Entry1
長編小説(途中まで)
おんど
梶原さんの白くて丸い尻に歌を書き終えるとイランとイスラエルが戦争を始めていた。挑発したのは結局どちらだったのだろう。わたしのお尻をメモ帳代わりにしないでくださいと梶原さんは言った。言いながら目尻をこすった。こすりながら鼻をすすった。泣いているのだった。わたしのお尻をメモ帳代わりにしないで下さいと言って泣いているのだった。イランがイスラエルにミサイルを飛ばしていた。燃えるようなミサイルがイスラエルに突き刺さり国土の硬い部分を溶かし、めりめりと音を立てて裂けていった。第三次世界大戦になるのじゃないだろうかとテレビを見ながらつぶやくと、梶原さんは鼻をすすり、それをいくらか喉に落とし、むせかえるようにティッシュを口に当てて痰を吐いた。ティッシュが紅く染まっていた。そのティッシュは先ほど、私が梶原さんの白くて丸いお尻に歌を書きつける前に発射した精液がこびりついているはずだった。私は少し梶原さんを蔑んだような目で見た。それを感じ取った梶原さんが細い目をきっと吊り上げて私をにらみ、ティッシュを拡げてこちらにその中身を見せるのだった。確かに血のようだった。嫌な予感がして浴衣の前を拡げると陰毛に血が絡みついてぬらぬらと光っていた。白い精液だと思ってこすりつけたものが紅い血液だった。想い当たる節はあった。私はカントン包茎だった。小さい頃にカントン包茎で長じて仮性包茎に進化することはあるのかもしれないが、小さい頃はズル剥けで私の場合は歳とともに皮の伸縮性がなくなり先端部分がどんどん狭まってカントン包茎になってしまったのだった。梶原さんと出会った頃はすでにカントン包茎寸前で梶原さんは面白がって皮ごと咥え、ぎしぎしと硬くなった亀頭を狭くなった包皮から無理やり出そうとした。皮の中で亀頭が大きくなる分には宜しいのだが大きくなった亀頭を無理やり皮から出そうとするとことによっては皮が破れて出血してしまうのだった。つまり梶原さんと交わるたびに割礼の儀式を行っているようなものだった。そもそも皮が被っているからゴムなしでやっても大丈夫だよと言ったのは私の方だった。皮が被ってただでさえ感度が鈍くなっているところへゴムなんぞをかぶせたら覆面レスラーが毛糸の帽子を被るようなものだから果たして本日のまぐわいもそんな成り行きだったかと紅く染まったティッシュを見つめているとテレビからさらに激しい着弾の音が聞こえ、壁を