その一
元朝、お雑煮を祝うも餅の高い今日不経済でかつ、陳腐だ、よろしく食パン、うどん等など代用食
喰始めの式を執り行なったらよかろう。
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その二
文部大臣の言文一致で訓示を述べる程度に平民的になりたがっている現内閣諸公は、一年五千万円の損を敢えてする大商いの外米商、農商務省をして何ゆえ官吏総出で外米の初荷を催さしめないのか、そしたらいよいよ平民的と世間に褒められるであろうに!!
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その三
門松というものが虚礼で結局七草に湯屋の
燃料となるばかりだという。どうせ湯屋にご奉公するつもりの門松なら最初から石炭と薪を立てて置く方がいよいよ目的に適ってよかろう。
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その四
猿曳きの猿が
頸玉の綱で束縛されながら、芸をするのを見ると悲惨だ。労働問題に骨を折る人は、地球上のどこかの国の資本家対労働者の憐れな関係を、その国民にあまねく説示すべくこの春の
節物を利用する気は無いか。資本家姿をさせた猿曳きに労働服を着せた猿を曳かせ、過酷に扱いながら町廻りをさせたら自称労働会会長とか手の白い何々博士の講演よりこの問題に対して世人へより多き刺激を与える事だろう。
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その五
年始廻りは虚礼で
愚だという。愚だといいながらやはり義理を欠くまいと一生懸命廻ってる。これは一つ自分に似たモデル人形を拵え、人を雇って年賀名刺と一緒に持って歩かしたらよかろう。
![](/img/fig/stage4/049/005.jpg)
その六
七草というもの昔は
芹、
薺、
御形、
蘩蔞、
仏の
座、
菘、
清白の七種を
俎板の上にて叩き菜粥に調じて服し、一年の病を
攘ったという。この頃のように流行感冒が横行する時節には自然七草も改革されねばならぬ。すなわち七種も玉子、スープ、牛乳、玉葱、葱、
自然薯のごとき滋養価値多きものを
選み、その上にアンチペプリンを打ちかけて、これの
叩囃子も昔は『七草、なずな
唐土の鳥が日本の国に渡らぬ先に』とあったのを『七草なずな異国の
感冒が日本の国に渡らぬ先に』とうたい直すべし。
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