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クロスカップリング
小笠原寿夫
今までになかった蛋白質を結合させてやることで、新しい物質を作り出そうという発想。
蛋白質は、多くの食材に含まれており、その数は計り知れないが、殊「食」に関して言えば、必須アミノ酸というものが二十種類ほどある。人間の体内では、合成されないアミノ酸の事である。
アミノ酸がペプチド結合を連ねたものが蛋白質。その蛋白質を合成するのがアミノ酸。
では、20種の必須アミノ酸をひとつひとつ箇条書きにします。
・アラニン
・グリシン
・メチルアラニン
・セリン
・グルタミン
・ヒスタミン
・フェニルアラニン
・トリプトファン
・リシン
・ロイシン
・イソロイシン
・グルタミン酸
・ヒスタミン酸
・アミノアラニン
・チオール
・システイン
・セロトニン
・メチオニン
・バリン
・ヒスチジン
ただ羅列するだけでは、面白くないので、これを異色の組み合わせによって、新しい栄養価を作り出そうという発想の理論。これがクロスカップリングである。
「やぁやぁ、ご機嫌さん。毎度のこってはございますけれども、この度、エレキテルを作りたい、とこうなっておる始末。云うなれば、小さな竹を用意して頂きたい。」
「源内さん、あんたまだそんな夢みてぇなこといってんのかい。いいかい?あんたの発明は、みんな認めてるよ。だけど、発明だけが全てじゃねぇだろってんだい。町人連中、みんな、寄り集まって、あんたのひそひそ話をしてるの知ってんだろ?」
「いやはや、忝い。拙僧、相そうなれば、町人連中に電気を分けてやりてぇんだ。囲炉裏がねぇってのに冬が越せねぇ世の中ってんじゃ、寒くてろくに風呂にも入れねぇじゃねぇか、流石にこの冬だけは、エレキテルに電気を通してやりてぇんだ。」
「するってぇとなにかい?あんた、エレキじかけで年を越せるようなそんな大事なもんを作ろうってな算段かい?」
「エレキほど面白れぇもんはねぇよ。エレキは食いもんの中にだって入ぇってるし、人間だってエレキで出来てんだい。」
「正気かよ、お前さん。人がエレキで出来てりゃ、あの雷雲はどうなんだい。あんなもんを近場で起こせば、お上の首が飛んじゃうよ?わかってんのかい、あんさん。」
「言いかい、一回だけ言うからよぉ~く聞いてなよ。エレキは人の手で操れるんだい。」
これから、エレキテルが発明されたのは、言うまでもないが、星を作り出す核融合を玩具にするのは、大倉喜八郎という大財閥の社長である。
「餅が食いたい。」
これが、90歳の偉人が遺した明言である。