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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第48回バトル 作品

参加作品一覧

(2021年12月)
文字数
1
サヌキマオ
1000
2
ごんぱち
1000
3
桜沢如一
1105

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コミュニケーション

QSHOBOU掲示板

モルダウ
サヌキマオ

 今回派遣されたのはまちなかにあるパン屋さんで、パン屋さんというのは初めてだったからどんなんですかとキタさんに聞いたら四時半集合だという。四時半というのは朝ですか夜ですかと聞くと、パン屋なんだから朝に決まってんだろええおいと言われてしまった。ええおいというのがキタさんの口癖であるがいつもとても怒られたような気がして悲しいきもちになる。
 自分の家からだと始発の電車に乗っても四時四十五分に着くことになってしまう。駅前の飲食店街を抜けると崖下への階段がいくつも伸びている。下りた先はひっそりとした路地裏になっていて、崖から横に生えるように建っているコンクリートの建物がパン工場なのがわかった。工場の扉は二重扉になっていて、外から漏れてわかるほど大音量のクラシックが流れている。
 工場長は遅刻した自分を責めるでもなく「早速やってもらうから」と衛生服の積まれた棚を教えてくれる。生地を機械で練る間にクラシックを聞かせ続けるのが製造の秘密なのだという。クラシックを聞くと生物は活動的になり、精神が活性化され、より多くのものを生み出す。そんなようなことを工場長は初対面の自分に嬉しそうに語る。パンは生物だろうかとちょっと思ったが自分の仕事は捏ねられた生地を型どおりにつくることで、型通りというのは得意なところなのでさして苦にはならなかった。たっぷりクラシックを聞かせた生地をきれいな形のコッペパンにする。充満する音楽のおかげでほとんど耳は聞こえなかったが、先輩のおばさんからクロワッサンの巻き方を身振り手振りで教えてもらって鉄板の上に均等に並べていく。パンにたっぷり詰め込まれた音楽は、食べた人の中のお腹の中でどのように作用するのだろう。工場長はクラシックと何度も繰り返していたけど、クラシックを好きな人がクラシックのことをクラシックと呼ぶだろうか。疑問が湧いたがきっとずっと工場長には言わないで黙っていることだろう。この曲は聞いたことがある。モルダウだ。自分でさえ知っているモルダウも、クラシックなのだ。
 十時前には帰っていいことになった。君ははじめっから実に筋がいいよ、これからも頑張りななどと褒められて気分良く駅に向かう。朝から何も食べていなかったのでカレー屋さんに入ったら今の今まで身体を洗うように流れていたモルダウが店の中に流れていて、自分の体の中に詰まったモルダウと共鳴してガタガタと震えはじめた。
モルダウ    サヌキマオ

当世VJ気質
ごんぱち

「ねえおとったん」
「なんだ与太郎」
「けんこうこつはがしってお店を見たよ」
「へえ、最近はそういう店があるんだな」
「けんこうこつたぁなんだい。徒然なるままにその日を暮らしたり、硯に向かって意味の無いことを書き散らしたりする硬骨漢かい?」
「こうが二度使われてるじゃねえか」
「GOTOで戻ってもう一回使う事で、コードをすっきりさせるんだよ」
「無限ループじゃねえか。けんこうこつてぇのは、文字にすると肩甲骨だな。人で言うと、この背中の二つ出っ張ってるところだな。これを剥がすっていうんだから、腕をこう、逆に引っ張って引きちぎるんだろうな」
「怖いね、だとすると殺し屋かね?」
「だからお前は馬鹿なんだよ。そんな訳事をしたらお縄だよ」
「お縄でどうする、縄跳びかい?」
「警察に掴まって縄で繋がれるって意味だよ」
「えっ、最近の警察ってのは、牢屋に入れるんじゃなくて縄で繋ぐのかい。人間扱いじゃあないね、虐待にはならないかい?」
「そうそこだ。これは人間の事じゃあないんだと思う」
「人間じゃあない?」
「肩甲骨のようなところを剥がす事が商売、これはもう、フライドチキンしかないだろう」
「あああっ! そうか! ウィングを根元から引き毟る様は、まさに肩甲骨剥がし!」
「妖鳥シレーヌだとちょっと違う位置になってしまうが、ここは輪島市ではないから大丈夫だ」
「なあるほど、流石はおとったんだね、カメの甲より歳の功だ」
「よせやい、照れるじゃねえか」
「でもおとったん、カメの甲羅ってのは、歳を取るのと何か釣り合う事があるのかね?」
「そうさな与太郎、歳を取れば色々な厄介ごとを逃れる力が付いて来る。その力は甲羅にこもったカメよりも強いという事だろうな」
「でも、この前、スッポンが自転車に轢かれて潰れてたよ。そんなのより強いのは当たり前じゃあないの?」
「ばかだな、スッポンなんてのは高価な割に甲羅が柔らかく弱いものだ。もっと強い、ウミガメやゾウガメ、アーケロンなんか、とてもお前には勝てまい?」
「そりゃあ無理だね。ゴリラぐらいのパワーが必要だ」
「だが、歳の功があれば、ハンマーを使ったり、自動車で轢いたり出来るのだ。つまり、歳の功はほぼゴリラだ」
「なあるほど、おとったんの筋肉はゴリラ、牙はオオカミ、そして!」
「「燃える瞳は原始の炎!」」

「いらっしゃいませ、ケンタッキーフライドチキンへようこそ!」
「肩甲骨はがしを頼むよ」
「支払いは、暴力だ!」
当世VJ気質    ごんぱち

ウナギのぼりに成功した人々
今月のゲスト:桜沢如一

 孤児アドルフ・ヒトラーが、三十余年前にペンキ屋から兵隊さんになり、負傷し、毒ガスで失明し、亡国の惨状を具さになめた後、たった七人の同志と共に救国運動にのり出し、或いは投獄され、或いは二ヶ年間発言を禁じられ、或いは刺客に狙撃され、同志や部下に裏切られ、排撃されした上、ようやく政権を獲得してやれやれと思ったのも束の間、たちまち近国隣邦の圧迫は巨大な悪魔の鉄腕となり、烈火の息吹きとなって降りかかって来ました。彼は今血だるまの如く、修羅の如く一万数千キロ米の戦線を駆け廻っています。まさしくゲルマン蛮族の酋長であります。そして一撃にあう毎に彼は強くなり、一撃は一撃と益々彼を大ならしめつつあります。
 百戦錬磨! っては覇者の剣、開けばばんの桜!

 パスツールを御覧なさい。彼は今でこそ人類の恩人の様に言われますが、その生涯は晩年脳溢血で斃れるまで苦難そのもの迫害そのものでした。蒸気機関の発明者ジェームス・ワットは死に至るまで屋根裏の梁に疲れきった頭をのせかけて休んだのです。蒸気船の発明者フルトンや、日本最初の電気学者飛行機発明家平賀源内のうけた苦難はいわずもがな、日蓮、法然の法難、キリストの最後は我々に何を物語りますか!

 しかも我々は無双原理を神ながらの道とし世界観として生きる神国日本に生まれ、今では我々人間にとっての最大で唯一の資本――健康――を、自分の望み次第で確立する方法まで教えられ、ウナギを見ても世界観を――歴史的現実――永遠の今、中今なかいまを読むことが出来るのです。

 のぼれよ! ウナギの如く! 千里も! 万里も!
 のぼれよ! 鯉の如く! 瀧を越え、急流をのり切って!

 鯉ノボリはわざわざお金持ちが空高くたてて見せてくれます。彼らお金持ちは使えば消えてなくなるお金しかもっていない! 私共は使えば使うほど冴えて来る破邪顕正、護法立国の双刃の剣、無双原理をもっている。

 ウナギ上り! 鯉ノボリ!
 ウナギの木のぼり! 鯉の瀧のぼり!

 我がウナギの国日本は不信と不真と敵意と悪意の逆流激流をのぼりにのぼって世界観の最高峰に達しなくてはならないのです。
 いざ来たれ、あらゆる苦難、非難、ののしり、そしり! 圧迫! 迫害! 我らは最大抵抗線突破の決死隊である。我らに新鋭兵器活人光線を発射する無双原理「魔法のめがね」あり!

 男子は決して貧窮を口にすべきに非ず。風はふけよ、波は荒れよ、ずるにところなく逃ぐるにところなからしめよ。すべからく暗夜の孤燈を滅してすべての希望を絶つべし。の時においなお壮心を試すにたらず。一層激烈ならしむべし。一層暴戻ぼうれいならしむべし。の手をばくせ、の背をうて。希望は近づけり。(マルチン・ルター)