Entry2
ハンサム丼
小笠原寿夫
え? まだなんか? もうやってるんでしょ? ジョナサン! ジョナサン! お前、あいつのことまだ引きづってんのか? 偉い永いことここで待たせやがって。エエか? 今から大事な話するからよう聞けよ。
『世の中には二種類の人間がおる。作り屋と壊し屋や』
邪魔すんなよ。テーブルをよう磨け。ピッカピカになるまでよう磨くんやぞ。でな、うどん食え、そば食え。で、テーブルを見ながらよう啜るんや。自分の顔が写るやろ。それを見ながらズルズル啜れ。エエか? その顔よう覚えとけ。それがお前の顔役や。で、山車を混ぜろ。山車を混ぜたら、絵ぇ描ける。よう覚えんかい! 糞味噌やろが! で、大事なもんは絶対に落とすな。これだけでも覚えて帰れ。風呂場いってよう考えよ。下の方からよう回せよ。救うように混ぜるんやぞ。冷たいもんは下、暖かいもんは上や。な? 温もるやろが。大事なもんが身体中を駆け巡るようにして頭から出すんや。これこそがハンサム丼や。今の感じ忘れんな。一杯でたか? で、布団や。解るな? よう干したぁるやつ、背中に乗せ。あべこべにすなよ。冷たいもんが下、暖かいもんが上や。そうや仰向けや。その仰向けの姿勢から、うつ伏せに入れ換われ。寝返りぐらい覚えとけ。じゃあ大将、よう食うてよう考えてよう寝えよ。だからあの子に好きって言っちゃいなよ。お前が好きって言っちゃいなよ。涙が止まらねえって言っちゃいなよ。な? 温もるんじゃねえぞ。ハンサムなんだからさ。男前って意味じゃねえぜ。俺が一番初めに言ったこと忘れてねえだろうな。そうだ。そうそう。それそれ。
『世の中には二種類の人間がいる。作り手と壊し手だ』
いいな、帰えるぜ。全くもってけしからんやつだぜお前の経だけはよ。恃むぜ、恃んだぜ。お経ってのはこうして唱えるんだ。よく覚えときな! 糞味噌やらせやがって全く。え? まだなんかあんのかい。顔の次に名前覚えろって? 普通逆じゃねえのかい。名前の次に顔だろ。あとは動き方ぐらいだろうが。これが道ってえんだよ。道、導き出すように。じゃあな、帰るぜ! あぁ、喰った喰った。早めに薬飲んで早めに風邪治すんだぜ! ズビバゼン叔父さんになってやれぇ。ドブもズビバゼンでじたでぇ。ご迷惑をお掛けしましたを心の中で唱えよ。自然と出てくる言葉があるだろう。そうだ、その言葉を一生忘れるんじゃねえぞ。いいな! さぁ、煙草吸うて屁ぇこいて寝よ寝よ。