が生まれる前後だな……。
 公園や遊園地で遊んでいる断片的な記憶は浮かんでくるのだが、年代が特定できない。
 改めて考えてみると、記憶の中では最初から弟は赤ちゃんとして、私の横に必ずいるものとして出現していたのだ。
 
 それ以来、時々、この命題を考え込むようになった。

 弟が産れた時、二歳になったばかりの私は何をしていたんだろう?
 母は出産時には入院していたわけで、母恋しさに泣いて、田舎から出てきてくれていた祖母や仕事で忙しい父を困らせてはいなかったのか?
 母のいる病院に連れて行ってもらったという記憶もない。そう、私が気づいた時には弟は私の横に必ずいるべきものとして出現していたのだ。

 そこらへんが一番古い記憶なのだろう。
 ぼんやり考えていると突然、父の笑い声を思い出した。
 響く様な笑い声。
 私は父の背中で聞いていた。

 昼に市場から自転車で家に帰ってきた父は、風呂に入って着替えると、私をおんぶ紐で背中にくくりつけ、その上から半纏を羽織り、再び、自転車で外へ出た。
 どこへ行くのだろう?
 市場に戻るのか? 
 市場への途中にある社長の家で今日の売り上げの帳面つけか?
 家から社長の家までの間に酒屋兼食料品売りのお店があった。ちょうどそのお店の前あたりで自転車が止まった。
 半纏でねんねこ状態の私には周りの景色が良く見えなかったが、おばさんの「もう産まれたの?」という声が空から、かすかに降ってくるように聞えた。「いや、これからです」と父。「楽しみね」とかすかな声。
 父はおばさんの声に答えて「そうですね。はははは」と笑った。
 私は突然響いた「はははは」という声と父の胸や背中を共鳴させたような震動にびっくりして父の背中にしがみついた。

 弟が産まれる前の私の記憶。
 母親との記憶ではなくて父との関わりの記憶というのが意外だった。
 これが私の一番古い記憶なのだろう。
 私はその年の二月に二歳になったばかり、そして三月の春を待つ日、弟の誕生を待つ日のことだった。

一番古い記憶 百

Entry2
完璧なる殺人計画
夏川龍治

 まったく、あいつには本当に腹が立つ。あいつは俺のことをどう思っているのだろう。きっと、都合のいい小間使い程度にしか考えていないに違いない。
 そんなあいつも、出会ったばかりの頃は優しかった。すっかりさびれた繁華街で浮浪者同然の暮らしをしていた俺を、あいつは何も言わずに車に乗せてくれた。それも外国産の高級車だ。あんまり乗り心地がいいものだから五分としないうちに眠っちまったよ。
 目が覚めた時はびっくりしたね。気がついたら見るからに高級そうなお屋敷にいるんだから。その日から俺の人生は変わった。夜には超高級ディナーのフルコースが出てくるし、朝飯だって安っぽいレストランの残飯とは比べものにならないほど豪華だし、おまけにデザートまで出てくる。あいつも俺に親切に接してくれて、本当に天国にきたのかと思ったよ。
 だが、それは俺の大いなる勘違いだった。まず、食事に差をつけるようになった。それまでは自分と同じ食事を俺にも出していたのに、いつの間にか俺の食事だけ粗末にしやがった。もっと気に入らないのは、料理に野菜を増やしたことだ。それだけじゃない。それまで毎日だった風呂を週二日に減らしたのだ。もちろん自分はゆったりとしたジャグジーに毎日たっぷりと浸かっている。
 もうこれ以上我慢はできない。俺はある一つの結論に達した。「あいつを殺す」のだ。もはやその方法しか残っていない。
 玄関の靴箱の上には、あいつがどこかの国から取り寄せた鉄製のオブジェが置いてある。あいつがドアを開けた瞬間にこのオブジェを落とせば、オブジェがあいつの頭に直撃し、即死する。方法はいたって単純だが、俺には自信がある。 
 超高級外車から一人の老紳士が降り立った。彼は慣れた手つきでリモコンを操作して、鋼鉄製の広い門を開けた。門が完全に開くのを待っている間、彼の視線は片手に持っているハウツー本に注がれていた。
「野菜だけでなく、果物もあげないといけないのか。しかし、あまり肉が少なすぎるのもかわいそうな気がするが」
 と、彼は呟いた。
「入浴は週一回で十分なのか。週二回でも少ないと思っていたのだ
が」 
 あっという間に屋敷の玄関に着いた。いつものように鍵を開け、中に入る。
「ラッキー、待たせて悪かったな」
 と、彼は玄関の前に座っている愛犬に声をかけた。
「ワン!」
 愛犬は鋭く吠えて、玄関の靴箱に思いきり体当たりをした。
完璧なる殺人計画 夏川龍治

Entry3
原人の証明
ごんぱち

「北京原人を復活させたぞ!」
「ウパーーー!」
「本当に北京原人なんですか? 四谷博士?」
「無論だとも。証拠を見せてやろう」
「なんかあるんですか?」
「無論だ――北京原人よ」
「ウパ?」
「円周率を言ってみよ」
「3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209749445923078164062862089986280348253421170679821480865132823066470938446095505822317253594081284811174502841027019385211055596446229489549303819644288109756659334461284756482337867831652712019091456485669234603486104543266482133936072602491412737245870066063155881748815209209628292540917153643678925903600113305305488204665213841469519415116094330572703657595919530921861173819326117931051185480744623799627495673518857527248912279381830119491298336733624406566430860213949463952247371907021798609437027705392171762931767523846748184676694051320005681271452635608277857713427577896091736371787214684409012249534301465495853710507922796892589235420199561121290219608640344181598136297747713099605187072113499999983729780499510597317328160963185950244594553469083026425223082533446850352619311881710100031378」
「おおっ、流石は北京原人、僕たちの頃はおよそ3でしたよ」
「だろう?」