二人の宇宙紳士が、ぴかぴかする銃をかかえて、白熊のような人造兵士を二体つれて、宇宙の深淵を彷徨っています。
「ここの宇宙はけしからんね。文明の一つもない。早くババンとやってみたいものだ」
『ばばーん、はっ、はあ、ばばーん!』
そこは無限の深宇宙です。案内してきたダラニスケ星人が蒸発して、人造兵士もプラズマを噴いて死んでしまいました。
「じつに僕は、十八億スペイカの損害だ」
『ほんがいんが、があ!』
「もう戻ろう。しかし腹が減ったな」
『がらげだらあ!』
と云った二人が後ろを見ますと、なんと立派な造りの宇宙食堂があるわけです。玄関には、
宇宙創作料理
クァール軒
と、札があります。
「これでなかなか開けた宇宙だな。入ろうじゃないか」
『がいろんがん!』
二人は玄関に立ちます。白の宇宙煉瓦で組まれた立派なものです。扉に金文字でこう書いてあります。
<どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません>
二人はさっそく扉を開けて入りました。そこにはすぐ次の扉があって、大切なことが書いてあるのです。
<銃と弾丸は置いて行け。さあおなかにお入り下さい>
『ぐぉもっかーす!』
「ああ、どうもおかしいぜ……見な、扉の鍵穴から、蒼い眼玉がきょろきょろしてやアがる」
(え、もうバレた?)
私――アレシアさんは悲しく思いました。懸命に考えた作戦は失敗したのです。お皿を洗って、青菜も塩でもんで置いたのに、ナフキンもかけて舌なめずりで二人を待っていたのに、何ということでしょう。
宇宙紳士たちは、がちゃり、と機関砲を構えました。
「戦争だ、やってやるぜ」
『ばおーんばばーん!』
忽ち起こる銃火の響き、食堂の扉が壊れましたので、アレシアさんは仕方なく顔を見せて云うのです。
「ちょいとお客さん、勘弁してくださいナ」
紳士たちは動きを止めました。
一人の紳士は、からだ中の毛が逆立って、一本一本、皮や肉をつけたまま弾けましたので、最後は服と骨と銃ばかりになって崩れました。
もう一人の紳士は、からだも顔も練炭の灰のようになって、叫ぶたびにぼろぼろ割れて落ちましたので、最後は服と灰と銃ばかりになって崩れました。
ご馳走は台なしです!
「ああん、おなかがへったよ」
アレシアさんは、泣きべそをかいて座りこんでしまいます。
そのとき「わん、わん、ぐゎあ」と声がして、あの白熊のような人造兵士とダラニスケ星人が、扉をやぶって飛び込んできました。