Entry1
実は人間だった屋
ごんぱち
「いらっしゃいませ、実は人間だった屋へようこそ。スタンダードなものから意外なものまで、各種取り揃えております」
「じゃあ……この『普通に人間でしたよね』、ってのは?」
「はい。叙述トリックで、『実は幽霊』という他店商品とも少し似てますね。ちょっと人間じゃない風に言っているけど、注意深く読んでいたら人間の事を言っているまたは、全くヒントはなかったけど後から読むと確かにそうだ、というやり取りです。例えば、このカウンターなんかそうですね」
「ええ、なんで、四つん這いに猿ぐつわの人を、カウンターとして使っているのか気にはなっていました」
「んー、んーー!」
「ピースサインしてますね」
「時給が良いんですよ」
「『動物かと思ったら系』というのは?」
「これは人間さんが買うというより、地球人以外の方向けの商品になっておりますので、関税高いです。前述の叙述トリック寄りですね。金属すら腐食させる毒ガスを吸ってエネルギーにするとか、凶暴で満腹にさせているにも関わらず死に至るまでの喧嘩をするとか」
「『怪物かと思ったら』ってのは同一ヴァリエーション?」
「これはお売り出来ますよ。むしろ品余りです。怪物っぽいんだけど人間を材料にしていますので、映像作品でも利用できます。人間の形を保っているタイプと、そうでないタイプがあります」
「保ってたらダメじゃないか?」
「人間によく似た怪物が出る状況下ではよく使えますよ。ゾンビとか」
「ああ、なるほど」
「思い出の品とかを見せると反応するタイプと、全く反応しないタイプがあります」
「どっちもアッと驚く凄い展開だと思うんだけど……」
「一番最初ならそうでしょうけれど、聖戦士に同じ技が二度通用しないのは最早常識ですしね」
「そういう意味では、既存はどれもダメじゃないか?」
「まあ使い様ですが、そういうお客様向けにオーダーメイドもございます。お客様ラッキーですよ、キャンペーン期間なので、二割引で承ります」
「ほほう、じゃあ見積もり出してくれ。食べ物なんだよ、もう当たり前の感じに食べるんだけど、実はそれが人間を加工したもので、それがそうだな、よく知った、そう、行方不明の身内とか、最愛の人でも良い。それを旨いと思って食べている時と、それを明かされた瞬間の落差、それをバラす悪意、これは人の感情が激しくのたうち回る恐るべき場面が展開されるじゃないか! これは凄い、凄いぞ!」
「はーい、カチカチ一丁ー」