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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第72回バトル 作品

参加作品一覧

(2023年 12月)
文字数
1
おんど
1000
2
サヌキマオ
1000
3
ごんぱち
1000
4
アレシア・モード
1000
5
前田夕暮
732
6
社会ユーモア研究会
1858

結果発表

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長編小説(途中まで)
おんど

この文章が発表される頃にはもう師走になっているはずである。
一年は早いものでついこの間まで桜が咲いていたのかと思えば、もう浜辺を歩くビキニのお嬢さんを勧誘してマジックミラー号で身体測定及びその撮影を長時間にわたってするような季節になってしまった(マジックミラー号は素人のお嬢さんを勧誘しているように見せているがじつは女優を仕込んでいるという噂が絶えないが、神に誓って素人のお嬢さんだと言っておきたい。それでもなおヤラセだインチキだという者については胸襟を開いて話し合いの場を設けたいと思うが話し合いが決裂した際には法的措置を講じる用意があることを肝に銘じておいてほしい)のもつかの間、さいきんは9月になってもうだるような暑さが続き、秋の気配を感じる間もなく今日は立冬である。
図書館で働いている梶原さん(前月号においてカジワラとルビを振ってしまったがカジハラの間違いだった。そのことについて、戸籍上の名前を呼び間違えるなんて本当に私のこと愛しているの?とずいぶん詰られた(苦笑)が、そもそも私には妻もいて子どももいてセクシーフレンド、俗に言うセフレもいるのだからカジワラだろうがカジハラだろうが知ったこっちゃないのだが、東京の四大卒で地方都市の図書館司書をしている梶原さんからプライドを取ったら巨乳しか残らないのだから、そのとっておきのプライドをくすぐったりつついたりして楽しんでいる)が有給休暇を取れるというので吟行を兼ねて(というのもひそかに二人で短歌を詠みあい、あるていどの分量がたまったらホチキス留めして文学フリマへの出展を計画しているからだ。ただし本名で二人連名というわけにはいかないから筆名を用意していて、梶原さんは自分の苗字にプライドがあるから「梶原一騎」、私はあくまで覆面をかぶっていたいし身体的な特徴として皮かぶり(真性)であるから「タイガーマスク」とするつもり)近郊の温泉へ紅葉狩りに出かけたのだが紅葉はまったく色づいておらず、温泉は数年前に出つくしたとかで井戸水をくみ上げて沸かしたお湯に浸かっているとどんどん身体の節々が重くなってきて、気づけば二人そろって高熱を発していた。真っ赤な顔をして布団にくるまっていたのだがぞくぞくと寒気は収まらず、それでも梶原さんは文フリで一発当てたいという野望が勝って布団の中でうわごとのように三十一文字をひねり出そうとする。そのとき出来上がった歌が
長編小説(途中まで) おんど

大腸の町
サヌキマオ

 区が無料でやってくれる大腸がんの診断の結果を聞きにいく。やや不精とも思える白鬚の医師は「ありていに、これは精密検査です」と開口一番に言い放った。
「そんなこと、検便でわかるものですか」わたしは愕然とした。
「検体を光学顕微鏡でよく見るとですね、やつらの食べたカップ麺のカラなんかが見つかります」
「カップ麺」医師は答えず、さも当たり前のように顕微鏡写真を見せてくれる。たしかに、便の茶色に、ヌードルか何かと思しき紙カップが見える。「町ができていますね」
「よくあることなんですか」「よくはないことです。でも、この病院でも三人は見ました」やわらかい眼差しは変わらない。「だいたいはこのままでもうまく共存できるのですが、重化学工場でも造られるとちょっと厄介なことになります」張り詰めたような、白けたような空気だ。「紹介状を書きましょう」
 結果だけ聞いてすぐに会社に行くつもりだったがその日は休むことにした。こうしてはいられない。わたしは自宅の布団に横になると股を広げ、大腸の町に出かけることにした。
 自分の大腸の上を歩くというのも変なものであるが、足元はぬらぬらとした。靴を履いていこうか迷ったが、土足で上がるようなものでもないと思った。
 町はコンクリートでできたような四角い建物が密集して続いていた。高い建物が見当たらないのは頭上をわたしの雲古が通るからで、なるほど、台風の多い沖縄みたいに、環境に合わせた住居の建て方というのがあるものだ。商店街があって人が見えてくるとみんな靴のようなものを履いている。しまった、と思った。
 人々はビール工場で働いているのだという。巨きな工場があってこそ、城下町のように商店街が成り立った。目抜き通りのどん詰まりのビール工場では無料で見学もできるのであった。しかもサービスで出来上がったばかりのビールを3杯も飲ませてくれる。いい気分であった。いい気分で、普段は買わないような工場グッズのタンブラーセットまで買ってしまった。デザインが気に入って工場オリジナルのTシャツまで三着買ってしまう。酔いのいきおいであった。頭上を唸りを上げて雲古が通り過ぎていく。
 結局わたしは紹介された病院には行かなかった。その代わりに会社で嫌なことがあっても「いいのか、わたしの大腸の中には見学もできるビール工場があるのだぞ」と思うことにしている。今日も肛門からビールを積んだトラックが出ていった。
大腸の町 サヌキマオ

おだや
ごんぱち

「いらっしゃいませ、おだやへようこそ」
「織田信長下さい」
「信長でございますね。職業漫画風、転生漫画風、コンピュータゲーム風、大河ドラマ風、映画風など、様々なラインアップを取り揃えております」
「多いな」
「人気商品なので、参入業者も多いんですよ」
「職業風……ってのは?」
「一流の料理人からインスピレーションを受けるタイプの人気信長でございますね。思ったより人を殺しておらず、顔がスッキリしており、無茶ぶりする割には度量が広いように見えるのが特徴です」
「良さそうだな」
「時にあなた、料理スキルは?」
「野菜炒めぐらいは作れる」
「それはいけませんね。大使館でシェフを務められる程度の技量がないと、興味を持たれずザックリです」
「マスターを斬るの?」
「信長は斬るものですから」
「こっちは……テケテケ?」
「血で点てたお茶、飲めます?」
「えっと、映画風は?」
「ああ、実写系は今のところ商品整理中です。依代に色々ありまして」
「じゃあ、ゲーム風かなぁ」
「ちょっと遅かったですね。初手で10選んだら徳川に滅ぼされました」
「初代の数字入力式コマンドって、共通認識でいいのかな。古すぎるよ、最新のは?」
「ゲームの最新だとこちらですね」
「スマホ? 据置じゃないの?」
「今やスマホがゲームの頂点ですよ。任天堂の倒し方知ってるのは、彼らですからね」
「若気の至りを擦るなよ。えっと、ソシャゲ風ってのは、これ……信長か?」
「はい」
「バスト95ぐらいありそうで、衣類の布面積が極端に小さいけど、トランス?」
「いえ、普通の女体化です」
「普通かな」
「上杉謙信か玄奘三蔵ぐらいにはよくありますが」
「ははぁ、変化球なのにみんなやるから珍しくなくなった上に、それしか知らないヤツまで作り始めるという蠱毒状態だな」
「まあそうとも言います」
「信長要素薄めだけど、美人でなかなか……」
「コラボイベントで寝取られます」
「あー、そうだ。18禁系はそうだった。いかんよ、それはいかん。えっと、こっちは転生漫画系か」
「ジェネリックトールキンの出渕異世界の中で頑張ってますよ。謎の眼帯と悪い顔が特徴です」
「あー、でも良いじゃないか。本能寺乗り越えて、策士として磨きがかかった感じで、イメージに1番近いや」
「毎度ありがとうございます」

「――動かないんだけど」
「ああ、いつもなんですよ。最近動いたんで、後5年ぐらいしたら、もう一冊分動くと思いますよ」
「……だめだこりゃ」
おだや ごんぱち

ばんぎつね
アレシア・モード

【蛮きつねに関する参考聴取】
>これは茂平という老人の話です。
>蛮狐という、たいそう悪い狐がおりましたです。
>蛮狐は、その悪心のゆえ孤独な小狐であり、羊歯のいっぱい茂った森で穴居を掘って棲んでおりました。
>蛮狐は、昼夜を問わず辺りの村へ侵入しては悪戯を重ねておりました。村の畑の作物を掘り荒らして毀損し、農家の裏手に吊るされた唐辛子を窃取し、証拠隠滅を図って干されていた菜種がらに放火し、村人の現住建造物を全焼させました。
>蛮狐は、村の兵十という男の母親をも殺害しました。兵十は『不吃鰻魚就死病』に侵された母親のため鰻を獲ろうと網を仕掛けましたが、蛮狐はこれを無惨に破壊、網に残った鰻まで噛み砕いて兵十の母親を故意に死なせました。
>蛮狐は、さらに兵十の死んだ母親の肉を『ばば汁』と騙して調理させ、通夜の振舞いとして村人たちに饗させました。
>蛮狐は、母親の首を『大盛りばば汁』として兵十の最後の椀に振る舞いました。椀の蓋を開いた兵十は村中の集まる前で葬儀を中断する事もならず、ただ頭を下げ『よくわかりました』とだけ答えたとの事であります。
>蛮狐は、この凶状をもて後の世の人間の子供らにまで狐の悪辣さを誤認させ学校では教諭の誘導尋問で狂った非人道的児童のレッテルを


『ああ駄目だ、こいつ話にならん』
 私――アレシア、すなわち偉大なる冥府の王の、美しき后であるペルセポネーの、その友達であるところのアレシアは、嘆かわしげに吐息をつくと、この毛皮らしい狐の屍の媚売る姿を、冥界事務所の窓口アクリル板越しに見下ろしていた。クソ狐は村人に撃ち込まれたんであろう鉛の弾による穴だらけな顔で私を見上げた。
『ねえアレシア』狐は言った。『そんな事言わないで。僕はいつもみんなの幸せを願っているんだよ。きっと君の為にもなれると思うんだ』
『なあ、お前……まだそんな事ばかり云うてますのんか』
 そもそも死んだ動物なんて、普通はケダモノというだけの理由をもって、せめて畜生界を巡ることを赦されているわけだ。それをわざわざこの私の窓口で死後の裁定とか請求する狐など、全く常軌を逸した悪行設定である。私はキレた。
『クソたわけめが! 貴様のような醜い悪性新生物など、この大自然のエコサイクルの中に生かしておけるとでも思っていたのか! 出てけ貴様は追放じゃ! さあ直ちに人間界に堕ちるがよいわこの蛮狐!』

 こうして、蛮人が産まれたってわけ。
ばんぎつね アレシア・モード

死亡室
今月のゲスト:前田夕暮

 まっしろな布で包まれた、ずっしりと重い私の屍体を載せた担架は、深夜の長い廊下から廊下を通って、ドアをあける音がかすかにしたなと思うと、一揺れ揺れて、ことりと固い木の寝台の上にうつされた。
 私は、顔にかぶせてある白い布の下からそっとあたりを見廻す。
 高い天井からうす暗い電灯が一つ、埃によごれて、蜘蛛のように垂れさがっている。そして、部屋中に充ちているのはうす明るい光ではない、ただ冷たい陰影ばかりである。陰影の寒さにふるえて白い布に包まれた屍体のおかれてある寝台が、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ……その六つめに私がおかれてある。そして、私の隣の七つめの寝台はあいている。というだけで、四方は白い壁でくぎられている。
 私はしきりに悪寒がする。私の脚は長く硬直して白い覆いからずっとみ出している。髪の毛がしんしんとして逆立っている。
 ひたひたという廊下の足音がきこえる。
 また誰かがはこばれて来たに相違ない。
 が、寝台はもう一つきりだ。しかもそれが七つめの寝台だ。
 その七つめの寝台にとうとうまた私と同じような客人が搬ばれて来た、ことりと音がして担架からおろされる。そして、またひたひたと廊下を遠去とおざかり行く足音がきこえる。
 私はそっと顔にかけられた白い布の下から隣りの客人を覗いてみた、女だと見えて、黒い髪が長く床に垂れている。白い布から現している手にはしろい浮腫むくみが来て、氷嚢のようにふくれている。重い巨きな体が寝台からずり落ちそうになっている。だんだんに体が傾いてくる。もう手がだらりと寝台から垂れさがった。頭ががくりと動いたと思うと、ずしんという音が床を撃つ。
しつ! 皆寝台から起きてはいけない!」と私は思わず叫ぼうとした。
 死亡室の夜はしんしんとふけて行く…………
死亡室 前田夕暮

男女学生語
今月のゲスト:社会ユーモア研究会

アイスクリーム
 継母のこと、甘くてもなかなか冷たい意。
アナウンサー
 お喋りの人をいう。
あまちゃん
 女に甘い男学生のこと。
あましょく
 仲好くくっつき合っていること。
アンテナ泥棒
 背の高い人のこと。
インタロゲーションマーク
 あの方近頃あやしいの意。
インハラベビー
 妊娠の意。
インチキ
 カンニング、試験の際に於ける不正行為のこと。
以心伝心
 自由結婚の意。(女学生用語)
姥捨山
 私立女子大学のこと。
エス
 女学生間で同性愛の意。
エスケープ
 逃げる、脱出する、学生がきらいな学科を休むこと。
エッチ(H)
 ハズバンドの頭字を取ったもので「夫」「良人」の意味。
エル(L)
 恋人または恋文の意。ラブの頭字を取ったもの。
エンゲージ
 婚約。転じて情交の意。
閻魔帳
 先生の持つ採点帳をいう。
オアシス
 意外な幸福の意味。
オイちゃん
 黙りやさん、むっつりやさんのこと。英語のオイスターから出た語。
お餅(おかちん)
 餅のようにベタベタくっついて居る仲のよい若夫婦のこと。
お下屋敷
 便所のこと。
オステーキ
 おお素敵だという場合にいう語。
お茶の水式
 快活で、現代式なことの意。
お月様の油さし
 背の高い人。
お花さん
 先生に愛される女学生のこと。
おめ
 上級の女学生が下級の美少女を愛する意。おめかけから起こりし語。
金魚
 融通のきかぬ人のこと。
からたちの花
 肺病娘。また弱々しい女のこと。
ギロチン
 意地の悪い先生をいう。
クロベチャ
 色が黒くておしゃべりの意。
外交家
 異性を友達とする人のこと。
強引
 無理矢理の意。
シス
 同性愛の意。
シスター
 姉妹、同性愛。(女学生用語)
シック
 月経のこと。
島津公
 さつま芋のこと。
シャズさん
 賑やかな騒がしい音楽のことから転じて喧しい人をいう。
シャン
 美人のこと。
シングル
 独身のこと、また単独。
スタンバイ
 うっとりとすること。見惚れること。英語の「スタンドバイ」から来た語。
スフィンクス
 黙っている人のこと。謎の人。
接戦
 熱烈の意。
扇子(せんす)
 女学生間で結婚のこと。扇子は末広で子孫繁栄の意味。
センチ
 感傷的、多感的。
タイガー
 ラグビーの選手をいう。
タカる
 お友達におごらせること。
たぎる
 胸が張る、恋情。
ダブル
 二重。重複。転じて男女二人づれ。落第。
駄べる
 何の取りとめもなくべらべらしゃべること。
十一番
 接吻のこと。英語のキッス頭文字Kはアルファベットの十一番目にあたるところから出たもの。
チチナ
 おしゃれすること。また浮気のこと。
ジャガ芋
 ニキビ面のこと。
チョコマン
 背の低い人をいう。
デコル
 おしゃれすること(女学生用語)
テクテクズム
 テクテク歩く徒歩主義のこと。
トライ
 蹴球で敵地のゴールに球をもって行って押さえつける場合をいうことから転じて男女間でものにしたということに使う。
デカル
 なまける、遊ぶ、だれるの意。デカダンの動詞化したもの。
点取虫
 試験の点数を取ることに苦心して年中机にばかり齧りついている人。
点数表
 甲=三味線また蝿叩きという、字の恰好がよく似ているから。
 乙=家鴨または鴛鴦、字の恰好から起こる。
 丙=兵隊さん、音が通ずるから。
 丁=郵便屋さん、また電信柱、郵便記号、電柱の形に似ているから。
同類項
 同一、一つ穴のむじなという意。
トースト
 やきもち焼きの意。
ドカン
 鈍感のこと。(女学生用語)
トテモロ
 非常にという意。(女学生用語)
隣の桜
 人の花。他人の想いもの。
トリック
 カンニングすること。
ドン・ファン
 はんどんの逆で土曜日のこと。
ナフタリン
 嫌いな奴の意。
肉シャン
 肉体だけの美人
ニヤリスト
 ニヤニヤ笑ってばかりいる人。
ネチ
 熱烈の意。
ハイヤー
 女学生のことを男中学生間でいう。
バーばる
 蛮カラぶるの意味で、めちゃくちゃに頑張るというような意味。
ハッピー
 愛人に逢うこと。
パリ
 素晴らしいの意。
ハンケチ
 恋が中途で破れること、即ち半ばでケチがつくというの意。
ヒー・フラッパー
 おっちょこちょいの男ということ。
ピューア
 まだ異性の愛を知らない者というの意。
ビル
 接吻すること。
複数
 すでに結婚した人、または間の抜けた人。
埠頭
 便所のこと
ベッド
 先生の愛人という意味。
マークする
 目をつけること。
マリちゃん
 マリのようにはね回るお転婆。
モンロー主義
 自分勝手な人のこと。
有望
 未婚者を指していう。
よ、てよ、だわ
 女学生間でよく語尾へつける言葉。
ルートさん(√3)
 態度や主張のはっきりせぬ人をいう。
ロケーション
 お二人連れでの散歩をいう。
蠟勉
 電灯が消えてから蠟燭を立てて勉強すること。