(いまさら)1000字後に死ぬ作者
サヌキマオ
などとタイトルをタイプしておきながら、さっきボツとして消した「強盗トラベル」について考えている。ただのしゃれであるが、これをどう広げようか。
昔聞いた話であるが、日本に比べ、伝統的に中国のほうが悪い商売が横行するのは単純に国土の広さの違いであるということで、向こうでは商人がさんざん悪稼ぎしてとんずらしたあと、全く別の州に旅立ってしまえばなかなか捕まらなかったという。これが日本では、あっという間に人と人の間で人相や風体、その手口などが広まってしまう。人の噂は七十五日とは云うが、七十五日もあれば日本中に情報が行き渡ったということなのかもしれない。昨今はもっと網の目が細かくて、たとい世界中のどこにだって情報の網が蔓延って人を、モノを無理矢理に絡め取っていく。
そんな中で「旅する強盗」とは。銀座の宝石店で強盗をしても、よっぽど組織的にやらないと水際で止められるだろうし……いやむしろ、組織的な犯罪としての「強盗トラベル」……強盗ツアーパック。
不意にひらめいた気がした。ツアーパックを売る側、買う側。強盗を誰が売って、誰が買うのか。ここを広げられたら1000字くらいは書けるような気がする。
「えーと」脳内から似たような事案を探すのである。あれ、だれだよね。昔のイギリス人とかがインドとかアフリカに行って猛獣ハンティングしたみたいなのはある意味「強盗」いや「殺傷トラベル」である。金持ちの道楽。用意された冒険。ただ、金持ちの道楽であちこちの経済が動いていたのは確かで、イギリスからの船、召使い、ガイド、下の世話、エトセトラ、エトセトラ。
象を捕まえるジョークを思い出した。必要なものは黒板とチョーク、ピンセットに瓶。
サバンナの真ん中に黒板に「1+1=」と書いておくと象がゾロゾロとやってきて「なんだろう」と首を捻る。これを遠くの木の上から眺めていて、ピンセットで一頭ずつ摘んで次々に瓶の中に取り込んでいく。面白いなぁとは思ったけど、捕まえたあとどうするんだろうね。瓶から出したらむくむく元に戻るのかね。
話が脱線して、あっ、と気がついた。強盗トラベルのみならず、「強盗イート」なるものもあるのであった。こっちのほうがもしかしたら広がるのではないか。
仕切り直し、と部屋から台所に出ると、どこから入ったのか、腹をすかせたのであろうツキノワグマが冷蔵庫を横倒しにして中のものを貪っており、こちらに目が合っ