Entry2
結婚披露宴
小笠原寿夫
結婚というものに知識めいたものは何ひとつありません。しかしながら、昔、披露宴会場のアルバイトをしていた経験から、披露宴の雰囲気だけは何度も味わってきました。
その空気は、金色。
何もかもが煌めいて見えるし、厳かな空気と華やかな空気が同居している様子です。
新郎新婦は、披露宴会場の暗闇のなか、その荘厳な扉から、ゆっくりと入場します。スポットライトを浴び、美しい音楽を受けながら、会場の一同は、二人の男女に目を向けます。
スッとしたスーツに身を包んだ新郎とスタイリッシュなドレスを身に纏った新婦。その日の主役は明らかに二人のものです。新郎新婦席に着席した二人に会場中が注目します。
司会者が二人の馴れ初めを話し始め、スクリーンには、二人のこれまでの人生を集約した数々のスライド写真が映し出されます。
そうして、愛に満ち溢れた二人に、来賓挨拶が行われます。新郎の上司が、この役割を担うことが主流です。新郎の上司だけあり、会社での新郎の仕事を賞賛し、新婦には「本当におめでとう。」の言葉を添えるケースが多いようです。
続いて、新婦がお色直しのために中座し、暫し歓談の時間が設けられます。この場で、ホテルの料理が振る舞われ、会場一同は、新婚の男に、酒を振る舞います。
これまでで一番印象に残った料理は燃えるアイス。キラキラしたアイスに青い炎。
賑やかな空気に包まれるなか、新婦が衣装を変えて入場します。この瞬間が、新婦の最も晴れやかな姿を見せるときだと思われがちですが、新婦の一番輝けるシーンは、もっと後になります。新郎新婦は、高く聳え立ったケーキにナイフを入れます。この瞬間、最も多くのフラッシュが焚かれます。
その後、友人挨拶、余興が行われ、会場の照明が消されます。
キャンドルサービスです。
丸いテーブルに、各々の蝋燭が備え付けてあり、新郎新婦は、ゆっくりと着実に一本一本、火を灯していきます。
会場が幸せに包まれるなか、照明が灯り、新郎新婦挨拶が、執り行われます。この時が新婦の最も輝かしいシーンです。互いの両親が会場の舞台前に立ち、新婦が両親に感謝の手紙を読むのです。皆がグッと緊張するシーンです。場の空気が最高潮に達したとき、両親から新郎新婦に花束が贈呈されます。
そうして、新郎新婦退場と共に、幸せな音楽が流れ、親戚一同、友人一同は、二人を讃えながら引き出物を受け取り、二次会へと繰り出します。